悪魔の末裔~いつかニーチェに捧ぐ~
古き呪詛 反転する約束事 ヒタスラニ
血涙の海 痛苦という亡霊
永遠を呪う 言祝ぎの顛末 カキツヅル
羽のない翼 言われた復讐
炎が満ちる街 平和の岸辺 孤独ノ名前
崩れさる灯台 砕けた石碑
歪んだ剣が導く正義の果て 君ガ死ンダ
見えざる光に紛い物を詰め
断頭台に酔う善良な民衆は 今ヲ生キル
明日には口を拭うのだろう
幼子を喪った子守歌が響く 意味ヲ探シ
引き裂かれた祈り 青い鳥
少年が掲げた銃 誰かの首 サマヨウ顔
燃え盛る 燃え盛る 地獄
誰もが忘れて繰り返す歴史 踏ミニジル
熟した果実が堕ちていく今
その 儚さ から
君が 痛みを 堪えて
絶望のきっさきを拭う手に 自由ナ世界
見た光 暗転 静寂そして
愛ダトイウ、
果てしない命の哀しみに女神ミネルウァが与えた詩
被せられた鉄兜は偶像の産む悪魔の角か天使の輪か
しかし知恵が戦争の神たるは古今の書が示すとおり
選択の塔が剣となって殺し合えと命じる地獄の螺旋
効率的な、実に効率的なだけの結論を城とした飢餓
手垢のついた正論は救済を放棄して壇上に踊るのみ
もはや沈黙は彼我を渡す舟とならず干戈に埋もれる
知恵の女神よ、弓を竪琴に変えて顔を癒しへ向けよ
真の歌、真の言葉を持って、燃える人の木陰となれ
その湖畔に傷病が憩うまでミネルウァよ傘を広げよ
留意せよ、幻想でなく擬人として
感染する悪意と狂乱を悪霊と呼ぶ
人は象らないものを掌握できない
永劫回帰の人は象る罪を逃れない
御しがたい痛苦を彼は犬と呼んだ
その唸りは響き社会の病となった
静穏なき議論は土台の正当がない
やはり、やはり、やはり、悪魔と
侵食する思想体系を呪うであろう
十字架よ三日月よダビデの星達よ
善悪を知る知識の木の前で止まれ
ありきたりになってしまった義憤とやら
美しきルサンチマンのヴェールを燃やせ
「ざまぁ」と明日の自分を踏んで満足か
あらゆる仕返しは煉獄の扉であると知れ
正当な反射であれ、犯した罪は己の傷だ
自覚せずとも子孫より現れ来る業である
哀れな若者は生誕を恨んで
愚かな老人は長寿を悔やむ
命ある幸いと不幸よ
その魂を風に乗せよ
雲となり眺めた山海
フクロウと数えた星
天塔をバベルと笑い
グランドゼロに花を
我らは繰り返し生きるのやも知れぬ
しかし、その知にも意味はないのだ
いいや、価値(可知)こそ幻影なれ
……
なべて闘争よ安らかに眠れ、吐息と共に。