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凡人が英雄になるたった2つの方法  作者: youko
第5章 皇帝
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第35話「エントリー」

 どうもイヌ魔族のオスカーです。前回も私でしたね。ははっ。痛い…

 ヒコとタチバナという人が穏やかだったので、人間ってみんな穏やかな種族なのかと思っていましたが、今、私は縛り上げられて、拷問にかけられる一歩手前です。


「あ。はい、私のように陸路を使うルートと、船で大きく回る海路の2種類があります」

 私が説明しているのは、奴隷として手に入れた人間の女の行き先です。


 多くの場合、海路でイヌ魔族のいる北西まで輸送するのですが、最近は人間の需要が高まっていることもあり、私のように陸路を使って、途中の国で奴隷を売っ払うというやり方もあります。

 人数が多くなれば多くなるだけ、輸送コストがかかりますからね。

 奴隷だって、飯は食うしクソはします。その面倒をみるのは私たち商人です。

 あんまりガリガリになられたり、クソの臭いが染みついたりしていたら安く買いたたかれちゃいますからね。

 どんなわけで、奴隷は途中で売れるなら売ってしまった方が、商人としては効率が良いのです。


「あのー。この首枷だけでも取っていただけないでしょうか…?」

「同じことを言った人間はいませんでしたか?」

 この女、子供ですよね?

 10歳くらいに見えます。

 人間の女ってのはどうにも年齢がわかりません。

 みんな若く見えて。

 この子が一番厳しいなぁ。


「いやぁ。奴隷には首輪をする決まりなので…ほらっ、私は奴隷ではないでしょう?」

「では、今からあなたは奴隷です」

 この子、厳しい…


「いや、イヌ魔族は奴隷になりませんよ。奴隷になる魔族とならない魔族が決まってるんですよ。お嬢さんは知らないようですけど」

「それはおたくのルールでしょ?そんなのは知らないわ。少し首枷を強めます」

「ぐあぁぁ。ちょ、ちょっと待って、協力するから」

「ダメ。もう遅い」

「苦じい、苦じい」

 私は呼吸が出来なくなり、意識を失った。



☆☆☆



「クマモリ~、今、ヒコいないんだからさ~」

「すみません。ついカッとなってしまいまして」


「まあ、ちょっとこいつムカつくよね」

「タチバナさんまで~、アナトどうすんの~?」


「奴隷になった人たちの足跡を辿ることしか考えてなかったけど、協力してくれる魔族っていないのかしら?」

「アナト殿、それはどういう意味でしょう?」


「魔族にも私達でいうところの将軍みたいな人がいるんでしょ?その人に協力してもらった方が早そうじゃないかなと思って」

「たしかに、一人ひとり、奴隷にされた人を追いかけていては埒が明かないですよね。そうは思ってたんですけど、それしかないと思っていました。さすがアナト殿です」


「じゃあ、こいつに水をぶっかけて起こして、一番偉い人にどうやったら会えるのか聞いてみましょう」



☆☆☆



 同刻。

 俺は買い戻した奴隷を人の国に帰すため、麒麟くんに女の子たちを乗せて海の上を飛んでいた。


「あ、みなさん、けっこう時間がかかるので、寝ててもいいですし、ここに食べ物と飲み物があるので、勝手に食べたり飲んだりしてくださいねー」


 ネズミという港町はけっこう栄えていて、食べ物も飲み物も充実していた。

 やはり、魔族と人の好みは違うようで、人は米、粟、ヒエをベースに食べていたのだが、魔族はパンとフルーツをベースに食べているようだ。

 単に南の地域で温かいからなのか?

 異世界に来てはじめて、オレンジジュースを飲んだ。上手い。

 酷い目にあってきた女の子たちも、フルーツを食べて微笑んでいる。


「本当に好きなだけ食べて下さいね」

 返事はないが、笑顔が返ってきたので嬉しい。



☆☆☆



 復路。

「なあ、麒麟くん、気になってたんだけど、麒麟くんの飛ぶスピード早くなってない?それに、白虎君の探知距離も伸びてないかい?」

「え?ええ?気付いてないの?麒麟さん、俺が説明してもか?」

「あ…ああ。白虎さん…任せたよ。ヒコ、召喚まで出来る魔導士で熟練度を知らないはお前くらいだと思うよ…」

「熟練度があるの?」

「言葉は知っとんのかい!同じ魔法でも熟練度が高ければ高いほど、威力も上がるし、消費魔力も抑えられる。まあ魔法使いだけじゃないけどな」

「だけじゃないって?」

「戦士もシーフも鍛冶師も全部そうだ。例えば、ナイトの剣技ってあるよな?」

「おお。そういえば、俺も剣技スキルは持ってるぞ」

「なに?お前、戦士も…まあいい脱線するのはやめておこう。剣技にウェポンブレイクって技があるな?」

「うん。ある。使ったことないけど」

「自分の武器で相手も武器を壊すスキルだが、熟練度の低い戦士がやっても大概の場合が失敗する」

「あ。なるほど。こういうこと?魔法の場合は威力とか魔力とかが熟練度に影響して来るけど、剣技とか鍛冶の場合、成功率に影響するってこと?」

「んーん。おしい!成功率もだが威力もだ。熟練度の低いウェポンブレイクの場合、失敗するか、上手くいったら剣にひびを入れることができるかもしれん。だが、熟練度の高いウェポンブレイクだと剣が粉々に砕け散る。その上、剣を持っている腕も砕け散らすことが出来る」


