まさか家まで来るとは
『今日は部活日和、超常現象研究会に入りたくなる。今日は部活日和、超常現象研究会に入りたくなる。今日は部活日和、超常現象研究会に入りたくなる。今日は部活日和、超常現象研究会に入りたくなる。今日は部活』
「だあああああああああああ!!!!!!!」
金曜朝。こっくりさん事件を解決した俺は謎の雑音で目を覚まし、枕元のICレコーダーに寝起きの全力チョップをかました。
画面が割れて、ようやくそのやかましい不快な音が止む。
俺はそのレコーダーを乱暴に掴んで、大慌てで一階に降りた。
「いやあ。諒さん。今日もいい部活日和ですね」
「なわけあるか!」
俺は平然と食卓に座る鈴風に言う。
なぜだ。なぜ両親と姉は、当然のような顔をして鈴風を受け入れているんだ。
「諒。やるじゃないか。転校してわずか二週間でこんなかわいい子を捕まえるなんて」
父親がなにか意味のわからないことを言ってくる。
「お前、どうやってこの家に侵入したんだ!?」
「人聞きの悪い言い方やめてください。普通にインターホンを鳴らして、お母様にあげてもらったんです」
「はぁ!?」
俺は両親をねめつける。二人とも俺から目をそらした。
「それで、俺の枕元に置かれていたこれはなんなんだ!?」
俺は手に握った壊れたレコーダーを突きつける。
「あー! なんで壊しちゃったんですか!?」
「寝起きにあんなもん聞かされたら壊すだろ!?」
「あんなもん、とはなんですか! 私の美声目覚ましコールを!」
お前のお陰で俺は最悪の目覚めだよ!
「どうですか? 部活入りたくなりましたか?」
「なるわけあるか!」
「ていうか、部屋はちゃんと片付けた方がいいですよ」
「余計なお世話にもほどがある! それが勝手に人の部屋入った人間の台詞か!?」
「ちゃんとご両親の許可はとりましたよ?」
「俺に無断で許可を出すな! プライバシーを守れ!」
「ふう。ごちそうさまでした。おいしい朝食でした」
鈴風は優雅にコーヒーを啜る。俺の言葉は親によって黙殺された。
「あらあら。それはけっこう。あたしのことは、お義母さんと呼んでくれていいのよ?」
「そうでしたか。ありがとうございます。お義父さん。お義母さん」
「お義父さん。いい響きだ。鈴風ちゃんみたいな子が義理の娘とは嬉しいぞ」
「やめろ! 俺の学校生活のみならず、家庭にまで侵食してくるんじゃない!」
俺は鈴風の頭をつかみ、後ろへ引っ張る。
「痛いですよ。やめてください」
「お前、どうして俺の家が分かった」
「持田さんが教えてくれました」
「あいつ……!」
あいつも一度締めねばならないかもしれない。
「鈴風ちゃん16歳? 諒はあと半年で18歳になるから……」
「なにまだ高校生の息子を結婚させようとしてるんだ!? あんたそれでも俺の親か!?」
「まあまあ。諒。冷静になれ。お前みたいなひねくれた奴が、こんなかわいくていい子を捕まえられる機会なんてもう二度とないかもしれん。お前が大学を出るまでは資金援助してやるから、このチャンスを逃すな」
「失礼すぎるだろ! 冷静にならないといけないのはあんたらだよ!」
こうして、俺の週末朝は、大馬鹿者共によって家庭が荒らされただけで終わったのであった。