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青銅の鐘突き人形  作者: 沼田紋次
18/20

彼らの在るべき姿

感想貰ったので更新です。

リハビリ兼ねてなので短いです。

【彼らの在るべき姿】



 トラックの荷台から自動で伸びるコンベアを搬入口へ、その奥の保管庫へと続く手前に設置された検査機の入り口へと繋ぐ。二十五桁の暗証番号を手早く打ち込み、腕から引いたプラグを検査機の制御盤へと刺し込み、荷受け係は自身の回路内へと意識を集中させる。


『今日は大物が混じってるから気を付けろよ?』


『了解』


 無遠慮に自身のメールボックスへ直接書き込まれるまれる文字に対し、律儀に返信機能でメールを送る荷受け係は外に駐車されたトラックのサイドミラーへ向け腕を振る。運転席の窓から出されるサムズアップのサインと共に、コンベアが限界可動域ギリギリで高速回転しだした。


『どんくらいで終わりそうだ?』


『あ―…、一分てとこだろうな』


 荷受け係は荷台の中を覗きつつ、保管庫の内壁に折り畳まれ設置されていた大小様々なアームを遠隔操作で解放させていく。アームは感覚を確かめる様に、動物さながらの滑らかな動きで関節の曲げ伸ばしをし、ぐぐっと大きく可動域ギリギリまで反らしている。


『積載量スレスレに圧迫してる大物もあんだぜ? 一分は無理だな』


『じゃあ一分三十秒だな』


『無理だっての』


 呆れた様子を出すのに普段使いしないフォントを連ねるトラック運転手に対し、荷受け係も挑発的に直接相手のメールボックスへ文字を書き込む。


『もし一分三十秒以内で片せれなかったら、コーヒー奢ってやるぜ』


『おっ、言いやがったな』


『そのかわり、片せれたらお前が奢れよ?』


『ノった』


 三分はかたいだろうと、運転手は荷入れの際に掛った時間を思い返す。自販機の中でも普段は高過ぎて手を出す気にもなれないヤツにしようと、未知の味に対する期待を膨らませ荷降ろし開始の操作をしていく。


『何時も通り、一つ目が検査機に入った瞬間からな』


『コンベアの回転数、落とすんじゃねえぞ』


 最後に冗談混じりの絵文字も互いに書き込み、カメラやセンサー類にコンベアとアーム以外の機体制御を順次手放していく。


 此の姿こそ自身が望まれている姿であると理解する彼らは、あっさりと物言わぬただの機械へ、金属とオイルとプラスチックの塊へと成り下がる。


 必要最低限の動作性のみ残し、自我を失った、ただのトラックからの搬入コンベアと荷物の受け取りアームと化した二体のロボットは可動限界ギリギリで黙々と仕事をこなす。


 それが本来の、ロボットのあるべき姿であるという、ある種の誇りを持って。


 



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