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幕間
最終章に入ります。
よろしくお願いします
暗い穴倉の中。息遣いだけが耳に届く。
「気づかれているのでは」
潜められた声だが、それでも静寂の中では大きく聞こえた。声に含まれた焦りを感じ、それもまた緊張を高める原因になる。
「それはない……それに万一そうであったとして、もう誰にも止められない」
静かな男の声に、誰かわからない唾を飲み込む音がした。そう、もう誰も止められないのだ。
彼らの動きも、時の流れも。
「もうすぐ時は満ちるだろう。その時が―――」
彼は視線を剣の柄に向けた。
そこには、寄り添う二頭の馬の紋章が刻印されていた。