3 入れ替わり
その日の夜僕は何をされるのかわからないまま不安な気持ちを持ちながら約束した公園の噴水前で待ち合わせていた。
「寒いなぁ、いったい誰が来るだろう。女子高生になれる?そういうなんかのプレイなのか?明日はまた会社があるというのに...メールですぐに終わるって書いていたから行くことにしたんだけどなぁ。」
時間は午後10時を過ぎた。公園には人の気配がなく街灯の数が少ないためあたりは真っ暗だ。早くことの用事を済ませ明日の支度をしたいと思っていたその時後ろから足音がしてきた。
ざっざっ
振り向くとそこには写真に載っていた女子高生の姿があった。
「こんばんは、君が応募してくれた佐藤くん?」
彼女は僕に話しかけてきた。まさか、本当にあの写真の女子高生が来るなんて思いもよらなかった。写真でも可愛いけど実際に見るとそれは天使のような可愛さだ。ネクタイのついたブレジャーの制服はとてもよく似合っている。
「はっはい!佐藤廉です。」
「この度はご応募ありがとうございました。私は須藤玲奈です。急な呼び出しをしてしまいすいません。」
「いえいえ、だっ大丈夫ですよ。」
僕は今まで母親以外の女子とほとんど会話したことがない。ましてやこんな美少女を前にしてしまえば会話もうまくできないし、目もまともにあわせられない。
「ん?緊張してるの?」
「あっえーとまぁ少し...」
「まぁ慌てなくてもいずれ慣れるさぁ」
「はぁ」
「じゃあもう話を始めるね。佐藤くんの職業は応募に書いていたとおりあの大手の広告代理店なの?」
「まぁはいそうです。」
「おー!すごいじゃないか!」
「いや別にそれほどでもないよ。」
「ちなみに君は、大学はどちら?」
「まぁ一応東京大学です。」
「東大か!じゃあ君は、エリートなんだね。」
「でも僕には勉強しか取柄がないんだよ。」
「あはは!別にいいじゃないか!じゃあ次に君の体の健康状態を教えてくれる?持病とかない?」
「持病とかはないかな。去年に盲腸の手術をしたぐらいであとは普通かな。」
「なるほどわかった。君の体は素晴らしいよ!合格だ!」
「なっ何が?」
「君は、女子高生になりたくて応募したんだよね。」
「いや...別にそういうつもりで応募してたんじゃないだ。ただお酒に酔っていて、よく理解せずにに勢いでつい...」
「そうだったのか...。だからあの時一度断ったんだ。」
「本当にごめんなさい!悪気はないんです!」
「困ったなぁ、明日にはこの子の学校が始まってしまうのに...。じゃあこうしよう一ヶ月、一ヶ月だけなってみないか?」
「一ヶ月だけなる?あっそういえば、ずっと気になっていたんだけど女子高生になるってどういうことなの?」
「あっそうだな!まだ、よくわかっていないよな。私の力で君が私に私が君になるんだよ。」
「えっどうこと?僕が須藤さんになるの?」
「そうだ」
「ちょっとよくわかんないよ。そんなのあり得ない!」
「そうだよね。他人からすればあり得ないことだよね。でもね、私にはそれができるんだなぁ。」
「えっ」
「君は、私のような女子高生は好きかい?」
「あっ...えぇ、まぁ」
「仕事に不満がありそうだね、このままの人生でいいのか?」
「いっいえ...」
「なら受けてくれるかもしれない。力を先に見せたほうが手っ取り早い!さぁ私と手を繋ぐんだ!」
そう言って彼女は僕に手を差しのべてきた。白くて細くてきれいな手だなぁ。僕は彼女のその手を繋いだ。
女子高生と手を繋ぐなんて初めてだよ。
次の瞬間手から電流が流れたような感覚が起こった。
「うっなんだ!」
それは手から腕、胴体、足へと次々に全身を駆け巡った。やがて、回りが暗く見えなくなり、音も聞こえなくなった。そして意識もなくなっていた...。
しばらくすると意識も回復し、まわりも見えるようになり、全身の感覚も戻ってきた。しかし、全身に妙な違和感がある、足がスースーするな...。手元を見た時に初めて僕は理解した。
「なんだ?この細い指は!あれ服も違う!制服?僕が須藤になっているのか!」
そして前を見ると僕の姿があった。
「えっ僕がいる!もしかして入れ替わっている!」
「そうだ。私が魂を入れ替え、体も入れ替わっているのだ。」
「ほっ本当に入れ替わっているなんて!おかしい、あり得ない!」
僕は顔や体を触り本当に僕自身が須藤さんの体になっていることを確かめた。
「この細い体...体が軽い!むっ胸まである!」
「どうだ、驚いたか?素晴らしいだろう!」
「なんだ!この魔法のようなものは?」
「不思議な力だろ、私だけが使える秘密の能力さ。」
「そんなのがこの世にあるなんて...。」
「これからは互いに入れ替り新たな人生を導こうじゃないか!まずは、一ヶ月ほど様子をみましょう!」
「えっ僕の会社はどうするだ。」
「私が君の代わりに通うのさ。君ほどの学力はないかもしれんが経験は誰よりもあるんだ!大抵のことはできるさ。」
「君が僕の代わりに...」
「そうだ!君は、会社に行く必要がないんだ!」
それを聞いた僕は心の中で安堵してしまった。あの会社から離れられるなんて...。
「ほっ本当に大丈夫なのか?ブラック企業だそ!」
「大丈夫ですともいろんな経験をしてきましたから。」
「え?いったい君は、何者なんだ?」
「んー、それは答えられないかな?少なくとも私は、もともと女子高生ではない。」
「君は、女子高生じゃないのか...。」
「見た目は女子高生だが中身はおっさんさ。」
「えっ!おっさんだったのか」
「まぁおっさんどころじゃあないんだけどね。」
「そうなのか...じゃあ君は、なんと呼んだらいい?女子高生でもないし、今は僕の姿だし、どう呼んだらいいのか...」
「そうだね、私自身の名前が無かったよね。私の本当の名前は...いや、名呼び方は管理人でいいよ。」
「管理人?」
「そうだ、少し前までは40年近くマンションの管理人をしていたからその名残で管理人だ。」
「わかったよ。あっそう言えば会社は君が行くんだったら僕はどうするの?」
「それは大事な話だったね。君は、その女子高生須藤玲奈の代わりにとして高校に通ってもらう。」
「えぇぼっ僕が!」
「そうだ、君は、もう女子高生なんだ!須藤玲奈として彼女の高校、水川学園に行くんだ!」
「えぇー!」
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