女同士でパーティーを組んだらこうなる
声劇用の台本で、異世界ものです。
男女比は、0:3となります。
関西弁であることに、深い意味はありません。
読み方含め、ご自由にお読みいただければと思います。
京子……パーティーのリーダー的存在。愛称はキョーチ。運動神経がよく、職業は武闘家。
もん……心優しき幻術士。治癒魔法を得意とする。ちゃん付けで呼ばれることが多い。
あゆ……職業は踊り子。ずぼらな性格。他のメンバーからは、あゆ太と呼ばれている。
街外れにあるダンジョンのなか。
京子、もん、あゆがダンジョン内でまどろんでいるようにもみえるが。
京子 「もんちゃん、MPあといくらくらい残ってる?」
もん 「あと24あるよ」
京子 「そっか。ほな、まだ余裕あるね」
もん 「うん」
あゆ 「なあなあ、お腹すかへん?」
京子 「お腹?」
もん 「ああ……言われてみたら少しすいたかも」
京子 「私はまだ平気やけど」
あゆ 「嘘やん……わしなんかさっきからけっこう限界きとって、このままやとモンスターにやられるより先に餓死してしまいそうやわ。ようしゃべる力もあらへん」
京子 「しゃべってるやん」
あゆ 「いや、でも、けっこう限界なんはほんまやねんて。ちょっともう動けへんかも」
京子 「何か食べるもん持ってこんかったん?」
あゆ 「薬草しかない」
京子 「薬草だけ?」
あゆ 「わし、基本食べもん持ち歩かへんからなあ」
もん 「あ、キャラメルならあるよ」
あゆ 「キャラメルじゃお腹ふくらまんよー」
もん 「(あゆに手渡す)どうぞ」
あゆ 「(意表をつかれ)あ……ありがとう(食べる)うーん、でも、おいしーママの味やー」
京子 「ママの味? なんやそれ」
もん 「あゆ太の実家って洋食屋さんか何かなんよね、たしか」
京子 「へーそうなんや」
あゆ 「そうなんよー。ママはお菓子つくるんも得意やから、なんか思い出してもうたー」
もん 「ふふふ」
あゆ 「おいちー元気でたー」
京子 「(笑)よかったな」
あゆ 「うちの店ってあれやねん、店自体が狭いから5人以上の団体客は基本お断りって感じでお願いしてるんやけど、その断り方がな、ママはどうもそのへん、あんまうまないんよな。きつい言い方になりがちっていうかな、冷たいっていうんか、わしはママのそういうとこ嫌いやないんやけどな、無駄に愛想ふりまかへんとこっていうか……でも接客業やねんからそれじゃあかんってパパとよう喧嘩になっとったりするんやけどな……そやけど2人ともさっぱりした性格やから気ぃついたらまた普通に話してるみたいな感じになっとって、わし、あの雰囲気好きやったな。なんだかんだで仲ええいうか」
もん 「(にこやかに)うんうん」
京子 「はい、おしゃべりおしまい。あそこにスライムがおる。NE方向」
もん 「あ、ほんまや」
あゆ 「こっちに気づいてるっぽい?」
京子 「いや、多分まだ気づいてないっぽい」
もん 「あれ? でも、なんかいつもの子と色ちがわんくない?」
あゆ 「たしかにちょっと緑っぽいかもしらん」
京子 「あかん、あいつ毒もちのスライムや」
もん 「毒もちのスライム?」
あゆ 「ああ~やから緑色なんかあ」
もん 「え、どういうこと?」
あゆ 「いや、毒ってなんか緑っぽいイメージやん」
もん 「それをいうたら薬草も緑色やよ」
あゆ 「あ、そっか」
もん 「緑って基本自然に優しい色やからね」
あゆ 「自然に優しいんかあ、それ大事やな」
京子 「もんちゃんって解毒魔法はもう使えるんやっけ?」
もん 「ううん、まだ覚えてないけど」
京子 「そっか。せやったら、今戦うんは危険やな」
あゆ 「毒消し草があったら平気やないの?」
京子 「そんなもん持っとらん」
あゆ 「もんちゃんは?」
もん 「私も毒消し草は持ってへんなあ。満月草ならあるけど。毒消し草って地味に高かったんよね。あゆ太は?」
あゆ 「わしは薬草しか持ってへん」
もん 「え、じゃあ、どうするん?」
京子 「あいつに気づかれないように、この場を去ったほうがよさそうやな」