「おいおい。白虎くん、ということは、鍛冶も?鍛冶も凄い人がやったら凄くなるの?」

「ヒコ、お前のダガーを見せてみろ」

「これ?このタチバナさんが造った満月のダガー?」

「俺は1000年は生きているが、それ以上の武器は見たことがないぞ」

「ええ!?麒麟さんは?」

「あるわけないだろ!」

「マジか!」

「おっと、ヒコ、俺と麒麟さんの言いたかったことを言わせてくれ」

「え?なに?」

「鈍いな…もっと召喚してね」

「あ…これからもお世話になります」


 ということで、熟練度を上げるため、青龍さんと、朱雀さんも召喚してみた。

 彼女たちも空を飛べるため、問題ないだろう…と思ったが、麒麟さんほど速くは飛べないようだ。

 だが、幻獣同士で仲良くおしゃべりしているため、消すこともできず、麒麟さんには若干スピードを落としてもらい、ゆっくりネズミの国へ向かった。



☆☆☆


 

 ネズミ王の間。


 奴隷商人オスカーに頼るまでもなく、クマモリたちは王との接見の場を頂いていた。

 その理由は、アナトとイリビが大暴れしていたからだ。


 ネズミの国に入って、国民をぶちのめす二人の少女がいると、直ぐに王に連絡が入ったようだ。

 そこに向かってみると、話し通り、見事な腕前をした少女が二人で大男たちを倒していた。


 王は試しに、自分の護衛を5人、その二人の少女と戦わせてみた。

 ネズミの国でも10本の指に入る強さの5人だ。王は直ぐに騒動は収まると考えた。

 しかし、結果は真逆だった。

 5人の護衛は10秒と持たなかった。


 王はふと考えた。

 あれ?

 この二人でネズミの国って堕とされちゃう?

 えーっと…暴力でダメならどうしよう。


 そんなことを考えていたら、少女たちの仲間が現れて、一緒に宿屋に消えて行った。


 ここにいたら危ないな。護衛もやられたし。

 王宮に帰ろう。



 すると、少し経ってから、さっきの少女と仲間が王宮にやってきた。

 断ったら暴れちゃう?

 そんな不安があったので、王の間まで通してしまった。

 はぁぁ。小国の王は辛い。

 こいつらが、暴れたら、オオカミ魔族を呼ばないといけない。

 やつらを呼んだら、みかじめ料が上がる。すると国民から文句を言われる。

 はぁぁ。辛い。



「して、余に何のようだ?」

「ネズミの王様。お会いできて光栄です。私は人の国の将軍の妹、クマモリと申します。私の国の女性がヒヒ魔族に攫われ、ここネズミ魔族の港を経由してイヌ魔族に売られています。私は、奴隷となったすべての我が国民を取り返したいのです」


「おお。そうか。わかった。それに関してはそちらの活動を許可する。勝手にするが良い」

「ありがとうございます。そこで、少し、ご協力頂きたいのですが…」


「クマモリ殿、ヒヒ魔族は同じ東側の国とはいえ、他国ゆえ干渉出来ん。また、イヌ魔族はそもそも国交もないので、何も出来ん」

「そうですか。では、ネズミの王様、オオカミの皇帝をご紹介頂けないでしょうか?」


「紹介?紹介とはどのようなものだ?」

「一筆、奴隷探しを協力してやれと書いて頂ければ…」


「で、で、で、出来んわ!皇帝に命令をするようなことが出来るか!」

「あくまでお願いなのですが…」


「一緒じゃ!」

「それでは、皇帝に会う方法について何か知りませんか?」


「ああ。それはあるぞ。お主らならピッタリなのが」

「なんでしょうか!?」


「次の皇帝を決める大会を行う予定なんじゃが、お主たちもエントリーすればいいじゃろ?」

「それはどこで?」


「エントリーは今ここで、わしがしてやるわい。大会は3か月後、遥か北のオオカミの国で行われる」

「おお!ありがとうございます!」


「それでは、エントリーは6名でお願いします!」

「して、名前は?」


「アナト、イリビ、ヒコ…」

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