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無声の少女  作者: けい
ドルストーラ
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ロットウェル6人会議

ロットウェル共和国

 会議室内―――


 円卓のテーブルを囲う6人の男たち。この者たちが、このロットウェル共和国の中枢を担っている主要人物たちである。

 年代はバラバラだが、全員が貴族であることだけは間違いない。ただし、議会員として承認されている期間は、貴族としての爵位を名乗ることを禁止されている。それは権力集中を避けるために考えられた策であった。

いまから32年前。この国もまた、今現在火種を抱えている隣国(ドルストーラ)と同じように愚王を頂点に据えていた時代があったのだ。



「ドルストーラはどうなっている」


 口ひげを蓄えた男が、集まった一同を睨み付けるかのように見渡した。決して睨み付けたわけではなく、ただ単に目つきが悪いだけである。この男クレイツは、近衛隊前隊長をしていた強者として有名だった。現在59歳。現役を引退した今でも、大きな体に大きな剣を携えている。


「相変わらずきな臭い動きをしておるよ」


 ニコニコ顔の好々爺―――アジレクトがのんびり答えつつ、用意されていたお茶をずずっと口に含む。御年82歳。6人の中でもちろん最高齢だ。きれいに整えられた白髭がトレードマークだと公言している。ちなみに飲んでいるお茶は、一人違う薬草茶だ。


「密偵たちによれば、精霊士狩りと並行して、民も強制徴集しているとか」


 沈痛な声を出し、肩を落として俯いてしまっているのは、自他ともに認める平和主義。長い白髪を青いリボンを使い、ゆるく結んでいるバーナム。俯いてしまったために、メガネがずれて落ちそうになっている。クレイツとは腐れ縁で1つ年上の60歳だ。近衛隊長と平和主義の学者が幼馴染というのも因縁なのだろう。


「愚かなことだ」

「その場しのぎの捨て駒兵か」


 クレイツの言葉に、同意しつつ不敵な笑顔を見せたのは、切れ長の目と肩までの黒髪の細身の男ディクター。もう45歳だというのに、一人の女性を愛し続けられず、いまだに独り身を謳歌している男だった。俗にいう女好き。そして実は好戦的な男でもある。


「徴集時には人足だと告げているようだが、ほとんどが進軍のための『盾』として連れられているらしい」


 平和主義者が顔を歪めて報告する。すでに涙目だ。

 すぐに同情をしてしまうのは悪い癖だとわかっているが、こればかりはバーナムにもどうしようもない。


「民あっての国だと、あの愚王はいつ気づくでしょうか」


 白衣を着た学者がぽつり、と言葉を落とした。エガッティ39歳。―――由緒正しき某貴族の子弟でありながら、精霊研究に没頭しすぎて放任されたという変わり種だ。根は素直で正直。しかし精霊が関わると寝食も忘れて研究室にこもりきりになる。


「気づく前に滅びよう……」

「自滅に巻き込まれる民があわれだな」


 アジレクトがため息をつき、ディクターがその後を引き継いだ。自国の内乱の時、ディクターはまだ13歳だった。


「我らが愚王は死ぬまで気づかなかった。前例を見れば、ドルストーラ王も死ぬまで気づかぬ同じタイプだろう」


 クレイツが苦々しく呟く。当時彼は、城の警備を任されていながら、愚王に反旗を翻した一人だった。


「【精霊士】はどうしていますか」

 6人目の声は、とても凛とした耳触りのいいものだった。最年少28歳。そしてこの6人会議の議長でもあるファーラル。美しい金の髪と青い瞳はまさに「王子様」のようだと、国中の女性たちから憧れられている。妻も恋人もいない彼を狙う女豹は数多といたが、彼自身が仕事優先で寄ってくる女たちを完全に無視していた。


「大部分は身を隠しているようです。なんとか【精霊士】何人かは、こちらへ逃れてこれたようですが……」

「まだ愚王から身を隠し、機を狙っているものもいるでしょう。見つけ次第保護・亡命を」

「かしこまりました」


 エガッティの報告に、ファーラルは涼やかな瞳を細め、命令を下す。議長であるファーラルの指示を断り、違う意見を述べることもできる。平等に権限を持つとするのが6人会議の定義だ。けれど、議長の発言が一番強いのも間違いない。そして議長として最年少の彼を持ち上げたのは、残り5人なのだ。


「こちらの【魔法士】はどうしていますか」

「国境付近にて、精霊との対話を続けていますが、今のところ動きはないようだ」


 バーナムが困ったような視線を向ける。答えを欲しているのではなく、これがいつもの顔。


「引き続き、監視と警戒を」

「はい」

「……いま、国境担当の【魔法士】は誰だったかのぅ」


 好々爺アジレクトが白髭に触れつつ首をかしげた。


「バーガイル伯爵です」


ディクターがその名を告げると、会議室の空気が多少和んだようだ。


「それなら安心ですね」


 口元を緩めたファーラルに、その他5人が「うんうん」と頷いていた。


 その様子を議会の書記兼、ファーラルの秘書ガーネットは、すらすらと議事録に書き込むとインクを渇くのを待たずに表紙を閉じた。



一気に登場人物が増えまして、申し訳ございません。

6人会議の地位順です。

28歳 ファーラル

82歳 アジレクト

59歳 クレイツ

60歳 バーナム

45歳 ディクター

39歳 エガッティ


年齢は気にしなくていいです。とりあえず決めただけなので。

そんなに頻繁に出てきませんので、とりあえずファーラルとアジレクト爺さんだけ記憶していただけると嬉しいです。

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