あゆ 「あ、でも、もしあのスライムを至近距離から見たら、めっちゃイケメンかもしれんやん。それでも逃げるん?」
京子 「スライムにイケメンとかないから」
あゆ 「(考えて)それもそっか」
もん 「あゆ太ってイケメンとか好きなん?」
あゆ 「嫌いなやつなんておらんやん。もんちゃんもそやろ?」
もん 「うーん、私は別に……」
京子 「よし逃げるよ」
もん 「(何かに気づいて)あ、キョーチ待って……あそこにもなんかいてる」
あゆ 「え、どこどこ?」
もん 「ほら、あそこの下におりる階段の近くのとこ」
京子 「大丈夫。あれは化けガラスや」
もん 「化けガラス?」
京子 「あいつはいうほど強ないから問題ないよ」
あゆ 「でも、なんか頭蓋骨持ってるで」
もん 「ってことは殺人ガラス?」
あゆ 「え、なんかそれめっちゃ強そうやん。やばいんとちゃうの?」
京子 「どうせそのへんで拾ったやつやろ。大丈夫や、なんも問題あらへん」
あゆ 「ええー?」
京子 「ほら行くよ」
あゆ 「(嫌そうに)ええー」
一同、化けガラスに近づき、戦闘開始。
あゆ 「わっ、いきなり骨投げてきよった」
京子 「避けて」
あゆ 「避けた」
もん 「攻撃当てたよ」
京子 「私も」
あゆ 「食らった」
京子 「何を?」
あゆ 「カラスの攻撃」
京子 「被ダメは?」
あゆ 「けっこう痛い」
京子 「痛さやなくて、数値は?」
あゆ 「16食ろた」
京子 「16も? もんちゃん治癒魔法頼むわ」
もん 「え、誰に?」
京子 「あゆ太に」
もん 「了解!」
京子 「スキあり」
化けガラスの討伐に成功。
あゆ 「ふう……案外弱かったな」
京子 「16ダメも食ろててよう言うわ」
あゆ 「ま、勝因はわしが人骨を避けたとこかな」
もん 「うんうん、あれすごいなて思った」
あゆ 「やろー? 回避率には自信あるからなあ。ていうか、もしかしてわしらってけっこう強いんとちゃうの?」
もん 「あ、私もちょっと手応えを感じつつあるかも」
京子 「あほ、油断は禁物や。私らなんかまだまだひよっ子もええとこやねんから、調子に乗ったらあかん」
あゆ 「なあなあ、ちょっとだけ下の階に降りてみいひん?」
京子 「あかん。今日は地下1階までって、ここ来る前に決めたやろ」
あゆ 「ほんまちょっとだけやから。下おりて、もしやばそうやったらソッコー戻ろ。な? それやったらええやろ?」
京子 「うーん」
あゆ 「案外行けそうやったら地下2階でがっぽり稼いで、帰りにアツアツのピッツァをみんなで食べようや」
もん 「あ、それええな。ボルチーニ茸ものっけてもらってな」
京子 「(ため息)しゃあないなあ。じゃあ、ほんまにちょっとだけやで」
あゆ 「わーい、やったー!」
京子 「でもあれやで、ほんまにやばなったらすぐ引き返すからな?」
あゆ 「オッケーオッケー。大丈夫やて、そのへんは。なあ? もんちゃん」
もん 「うん、私ら基本臆病者やからな」
一同、下の階へおりようとした瞬間、階下から激しい爆音が鳴り響く。
あゆ 「なんや……今の音?」
もん 「すごい音やったね……」
京子 「爆発音や」
あゆ 「爆発音? 何が爆発したん?」
京子 「わからん……けど、多分モンスターの攻撃とかちゃうかな」
もん 「え……」
あゆ 「嘘やろ……どんな攻撃したらあんなえげつない音するんよ……」
京子 「でも、それしか考えられへんやろ」
あゆ 「……やっぱ今日はやめとこか」
もん 「う、うん……そうやね、あんまり初日からな……そんなきばってもあれやし……」
あゆ 「そうやな。うん、それがええわ。そうしよ」
京子 「下で何があったか気になるところではあるけど、ミイラ取りがミイラになる的なことにもなりかねんから、まだ余裕あるうちに引き上げとこっか」
もん 「そうしよっか」
あゆ 「でも、びっくりしたなあ」
もん 「うんうん」
京子 「まあ、私らにはまだ地下2階は早いってことかもしれんな」
あゆ 「うん」