第七話 色のない世界
敏志の前で踏切は大きな音を立て‥通行人を守ろうと‥遮断桿を下ろしていた。
夕刻時‥周りには買い物を終えたどこかのお母さんが‥荷物をたくさん手に持ち、ビニール袋からはネギが飛び出していた今夜は楽しいすき焼きかもしれない。
またあるサラリーマンはケーキの箱を持ち‥子供達と楽しいひと時を過ごすかもしれない。
カップルや友達同士‥楽しい笑い声‥人の生命‥
敏志は目をつぶり、それを感じていた‥自分には楽しい瞬間はいくつもあったが人生の楽しさを見出すことが叶わなかった。最後に笑ったのは‥最後に感動したのは、
周りの人の塊‥自分だけ取り残された世界、目を開けると、風景や人に色はついてなく、モノクロだった。
「ぁ‥あぁ‥もともとこの世界には色なんてついてなかったんだ‥」
電車の音が近づいてきた‥
大きな音のはずが、小さく聞こえる‥
大きな電車が、小さく見えた‥
大きな人生は、今小さく消える
遮断桿をくぐる‥
途端に何かに引っ張られた‥
大きな音と共に電車が目の前を走る‥
気がつくと‥世界にまた色が戻っていた‥
背中に柔らかい‥人の皮膚を感じた‥なんて暖かいんだろぁ‥まわりのざわめきが耳を刺激した。
「親‥‥お‥お父さん‥‥なにしてんだよ‥」
この声はさっきまで一緒にお酒を飲んでた茜だった。
敏志の小さな頭は‥茜の大きな胸におさまっていた。




