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無声の少女  作者: けい
ドルストーラ
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精霊との付き合い

 ライナは精霊が見える。

 父であるディロがどのような見え方をしているかはわからないが、彼女には森の精霊は緑から藍色までのグラデーションの色合いをした、空飛ぶ小人のように見えていた。藍色の目は大きくて白目はない。くるんとカールした髪は濃い緑で、耳はとがっているけど先のほうは割れて羽のようだ。女の子らしいものいれば、男の子らしいのもいる。みんな仲良しで恋人のいないライナには、イチャイチャしている集団にしか見えなかった。


「父さん、なんで連れてきたの」


 ぶすっとした顔をして父と兄を出迎えたライナは、視線を二人の後ろに向けている。アロイスは見えていなかったが、精霊たちはずっとディロの後ろをついてきていたのだった。手のひらサイズで小さいとはいえ、それが30以上集団でいるのを見ると、ライナはさすがにため息をついた。


「母さんのハーブが欲しいらしい」


 ディロは困ったように目尻を下げつつ、ライナの頭を撫でながら家に入っていた。そしてそれまでディロに付きまとっていた精霊たちは一気にライナに押し寄せてきたのだった。


「あーもー!暑苦しいっ」


 じたばたと手足を振るが、精霊の見えないアロイスや母からするとライナが一人で暴れているようにしか見えないので笑ってしまう。


「母さん、ハーブ早く早くっ」

「はいはい」

 

 ライナに呼ばれ、母は笑いながら雑貨店に卸すつもりで作っていたハーブを取り出した。そして出窓のところにミルクの入ったコップと、平皿にハーブを盛り付ける。それに気づいた精霊たちがライナから離れて一斉に出窓に突撃していった。


「出窓開けておくの、少しでいい?」

「充分だ」


 アロイスが出窓を拳一つ分くらいの幅で開けてやると、精霊たちはミルクを一口飲み、ハーブを持てるだけ抱えてそれぞれが家から飛び立っていった。


「母さんのハーブは精霊にも魅力的すぎちゃうのね」


 楽しそうに笑いながら、母がテーブルに食事を用意していくのを見て、ライナも慌ててそれを手伝った。あれだけいた精霊たちは、気が付けばすべていなくなっていて、騒がしい空気もきれいになくなっていた。


 見えない騒がしさが過ぎ去ってから、ようやく揃って夕飯の時間となった。

 少し硬いパンと、熱いスープ。中身はじゃがいもと人参と玉ねぎ。あと、少しだけ浮いているのは先日仕留めた猪の肉だろうか。

 油でカラッと揚げた、山菜の天ぷら。父の前にだけエールを置き、あとは全員母特製の薬草茶だ。テーブルにつき、ディロが胸の前で手を組んで印を結ぶ。


「森の恵みに感謝いたします。明日もまた、恵み多き豊かなる一日でありますようお守りください」

「お守りください」


 森への感謝を述べて、ようやく食事開始だ。


 ここ最近の国の情勢は不安定で、きっと多くの家庭ではもっともっと貧しい食事をしているのだと思う。もしかしたら、食事すら摂れない者たちもいるかもしれない。

 けれど少なくともこの山村では飢えはなく、大きな戦火もきな臭い情勢とも縁遠かった。そのためか、村人に緊張感が欠場していることは否めない。




 【精霊士】はこの世界のどこにでもいる、精霊を見ることのできる存在のことを言う。多くは司祭や祈祷師。または国に重鎮として迎え入れられ、世界の共存のため精霊と対話する重大な役割を担っていた。

 しかし、ライナのいるドルストーラ王国に新しく即位した王は自らが精霊を見ることができないため、【精霊士】を胡散臭い存在としか認識せず、それまで国の中枢で活躍していた【精霊士】たちを粛清し始めたのだった。

精霊は仁義深い性質を持つ。信頼していた【精霊士】を裏切り殺したドルストーラ王国に対し、怒りを膨らませた多くの精霊たちは、国中の精霊に語り掛け、いままで行っていた自然の施しを行わなくなっていった。


 まず風を止めた。そして雨を止めた。作物を育てるために必要な自然受粉を止めた。

 その結果、ドルストーラ王国の食糧は枯渇。日照り・干ばつのため国中の物価が値上がりした。そして貧しいものから飢えていく。

 国民からの怨嗟の声を受けて、【精霊士】の処刑は止められた。だが、国王の意地が邪魔したのか冷遇処置はそのままになり、多くの【精霊士】が国からの脱出を図っているという―――


 そして最近では、飢えの解消を目的とした戦争を始めようとしている気配がある。

 隣のロットウェル共和国には【精霊士】はいないが、同意語である【魔法士】がいる。

 ドルストーラ国王は、胡散臭い隣国すら目障りなのだろう。

 そんな中にあって、この山村が無事かといえば、ディロのことを口外しない村人の口の堅さ。そしてなにより深い森に囲まれた立地条件であろう。奥深い森は他者の侵入を拒み、森にいる野生動物たちすら脅威ではなく、ある種の番犬替わりであった。


 精霊たちはディロを信頼し、愛していた。だから彼の噂を風に運ぶことすら禁じていたのだった。無害な行商人だけを森の道へ導き、不確かな者は惑わし引き帰らせた。精霊たちはそのことをディロには告げなかったけれど、ディロはしっかり気づいていた。

 お互い何もかも語り合う存在ではなかったが、確実に信用できることだけは間違いない。


 しかし、だからといって安心はできない。

 警戒すべきが自分の生まれ育った国の国王であるとは―――悲しい現実だった。


本当はここまでが1話のつもりでした…

3話はもう少し長くなるよう頑張ります。

説明だけで終わってしまった…進んでない( ;∀;)

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