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放課後のこっくりさん

 次の日、休憩時間に俺は教室で、四人組のうち、持田以外の三人に今日の放課後もう一度こっくりさんをやろうと持ち掛ける。もちろん嫌がられたが、「こっくりさんの呪いを解くためなんだ」と説得し、全員を参加させることができた。


 そして放課後、一昨日こっくりさんを行った四人と、俺と鈴風と嵯峨根が再び教室に集う。


「今日集まってもらった理由は他でもない。昼間話した通り、超常現象研究会として、こっくりさんの呪いを解く方法を試してもらいたい」


 教室の中央に机を置き、その周りに椅子を四つ設置。机の上におととい使ったものと同じ紙と十円玉をセットする。


「念のため確認しておきたいんだが、おととい四人はあのあとすぐに学校から出たんだよな?こっくりさんに呪われた人間が学校に残っていると、今日のやり方で除霊できない可能性がある」


 四人ともがあれからすぐに学校から帰ったと言う。ここでその証言を引き出しておくことが重要なのだ。


 持田、倉橋、岡村と同じように椅子に座ろうとする左右田を、俺は止める。


「待て。お前だけは最初のこっくりさんからは外れてもらう」

「どうして…… ?僕の呪いは解いてくれないの?」

「そうは言っていない。必ずお前にかけられた呪いも解く。だが今回のやり方は、四人全員が前と同じメンバーだとまずいんだ」


 もちろんでっち上げである。そもそも呪いなんかかかってないのだから、解くにあたってまずい行為もなにもありゃしない。

もしここで倉橋か岡村が「なら代わりに私が抜ける」とでも言い出したら、「最初に外れるのはこっくりさんに一番乗り気じゃなかったやつがいいんだ」と言い訳するつもりだったが、その心配はなかった。


「じゃあ、なんで君は椅子を四つ用意したんだい?」

「代わりに鈴風に入ってもらう」

「そういうわけです。みなさん、よろしくお願いします」


 鈴風の言葉を聞いて、左右田はしばらく何かを逡巡する様子を見せる。だがやがて折れ、


「わかったよ。今回だけは君のいうことを聞いて外れてあげよう」


 と引き下がった。


 鈴風、岡村、持田、倉橋の四人はこっくりさんを始めるべく着席し、十円玉に指を伸ばす。


「鈴風ちゃんには、どんな指示を出したの?」


 小声で嵯峨根が問うてくる。


「いくつか質問を指定してはいるが、それ以外はなにも。ただ自然体で一切指に力を入れず、動きに抵抗せずこっくりさんに参加しろって言っただけだ。持田にも同じ指示をしてる」

「え……?それで大丈夫なの?」


 万が一こっくりさんがまた暴走を始めたら、その時は直ちに俺が入る。まあ、まず間違いなくそんなことは起こらないだろうが。


「じゃあ……。はじめよっか」

 倉橋が告げ、四人は十円玉に指を伸ばす。俺と嵯峨根と左右田は、その様子を固唾をのんで見守っていた。


「こっくりさん。こっくりさん。南の窓からお入りください」


 その時、教室の南側の窓からびゅうと風が吹き込む。「ひっ…… 」と岡村が怯えた様子を見せる。

「大丈夫だ。問題ない。続けろ」


 こんなのはただの偶然だ。たまたまタイミングが重なったに過ぎない。嵯峨根も、


「うん。何も気配を感じないから、確かに偶然で間違いないよ」


 と俺に耳打ちしてきた。わかってるよそのくらい。


「こっくりさん。こっくりさん。お越しくださいましたら、『はい』にお進みください」


 倉橋の言葉とともに、十円玉が動きだし、『はい』を指し示す。


「じゃあ、ここからは私が質問しますね。こっくりさん。あなたは、みなさんのことを恨んでいますか?」


 鈴風がそう言うと、十円玉はふらふらと動き、『はい』と『いいえ』の間を行ったり来たりする。

 そして最終的に『いいえ』の上に十円玉は移動した。


「ありがとうございます。じゃあ、みなさんのことを許してくれるんですね」


 今度は十円玉は『はい』に移動する。

 ほっと安心した様子の倉橋と岡村。その後、こっくりさんの手続きに則ってこっくりさんを送り返して、この儀式は幕を閉じた。


 そして「後片づけは俺たちでやっておくから」と言って、岡田と倉橋を帰す。持田は俺より腕っぷしが強いから左右田がなにかやらかしても対抗できるし、何より仲裁役としての役割が期待できるので残ってもらうことにした。


「なんなんだい。僕にだけ帰るなっていうなんて。もうこっくりさんの件は解決したじゃないか」


 左右田が心底面倒そうに言う。そんな左右田に、指を向け、そして俺は告げた。


「お前のやったことは。全部まるっとお見通しだ!」


 教室がしんと静まり返る。左右田はもちろんのこと、俺が今からなにをしようとしているか分かっている鈴風と嵯峨根と持田も唖然として俺を見てくる。

 やめてくれ。そんな目で俺を見ないでくれ。


「ちょっと諒さん。いきなり何いってるんですか!?」

「すまん。一度言ってみたかったんだ」  

「気持ちはわからなくもないですが、空気を読むべきですよ」


 お前にだけは言われたくないが、言ってることは正しいので、俺は一度こほんと咳き込んだ上でしきり直す。


「俺たちは全部わかってるんだ。左右田裕也。お前が、こっくりさんの呪いをでっち上げた犯人だってことはな」

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