ヤンデレ妹の策略
ヤンデレ妹と兄の朝の日常です。
「ねえねえお兄ちゃん、私が彼女になるから」
「いや、お前は彼女じゃなくて妹だし」
「大丈夫、血は繋がってないって設定だからさ」
「いやいや、正真正銘、同じ親から産まれてきた兄妹だから!」
朝食を食べながらいつもの会話が始まる。そう、毎日毎日飽きもせず。
しかし今日は少し違っていた。
「じゃあさ、血を変えちゃおっか」
何だって? 俺の耳はいつ腐ってしまったのだろうか。
チヲカエル?
うちの近所にそんな両生類がいただろうか。居たとしたらきっと可愛らしいカエルだろう。だってチヲちゃんってアダ名がつくぜきっと。
「いやあ、今日もいい天気だな妹よ」
「お兄ちゃん、今日は雨だよ」
うん、知ってる。話をそらそうとしてるのだよ、マイシスター。
「だからね、血を全部取り替えれば結婚できると思うの、お兄ちゃん」
妹はそう言うと包丁を持ったままニコニコしている。
いや、お前それ怖いって! てか血を取り替えればいいとかそういう問題じゃなくね? 絶対間違ってるって神に誓って断言できる。
「とりあえず落ち着こうぜ妹よ、ほら今日はお兄ちゃんがコーヒー入れてあげるからさ」
「ほんと! 嬉しい! 血を抜く時は優しくしてあげるからね」
「まて! 俺の血を抜く気なのかよ!?」
すると妹はウットリした顔になって、
「うん、だってお兄ちゃんの体に触っていいのは私だけだもん」
なんて言いながらモジモジしてやがる。
それだったらお前が病院にいってやってもらえ!
などとは無論言えない、むしろ先に頭の中身をどうにかしてもらいたい。
そもそも妹がこうなったのは俺が甘やかし過ぎたせいでもあるのだ。ここは俺が何とかせねばなるまい。
ここはひとまず妹のご機嫌をとって、うやむやにするしかないだろう。
「ほら、このコーヒーを飲んで一息つけよう、そうしよう、なっ」
「わかった、お兄ちゃんの愛の汁いただくね」
……妹よ、ちょっと卑猥だぞ。
「今日はな、特別にブレンドしてみたんだ、どうかな?」
「早く私達もブレンドしないとね、お兄ちゃん」
駄目だこいつ早く何とかしないと。
てかそろそろ学校行く時間だな。何とかごまかせそうだ。
「おっとそろそろ時間やばいな、学校いこうか」
そう言って立ち上がった俺だったが、
「ダメ」
即答された。
「いやダメって言われても学校い……」
「私と学校どっちが大事なの!」
俺の言葉を遮って、悲鳴に近い声でそう叫んだ。
えー!
今日の妹マジでどうした!
いつもより押しが強いぞ。ここは慎重に返答せねばなるまい。
「いや、そりゃもちろん妹だけど……ほら、欠席させるわけにはいかないしさ、お前の事が大事だから!」
もう必死で力説した。早く学校に行きたい。同級生との普通の日常会話がしたい。それだけだった。
「ふーん」
あれ、なんか呆気無い。もっと感動されると思ったのに。
「もうね、お兄ちゃん、私疲れたの」
そう言ってため息をついていた。
いや、俺のほうが毎日疲れているし、ため息もつきたいんだが。
「毎日アプローチしてるのに……もっと食いついてよ! 貪欲になってよ! 欲望をさらけ出してよ! 正直に言ってよ体が欲しいって!」
やばい、ちょっとヒートアップしてる。すごい熱血してる。なんかコブシ握ってハッスルハッスルポーズしてるし。
「いやいやいやいや! 一度もそんなこと思ってないから!」
もう、今日の妹はやばいどころじゃない。
すべてを超越したスーパー妹になってる。 ただの兄だと太刀打ちできない。
「ねえ、私ってそんな魅力ないのかな……」
急にしゅんとしてしまい、上目使いでこっちを見ている。
相変わらずというか、起伏が激しい。
でも、やばいちょっと可愛いな。
不覚にもそう思ってしまった。
「もうわかったよ、お兄ちゃんが私のことお嫁さんに貰ってくれないならもう意味ない」
妹はそう言うや否や立ち上がった。
「おい、何する気なんだよ」
玄関の方へと歩いてた妹は立ち止まりこちらを向いた。
妹の瞳はまるで死んだ魚のような目をしていた。
「お兄ちゃんの友達の○○君と××なことしてくる」
そういうとフラフラとした足取りででていこうとする。
「お、おい待てよ! ××ってなんだよ!」
ふざけんな!
そんなくだらないことで人生ダメにする気かよ!
○○にやるくらいならいっそ俺が!
俺は妹に駆け寄り手を掴んだ。そしてそのまま手を引き妹を抱きしめた。
「お前は俺のものだ! 誰にも渡さないからな」
「お兄ちゃん……ぐすっ、好き、大好きだよ」
妹は兄の胸の中でニヤリと笑っていた。
「もう絶対離さないから」