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そこにオレガノはあるのかい?

練習用に短編作るつもりが連載に……朝倉朋花頑張って作ってますがあまりにも遅筆なので修行してます。

 人生は航海だ。

 恐れより勇気を携え、舵を取って大海へ漕ぎ出そう!

 そんなクサイ事を思っていた時もあったんだ。


 しかし現実はあらゆる出来事が滞留して、灰色に濁った学園生活を送るだろう。

  そんな悲観的観測をしていた。






 ────────────────────────

 チャイムは既に鳴っていた。

 それがなんのシグナルかはわからない。


 白昼の陽差しが窓際の席に向かって入ってくる。

 教室は眩い光で影が落ち、舌打ちがゴングになる。

 自分の場合は銅鑼(どら)が鳴る……かな。


 教室の左側に窓が配置されてる不条理を呪いながら、利き手に置いた携帯を机の右側に移動させる。




 机の横に置いたエナメルバッグから忙しそうに本を取り出しては、

 まるで嵐に備える投錨(とうびょう)のように自分の席を死守していた。


「なんかあの人怖くない?」「なんであんないつも必死なんだろ」

 自分に言ってるのかなんなのかわからない遠くからの声がするが……

 気にしない、気にしないぞ……。



 顰め面をしていると誰かがシャッとカーテン閉める。

 少しムッとするも気にせずに着用していたマスクを顎にずらし、

 いつものルーチンワークを始める。



 年季の入った本のページをわざわざ左手で捲り、

 古びた紙の薫りが鼻腔をくすぐる。

 珈琲みたいで好きなんだよな。


 今だけは時間を忘れて没入したい。


 恵風和暢(けいふうわちょう)な穏やかな風が、明るい薄茶色のカーテンを優しく撫でる。


(……ん?……食べ物の匂い。オムライスか??)


 弛む脳にひとさじの刺激。

 運ばれてきた香りに誘われたように目を滑らせる。



 ふと、綺麗な黒を目の端で捉えていたことに気づく。


「ん?」瞳に映ったモノが綺麗な髪の毛であると認識し、そっと本をどけると長い髪を靡かせた女の子が真正面からこちらを見つめていた。


「!?」



「こんにちは。カーテン勝手に閉めてごめんね。なんか眩しそうだったから」



「あっ、あ、え?は、はい?」


「ずっと思ってたけどさ?持田君って左利きだよね?この窓際の席って何かと不便じゃない?」


「え、え?……ああ、うん。いやそれほどでも……」


 びっくりした……な、なんで椅子こっちに向けてガン見してるのこの人!?


 いきなりのことに思わず顔を伏せてマスクを口元まで上げ本を見るフリをしたが、彼女はそっとこちらの机に肘を置き両手で頬杖をつく。


「凄い集中して読んでるよね。これ……船の本かな?かなり古くてなんだか良い匂いするような……」


 本を覗き込んでる!?何だこの状況!?


 のんびりとした声とは裏腹に彼女はどんどん距離を詰めてくる。


 思わず体を後ろに反らし、目がバッチリ合ってしまう。


 近い近い近いなになに目的!?すんごい目見てくるしこわ〜。


 生徒が浮き出し立つ季節とは言えこの距離感はバグってる。


 まるで人懐っこい猫のようだ。


 この高校に入学して数週間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、彼女のことはなんとなく覚えている。

(水野莉奈(みずのりな)さんだ)  


「こここここ」



「ん?なになに?」



「こけぇ!!!」



「ぷふ、何?どしたの急に。にわとりのモノマネ?」



 噛んだ……しかも笑われてしまった……。


 照れて顔がトマトのように真っ赤になる。


 これは……と言いたかったのだが、テンパりすぎて恥ずい……最近じゃ親ともろくに話してないせいかブランクが……





「大丈夫?なんか息苦しそう。マスクずらして深呼吸しよ?」

 言われるがままにぎこちない深呼吸を数回繰り返した。


「……ごめんね。驚かせちゃったかな?私気になるとくっつこうとしちゃうから」



「は、はあ?」



 くっつく???男にも??なんかいつの間にか隣まで移動してるし、ほんとだからすんごい近いって!!


「顔赤いし緊張解けないねえ、どうしてだろ……うーん。

 ストレッチとかする?」



 いやあんたが心臓に悪い!とは言えるわけない。





「伸ばすと気持ちいいよ〜。こーんなかんじーーー」


 隣でレクチャーされつつストレッチをする。


 言われるがまま体を伸ばすが心ここに在らずみたいな……。


 なんで俺はクラスの女子とこんなことしてるんだろ。



「おっ?良い感じになったねえよかった」


「言われてみれば……楽になったような」



「……なんか持田君は私の弟に似てるなあ」



「え?」



「あはは、私の事お姉ちゃんって呼んでいいよ」



「よ、呼びません!」



「なんで、敬語なの?」


「……いや、別に……」


 言葉に詰まると何かを察したかのようにニッコリ微笑み、「ごめんね。またしゃべろうね」と気さくに手を振りながら自分の席に戻っていく。




「あっ」


 思わず身を乗り出すのだが彼女の後ろ姿をただ見つめていた。

 ……なにかもっと喋ったほうがよかったのかな…オムライス食べたのかとかオムライス好きなのか……とか……少し後悔した。




 ……ふと、俯いていると床に古びたペンが床に落ちていることに気づく。



 手を伸ばし拾うとどうやら万年筆みたいだ。



 考えなくてもおそらく水野さんのだろうと、前のめりになりながら後を追いかけようとするが、立ち上がろうとした瞬間にカバンに蹴躓いてしまう。




 ガガッとその衝撃で机が動き、中に入れっぱなしにしていた漫画が落ちてしまう。

 即座に片付けて必死に平静を装うのだが……人目を引いてしまい気力を挫かれるように座った。



 ほんとダメ人間すぎる……。

 俺みたいなやつにも億さないで話しかけてくれた春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)たる大人な水野さん。

 簡単に優しいという言葉は使いたくないが多分優しいんだろうな。

 正反対な自分に嫌気がさしてくる。






 彼女の第一印象はオムライスとなり、香水とか洒落たものではなく風味豊かなほんのり甘いバターと甘酸っぱいトマトの香りの人……

 考えるまでもなく昼食で食べたのだろうが、敏感な鼻で嗅ぎとったせいで頭から離れてくれない。

 あだ名はオム子さん……かな。




 ……そういえばまたって言ってたな。その時にこの万年筆を落としたか確かめよう。



 窓をぼんやり見ると青空が大海原のように広がっていた。



 チャイムが鳴り昼休みの終わりを告げる。


 まだ少し心臓がドキドキしていた。

 この気持ちはなんなんだろう。


 開拓されていなかった未開の領域にまだ付ける名などない。ただ、人生16年目の航海は群青色の春に包まれていた。

お読みいただきありがとうございました。

いいわけばかりの人間ですが頑張って書いていきます!!

遅筆治す!!


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