1DK、OL、女装ショタ
「ただいまー」
松本彩花、31歳、独身。ただいま帰宅。
「あ、おかえりなさい、お姉ちゃん!」
リビングに入ると、部屋の片隅で本を読んでいる男の子を発見した。この子は奥村翔太くん。年は7歳だ。訳あってこの子と一緒に住んでいる。
男の子と言っても、その容姿は女の子そのもの。薄茶色のつやつやで整った髪、白く透き通った肌、ぱっちりした大きな瞳、人形のように細い手足、ぷにぷにした頬、高くて透き通った天使のような声、どれをとっても完璧過ぎる。まさに天使!私はこの子に癒されるために毎日働いていると言っても過言ではない!
「お姉ちゃん、それは何?」
翔太くんは私が持っている3つの紙袋を指さしてそう言った。突然こんな大荷物で帰ってこられたら、驚くのも無理はない。
「ふふふ……これはね、翔太くんの服だよ」
「服?」
翔太くんはそう聞き返した。首をかしげる仕草も可愛い。
「そうよ。じゃーん!可愛いでしょ?」
私は紙袋の1つから服を取り出し、それを見せた。
「何それ?」
「何って、見ての通りセーラー服よ。これ着てみて!」
そう、私はこの子に、女の子の服を着せればもっと可愛くなるのではと画策し、厳選した女装用衣装を買ってきたのだ。そこでまず着させたいのが、このコスプレ用セーラー服。ドン・○ホーテで買ってきた。まずはセーラー服が似合うか確かめたい。
「そ、それって女の子が着るものでしょ?何で僕が……?」
「一度だけでも着てみて!お願い!」
そして長い交渉の末、渋々セーラー服を着てくれることになった。
結果は、思った通りだった。
「尊すぎる……!」
こうやって、見ているだけでよだれが出そうになる。・・・って、もう出てた。嗚呼、私の汚れた心が浄化されていく・・・
とりあえず翔太くんは女装するとより尊くなることは立証されたので、次に移る。
「じゃあ、次はこれを着てみて!」
「う、うん……」
私が次に取り出したのは、黒、茶、白を基調としたフリルワンピース。ベルギーが本店のブランド店(名前忘れた)で買ったものだ。さすがはベルギー産。値段は財布に響いたが、全ては翔太くんのためなので惜しまずに払った。
心ならず同意してくれた翔太くんがそれに着替えてくれた。
「あああ……」
フリルワンピ姿を見た瞬間、私の喉奥から変な声が漏れだす。ヤバい、尊すぎる。脳下垂体からドーパミンが大量に出てきて頭おかしくなりそう。
「ねえ、くるんって一回転してもらっていいかな?」
「こ、こう……?」
ブホッ!
「お、お姉ちゃん大丈夫!?」
「うん、大丈夫……」
まずい、一回転するの見ただけで、鼻から血がブリュッセルしてしまった。恐るべしベルギーパワー……!
早くしないと出血過多で死にそうなので3つ目の衣装を取り出す。
「こ、これも着てみてくれない……?」
私は鼻を抑えながら、紙袋から取り出した。
「そ、それは、無理!無理だよー!」
翔太くんは恥ずかしそうにして激しく着ることを拒む。何を隠そう、私が着せようとしているのはマイクロビキニ。これを着れば色々なところが見え見えになるのは明らかだ。これはついノリで買ってきたものだが、ここまで来ればもう引き下がれない。これが原因で手錠をかけられようが、世間から冷たい目で見られようが、翔太くんのビキニ姿を拝めるのなら私はそれで構わない!
「お願い!一生のお願いだから!後生だから!」
こんなことのために膝をついてお願いする自分がみっともないが、ビキニ姿を拝めないとあの世に行けない気がする。翔太くんは困り果てた様子でこちらを見ている。その時だった。
私のスマホから着信音が鳴った。私の部下からだ。とりあえず応答する。
「はい、もしもし。松本ですが」
「た、大変です!吉崎さんがまた……」
「え!?吉崎さんがどうしたの?」
「と、とにかく来てください!」
「分かった。すぐ行く」
電話の様子からしてかなり焦っているようだ。吉崎さん、と言っていたから、おそらくまた重大なミスをしたんだろう。
まだこっちはマイクロビキニへ着せ替えるという重大な仕事が終わっていないが、行くしかない。
「急用ができたから行ってくる。すぐ戻ってくるから!」
「た、助かった……」
私は急いで家を飛び出し、走り出した。
待ってろよ吉崎。お前のせいでビキニ姿見れなかったこと、一生後悔させてやる!
お読みいただき、ありがとうございました。
連載小説も書いていますので、そちらもよろしくお願いします!