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青銅の鐘突き人形  作者: 沼田紋次
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チームで行こう

【チームで行こう】



「じゃあ、後は手筈通りで良いわね?」


「問題ナイ」


「今更よおう、ごちゃごちゃあと話し合う暇なんてえねえしなあ」


「ではまた後程」


「…ああ」


 何の面白みもない長方形型の工場ビル正面に無事集った六人。正確には五人と二匹と五組だが、その六人は事前に教会内で話し合った手筈通り二人一組に分かれビル内へ侵入しようと、互いにかける言葉も短く動き出す。


 神父とジャックマールはビル裏にある外部からの搬入物保管庫を目指し。エスメラルダとカマラ、ルー、ガルーは屋上を目指すため跳躍の姿勢に。ビジネススーツ姿の赤パンダと真っ黒な喪服姿のクローン五人組は堂々と正面出入り口から。


 それぞれがそれぞれの目的の為ビル内で働く無害な人間達の虐殺をも厭わない、狂言とは名ばかりの、本物の押し入り強盗が今、始まる。


「いやいやいや?!」

「…うっさいわねえ。一体何よ?」


「ちょっと待ってマジでちょっとでいいから!!」

「…私ニべたべたト気安ク触レルナ」


「少しほんの少しでいいから話しましょう!?」

「…俺のよおう、さっきの台詞、聞いてなかったあのかい?」


「まだ三分位余裕あんだしなっなっ?!」

「…それはもう、三分以上かかってしまう常套句なのでは」


「お願いしますマジでお願いします!!」

「……」


 ことはなかった。


「何よ。もしかして今更怖気づいたとか?」


 鬱陶しそうに掴まれていた腕を振り払い、意外にも聞く姿勢の赤パンダがクローンの一人、黒ネクタイに白抜きで数字の1と書かれた男、クロに尋ねる。


「そうだよ!!」

「マジかよテメエこら」

「ぎゃーーーっ?!」

「「ぎゃーーーっ!?」」

「「きゃーーーっ?!」」


 額に青筋を浮かべる赤パンダに胸元を掴まれあっさりと吊り上げられるクロに残りの四人が慌てて群がる。


「違うんです!!」「怖気づいたのは事実だけど違うんです!!」「話を最後まで聞いたください!!」「生首はイヤーーーッ!!」


「取リ敢エズ落チ着ケ。ドノ道、コノママデハ作戦ニ支障ヲキタス。話ダケデモ聞コウジャナイカ」


 涙目になりながら懇願する五人組を見て流石に哀れに思ったのか、それとも同じように群れを形成する者同士、何か感じ入るものがあるのか。腕と脚が伸び雰囲気をガラリと変えた、それこそ年相応な大人っぽい挙動を見せるカマラに視線が集まる。


「……アンタ、随分と変わったわね」


 ぞんざいにクロを放り出しカマラに向き直る赤パンダは視線も鋭く睨みつけ腕を組む。今やカマラのチョコレート色の肌が確認できる箇所は鼻から下の口回りのみとなり、残りは灰色の毛皮とメタリックに輝く銀色の滑らかな鎧で、更には僅かに見える肌でさえ青白く発光する幾何学模様の化粧に覆われ隠されてしまっている。


「前のアンタの方が断然良かったわ」


「…ソウカ。ソレハ悪カッタナ」


 未だ生きているかの様な毛並みと赤パンダを睨み返す様な眼球の動きを見せた狼の上顎を被るカマラの表情は窺えない。人間の様に両腕を構える、前傾姿勢な直立二足歩行となったルーとガルーの唸り声が辺りに響く。


 教会内での顔合わせを思い出させる、張り詰めた空気が漂った。


「おい」


 尤も、案外時間に厳しいこの男がこれ以上の無駄な遅延を許す筈もなく。


「既に三分経った。続きは歩きながらでいいだろう」


 一人、保管庫へ向け歩き出したジャックマールにやれやれと首を振るエスメラルダが続き、クロを介抱していた神父もクローン達と共に後へ続く。


 どちらともなく視線を外し、殺気と共に息も吐いて出した二人と二匹も後を追った。

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