入部
「なあ、鈴風。俺本当に超常現象研究会に入らないとダメなのか?」
「なに言ってるんですか。諒さん。勝負はあなたの負けなのですから、入部するのは当然ではないですか」
部室にて。鈴風の言葉を聞いて、俺は入部届を前にして頭を抱える。
あれから、無事に目を覚ました鈴風は、怪我の治療のために一か月ほど入院していた。
そして無事に退院し、今日から学校に来ていた。そしてこうして久々に部活を行っている。
一か月半ぶりに部室に集った俺たち。鈴風は、開口一番に「入部届を書け」と言ってきた。
俺は鈴風の言葉に納得がいかず、思わず言い返す。
「いや、勝負は俺の勝ちだったはずだ。あのインチキイタコババアのところに行ったとき、お前は自分の負けを認めるといっただろう?」
「あれは私が心身衰弱状態だったので無効です。それより、諒さんのほうこそ、私に告白してくれたあと、超常現象の存在を認め、私と一緒に探してくれると言ったじゃないですか。あれこそ私に対する敗北宣言です」
「あれはお前があまりにもかわいそうだったから……。っていうか俺にも一回くらい発言の撤回権を認めてくれたって、いいんじゃないか? お前も一回発言撤回してるじゃないか」
鈴風は平然とした顔で「認められません」と言い張る。納得がいかない。
「お前さあ。早く入部しちゃえよ」
持田が言ってくる。この学校に入って深く関わった三人が、全員この部員になってしまっているのが現状だ。
「そもそも、なんでまだこんな部活を続けてるんだ? お前の目的、母親に再会するっていう目標は、すでに達成できたはずだ」
「いや、確かにあれは部が成立したときの目標ではありましたが、別に達成したからと言って部がなくなるかというと、決してそんなことはありません。超常現象を探求する、その我々の部是は、何一つ変わりはないのです!」
「超常現象なんかないあるわけない」以前の俺なら確実にそう言っていたのだろうが、あの日に起きた奇跡を目の当たりにして、俺は到底そんなこと言う気にはなれなかった。
まだあれが超常現象だと信じた訳じゃない。記憶転移の云々で、たまたま似たような夢を見て……。
なんとか理由をつけようとした俺は、「まあいいか」と思った。
以前と変わらない、いや、前以上に元気のある笑顔を見せる鈴風を見て、俺はあの奇跡だけは、否定したくなかった。
例えそれが、俺のこれまでの信念と真っ向から対立するものであったとしても。
「いいじゃないですか!私と一緒にいる理由ができたと思えば」
目の前で屈託なくほほ笑む鈴風。
俺は自嘲気味にふっとため息を吐く。
「わかったよ。鈴風。俺の負けだ」
俺はペンをもって、入部届けにサインして、鈴風に差し出す。
鈴風は満足げな顔で受け取り、「部長中大路鈴風。確かに渡辺諒さんの入部届を受理いたしました!」と言った。
「さあ、これで部員も四人になりました! 由緒ある神社の跡取り娘、嵯峨根優奈! おばあちゃん想いな持田信也! ひねくれた推理少年、渡辺諒!そして美少女部長、中大路鈴風!」
突っ込みどころが満載だが、まあ今回だけは見逃してやることにしよう。
鈴風は小さな体躯をくるっと体を回転させ、腕を振り上げて高らかに宣言する。
「これより、超常現象研究会、部活動を再開します!」
第一部、完。書き留め及び毎日投稿保証はここまでとなります。
この投稿の間に手術や転職もあり、投稿をやめようかと思ったことも何度もありました。
ですが、皆さんの応援のお陰で、なんとか完結させることができました。心より、感謝いたします。
これは3年前に書いた「カンパネラの奇跡」という小説のリメイクで、リメイク前のバージョンはオレンジ文庫の一次審査を通過しています。リメイク前でも諒と鈴風の会話のノリなんかはそのままです。
私は生まれ育ちは大阪なのですが、祖父母4人のうち3人が京都市出身、さらに父親も京都市出身ということで、幼い頃から京都に行く機会は多く、とても好きな町でした。京都駅イオンは超おすすめ。
さて、今後の連載についてです。
私はこれまでたくさんの投稿をして来ました。しかしそのほとんどが、公募落選作や未応募作をただ置いてるだけで、このお話より前に「連載した」と言えるのは、男の娘魔法少女のお話である「なぜ変身ヒーローは最初から必殺技を使わないのか」だけです。
連載第三段以降なのですが、今後二つだけなろうテンプレを書こうと思っています。
そのうち、今書きためてるのがこちらです。
「電脳ウィザードの異世界征服」
男性向け。無能力転生の知識チート。ヒロインの魔法細工と、主人公の数学知識によって、異世界でコンピューターを作る話
これは近日中に連載開始するので、是非とも、応援の方よろしくお願いします。
ちなみにもう片方は、女性向け乙女ゲー転生で、「もし攻略対象の美少年が全員男の娘になっていたら」というものです。
かねてよりお話ししている、続編についてなのですが、それを書くかどうかは、このお話が完結によりどの程度伸びるかにかかっています。
第二部:舞鶴編。鈴風ちゃんがツチノコ伝説を耳にして、舞鶴に合宿行く話。ゾンビとか出てきます。諒くんのライバルとなる推理キャラも出す予定。
第三部:山手線編。「鬼門を開く方法」や、某先輩の行方などの都市伝説に切り込みます。
第四部:詳細未定だけど、漠然と熊野古道絡みでなにか書きたいです。
続編をよみたい!と思ってくださる方は、ぜひ、ブックマークやレビュー、ポイント評価に他薦感想等よろしくお願いします!
では最後に、この作品へのエールをくださったみなさんに、深く感謝させてください。
それではっ! 続編か、次の連載でお会いしましょう!
(2019/11/16追記)
別作品の改稿版をアップロード中です。みなさんもぜひ読んでください!
本作のラブコメパートのノリが好きならおそらく楽しめるはずです。
魔法少女になったんですけどこれお約束展開を守るのって絶対しないとダメですか?え?破っても大丈夫?なら好き勝手やっちゃいます!~テンプレブレイカーな男の娘魔法少女~
https://ncode.syosetu.com/n0509dl/
あと、本作続編の話なのですが、漠然と舞鶴編より先に「京都市と周辺の中高生の間で『青い鯨』が流行る話を書きたいなあ」と考えています。




