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青銅の鐘突き人形  作者: 沼田紋次
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銀色

出来てる所まで出したので今後の更新はゆっくりとしたものになります。

【銀色】 



 薄暗い室内。ブラインドの隙間から洩れる僅かな陽射しに照らされるのは、ステンレス合金に彩られた銀色の世界。


 イスやテーブルは勿論。壁から床、カトラリーや調度品の類も全てが冷たく硬い金属で統一されたその場所は、特別なモチーフで設えられた悪趣味の産物でもなく、この時代の極々一般的なカフェの内装だった。


 全人類の五割が重く硬質な半機械体(サイボーグ)という時代において、木製やプラスチック製の家具では直ぐに破損しまうが故の変化である。


 更には人類の総数を凌ぐ勢いで製造されていた人型ロボットの登場も合わさり、それらの普及に拍車を駆けていたのだ。


 しかし、それも十数年前までの話。


 殺人ロボット、テツオ・ホリの登場により、人型のロボットは急激に数を減らしていく。


 一体のロボットが引き起こした殺人。


 それは紛れもない人類への反逆であり、人類と機械の、戦争への可能性だった。


「この十数年でよお、ホリ・テツオが製造された同時期と後の連中がぜ~んぶバラされて、街中で御目に掛れる完全機械体(ロボット)なんざあ、半世紀以上ぅ前の骨董品だってえのに」


 碧色の中折帽子を目深に被り、固い金属の椅子にだらりと腰掛ける男は分厚いカタログをテーブルの上にばさりと放り投げる。


「よくもまあ飽きもせず、チィマチマ最新のロボット製造と研究なんかを続けて来れたもんだぜえ」


 投げ出された拍子に開いたカタログのページからは、


『どんなパーツもアナタの思いのまま』


『絶対に裏切らない従順な可愛いペット』


『もう一人で過ごす夜はやって来ない』等々。変態性を前面に押し出したキャッチコピーと成人指定な立体映像写真が次々に飛び出している。


「図書館で一世紀前の新聞を漁って観た所……」


 汚らわしいものを見てしまったと、カタログから顔を背けページをそっと閉じるのはエメラルドグリーンのラメが眩しい巨漢の覆面レスラー神父。


「ここ百年に渡り、幾つものロボット関連の企業がテロの標的にされてきたそうだ」


 左隣に座る碧帽子の前へカタログを押し返し、右隣の席を窺う神父は続ける。


「その都度、それらの企業には莫大な保険金が下り、立て直す頃には新たな企業へと名前を変え、今では世界有数の一大複合企業に成長」


「そのムレのリーダーが、あのメガネなのか?」


 神父の右隣、不思議そうに首を傾げるのはジャックマール(木槌男)の膝上にちょこんと腰掛ける、視界を分厚い革の手袋で塞がれたカマラ(毛皮少女)だった。


「…人とは、見掛けに寄らないものだ」


 カタログが開いた瞬間、咄嗟に少女の視界を塞いだジャックマールがぼそぼそと呟く。


 ぱらぱらと頭上から零れ落ちる青錆と邪魔な手袋を払い除け、カマラは顎を上げる。


「そんなテがイッセイキものアイダ、ホントウにツウヨウするのか? アト、カマラはジュウハッサイだ。コドモアツカいするな」


「……」


「……」


「…確かによお、見た目じゃあ判断なんて、出来ねえわなあ」

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