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青銅の鐘突き人形  作者: 沼田紋次
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説明会開始

【説明会開始】



 どすん、と大男は巨大な木槌を担いだまま壇上の前に、床に直接腰を落とした。


「話せ」


 ようやく教壇の裏から出て来た黒縁は、木槌男の後ろ、出入り口から壇上まで続く一本の通路を眺める。影に隠れて良く見えなかったその通路は、割れたステンドグラスから差し込む月明かりでようやく全貌が確認出来た。


 それは丸く抜け落ちた床だった。


 直径五メートルは優に超える巨大な穴ぼこだった。


 床板は剥がれ、基礎のコンクリは穿たれ、鉄骨が更に地下へと向け折れ曲がっているクレーターだった。


 唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえ、その場が一人の男の手によって静寂に包まれた事を黒縁は理解した。


「話せ」


「えっ?!」


 再度、木槌男から投げ掛けられた言葉に黒縁は漸く眼前の危険人物へと目を向ける。


 白髪混じりのぼさぼさの茶髪にギラギラと鈍く輝く青い瞳。


 肩掛けを外したボロボロのオーバーオールに黄ばんだ麻のシャツ。


 革手袋と同様の、着心地履き心地共に最悪であろう、分厚くごわごわとしたジャケットとブーツ。


 時折ぱらぱらと飛び散る青錆は巨大な木槌の縁取りに使われている青銅だろうか。


「話 ―――」


「ちょっとアンタ。ナニ勝手に話し進めようとしてんのさ」


 再度、注目が赤シャツに集まった。赤シャツは木槌男の後頭部を射殺さんばかりに睨み付けている。だが木槌男は興味もなさそうに、四度目となる催促を黒縁に言い放つ。


「続きを、話せ」


「……折角の雰囲気が台無しじゃない。ムカつく奴も殺せずじまいよ。如何してくれんのさ」


「お前じゃ ―――」


 木槌男の反論に、赤シャツは振り向かぬその後頭部へボールを向け投げ付けた。


「?」


 そのボールは重く、硬く、何故かぐちゃりと湿っていた。


 テンテンと弾み転がるボールに全員の視線が移る。


 碧帽子が舌打ちをし、覆面神父が十字を切り、毛皮の少女が鼻をひくつかせ、五人組は興味もなさそうにそれぞれ明後日の方向に首を傾げた。


「え~~……、そうそう! 皆さん、機械のお身体は御所望でしょうか?」


 黒縁はそのボールを見なかった事にして話を再開し始めた。


 血が滴るボールを。


 野箆坊の生首をなかったことにして。

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