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私には前世の記憶なんてない!…と思うんだけどなぁ。  作者: ハシドイ リラ


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9/11

兄たちの思い その2

上手く纏まったので、今日で完結にしてしまいます。

このお話が本日1話目で、この後2話、3話と続きます。

間が抜けてもなんとなく繋がるかもしれませんが、全部読んだ方が絶対スッキリ!なので順番をお間違いないようお願いします。


「師匠には大変申し訳ないのですが、わたくしは卒業と共に平民になる予定です。我が家には伯爵位と子爵位がありますが、伯爵位は嫡男である兄に、子爵位はひとつ下の弟に、と考えております。私は師匠のおかげで商才は得ることができましたが、文字通りの裸一貫のスタートなのです。お嬢さんを苦労させぬほどの男になれるかどうか…。ですので謹んでお断りをさせていただきたく。」



師匠も娘さんも呆気に取られて言葉にならなかったそうだ。

暫し沈黙が続いた後、ガハハ!という師匠の豪快な笑いが響き、娘さんも笑いが止まらなくなった。


「いや、君のことはもうわしも娘も手放せそうにないよ。」


「そうよ。わたしと結婚したい人なんて星の数ほどいるのよ。それを断るなんて!ね、お父様。私の見る目は確かだったでしょう?」


「確かにその通りだな。あーよく笑った。君の無欲さには驚かされるね。」


目尻の涙を拭いながら師匠は言った。


「早とちりは商売で1番ダメだと言ったろう?…誰が嫁にやると言った?君が!我が家に来るんだよ!」


"伯爵?子爵?そんなもん要らないよ!君が欲しいんだ!"


親娘に声を揃えて言われて、兄ちゃんは不覚にも泣いてしまったそうだ。自分が求められるというのはこんなに嬉しいことなんだな、と。


「だから遠慮なく子爵位は受け取れ。そしてお前もできることならお前自身を求めてくれる人を見つけてくれると嬉しい。」


幸せそうな兄ちゃんを見て、ホントに兄ちゃんをすっ飛ばして爵位もらっていいの?と戸惑っていた気持ちがスッと消えた。


弟も安泰だし、俺は遠慮なく子爵位を貰って伯爵になった兄ちゃんを支えながら、無難で平和な一生を送るんだ!



※※※※※※※※


彼女には兄がいる。だから彼女はどこかに嫁入りするんだと思っていた。

親父さんを紹介して貰い、仕事を学ぶ機会を作ってくれた事にとても恩を感じている。

だからこそ。彼女に対して自分の"好き"という気持ちだけで接することはできなかった。


子爵位を継ごうと思えば継げただろう。だが絶対に弟の方が適任だ。アイツは自分のことを平々凡々な人間だと思っているようだが、そんな訳ない。気がつけば周りには人が集まり、揉め事が起きてもサラッと解決する。それに成績だって15位より下になったことが無いんだ。本人は


「まあまあ、嫁さん貰って子供作っても養っていけるくらいの職は見つけられると思うよ」


などと言っているが、学園で15位以内だぞ!謙遜にも程がある。しかもこの年代は第一王子の側近やら妃やらを狙う家々でちょっとしたベビーブームで、公爵家を筆頭に高位貴族の子息令嬢が山盛りだ。

貧乏伯爵家の我々とは教育に賭けている金額が違うんだよ。

そんな人達に囲まれての15位以内だ。もっと誇ってもいいことなんだけどな。

だからこそ爵位が高いとはいえないが、弟に子爵位を譲ろうと元々考えていた。あいつなら自力で爵位を上げるくらいの活躍はできるだろうから。


俺は俺で同じクラスに大きな商家の娘さんがいて、元々商いに興味があったから頼み込んで親父さんに弟子入りさせて貰ったんだ。…あわよくば彼女とお近づきになりたい、という下心があった事は認める。





最初は店先の掃除から。


「ほら!お客さんが来たら大きな声で挨拶しな!」


最初は気恥ずかしかったが、周りに合わせていくうちに自然と


「いらっしゃいませ!」


大きな声でにこやかに挨拶できるようになっていった。それを見かけたクラスメイトには


「貴族の息子なのにそんなことからやらされんの⁈」


と、驚かれたものだ。だが、この"掃除と挨拶"というのは侮れない。


「いらっしゃいませ!」


「オウ!坊主!今日も元気じゃねえか!」



そう。顔を覚えて貰えるのだ。師匠にも散々言われた。


「掃除と挨拶てのは疎かになりがちなんだよ。そんなの仕事じゃないって思う奴もいるし、自分にはもっと大きな仕事が相応しいなんてやつもいる。けどな、1番目立つ店先でだよ。」


師匠の眼力が強くなる。


「気持ちよく大きな声で挨拶する、率先して掃除する。ーー見てるやつは見てるんだよ。それが理解できるかできないか。今ウチで大きな仕事を任せてる奴らはみんな"威勢の良い若いのが入って良かったな"って褒めてもらったやつばかりだよ。」


最初はホントか⁈とも思ったが、ホントだった。

店先で元気よく挨拶していたことで、販売に回った時にはすでに顔見知りがいた。


商品の説明や売り込みも、顔見知りになったお客様からダメ出しを食らいつつ覚えていった。

商品知識が乏しかった頃も、嫌な顔をされても仕方ないのに


「お前ってさ、何かと気分のいい接客なんだよなぁ。だからか知らないことに怒るより育ててやろう!って思っちゃうんだよなぁ」


と言われるのだ。最初は俺って得な性格だなぁと思っていたが、師匠に真面目な顔で


「えっお前得な性格だって思ってたのか?イヤイヤイヤ…」

と引かれてしまった。

師匠曰く、

「伸びる奴はみんなそう言われてた。」

んだとか。

「ああでも、確かにみんな俺って得な性格だとか言ってたなぁ。」

そういうところが伸びる要因なのかなぁ。

と首を傾げながら師匠はどこかにいってしまった。


まあそんな感じで卒業が間近になる頃には師匠の営む商会に雇って貰えることになった。

とはいえぺーぺーの下っ端も下っ端だ。しかも初めての平民一人暮らし。最初は右も左も分からずカツカツの生活だろう。

…彼女に自分の思いを伝えるなんてとてもじゃないができないな。




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