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魔物狩りの冒険者にケチをつける花火伯爵の話

作者: 山田 勝

「こりゃ!魔物を狩るのにこんなに人数が必要なのか?!」


 俺は松永康夫、32歳のおっさんだ。異世界に転移した。

 サコタ伯爵領で冒険者たち10人と魔物狩りをしていたら、クエスト主の伯爵殿が現場に出てきた。

 とりあえずご退場願おう。


「伯爵殿、危ないから出て行って下さい」

「はん!貴様、ワシを誰だと思っている!」


「はい、伯爵様です。クエスト主ですよね」


「どうして、こんなに人数が必要なのか?少数精兵で良いではないか?」


 何だ。金を心配しているのか?


 俺はかいつまんで説明した。

 少数精兵にはワナがある。


 少数精鋭の方が良い場合があるなんていう輩は、間違いなく少数精鋭ではないことだ。まあ、インパール作戦の牟田口を連想する。

 が、丁寧に説明した。


「はい、彼らは勢子でもあり。見張りでもあるのです。魔物を見張るだけではありません。住民の皆さんが、この銃という兵器から守るためでもあります」


 俺は現代武器を召喚出来る。愛銃は64式7.62ミリ小銃だ。

 やれ、クロックタイムが遅い。重い。穴に籠もって討つ想定だ。

 とミリオタから酷評されるが、


 彼らが想像する戦争はサバゲーだ。近接での撃ち合いだ。戦争の一局面でしかない。

 俺は200から300の距離で戦うのが得意だ。


 それに64式を使うのは口径は7.62ミリだからだ。対して他の銃は5.56ミリ、殺傷力は段違いだ。


 軍用銃の威力は半端ない。簡単に数百メートル先の敵を殺し。

 最大では2キロを超える。


 絶えず周りに人がいないか。確認しなければならないのだ。


「・・・ですから、魔物を運ぶにも彼らは必要ですよ。なんなら伯爵殿運んでみますか?」


「やめさすぞ!」


 その一言が決め手になった。


「キャンセルですね。分かりました。では、おい、皆、撤収だ」

「「「はい、リーダー!」」」


「お、おい、君、ワシに辞めさせる権限あると思うのか?」

「あるでしょう・・後でキャンセル料はギルドを通じて請求します」



 俺は冒険者たちを解散し、宿に戻った。


 宿には俺の相棒、エスダがいる。

 転移したおっさん冒険者には必ず美少女がつく。

 俺にももれなく美少女がついた。


 ジト目系15歳だ。


「マツナガ、お帰り。お風呂にする?それとも食事?」

「風呂だな」


 最近、女房みたくなってきたな。俺に敬称をつけない。


「仕事早かった」

「ああ、キャンセルになったからな」


 俺はエスダに銃の分解整備や射撃を教えながら依頼を探した。

 俺は特に魔王討伐には行かない。

 地道にコツコツとクエストをこなして日々の金があれば十分だ。



 それから魔物討伐のクエストを受ける。

 熊に似た三ツ目グリズリーや、キメラ、蛇女、人喰い大狼など、最近は多いな。




 ☆☆☆サコタ領


 サコタ伯爵邸に住民が魔物討伐の嘆願に多く訪れるようになった。


「いいか、魔物は花火で逃げるのだ!それでやれ!」


「「「そんな。馬鹿な」」」

「伯爵様、それでは農作業出来ません・・・」


「皆、臆病だな。ワシが話をつけてくる」



 フン、皆、何も分かっていない。

 冒険者は二重取りをする。金目的だ。


 クエスト料の他に、魔物一体銀貨数枚で買い取らせる。

 ウハウハではないか?

 クエスト料が高いのだ。


 だから、ワシは近隣の冒険者ギルドでクエストを依頼した。



 ☆冒険者ギルド


「はい?時間大銅貨一枚と中銅貨一枚(千五百円相当)のみ?しかも、実際に魔物と戦った時間だけですか?」

「うむ。頼んだぞ!我が領には冒険者ギルドがない。他領のギルドからワシの領地の魔物を狩れ!」


「はい、一応、クエストを張り出しますが・・・」





 ☆松永視点


 あれから、クエストを受けていたら、サコタ伯爵から使いが来た。


「マツナガ殿!伯爵は謝罪をしました!」

「分かりました」

「頼みましたよ」


 それだけ言って急いで帰りやがった。

 誰に対してか?

 謝罪をしたことにたいしてだけ分かったと返事をした。


 まあ、いいか。あ、しまった。キャンセル料もらうの忘れていた。


「エスダ、どうしようか?」

「損金として処理をした」

「それしかないな。他で稼ぐか」



 何回か使者が来たが怒っている。


「マツナガ殿、早く来てくれ!」

「え、依頼だったの?無理だよ。俺、他のクエスト受けているから」

「何故!」


 無理なものは無理だ。

 あそこのクエストは時間給だ。

 しかも実働時間だ。


 魔物と戦っている時間のみ支払われる。日本で言えば時給千五百円だ。数日かけてサコタ領にいって、それから捜索して魔物と戦って2時間として三千円か?

 さすがに冒険者は金だけではないが少なすぎる。



 それから、王国のクエストを受けた。

 サコタ領の住民の護衛だ。

 サコタ領は魔物があふれ放棄される。と王国は決断した。


 俺とエスダは参加した。いくつものパーティーが合同だ。


 リーダー会議に出席した。



「もう、領都の中にも魔物が出没している」

「スタンビードの兆候大!」


 危機的な状況だ。

 問題は殿しんがりは誰がやるだ。


 気が重い。

 しかし、それは近代兵器を持っている俺の役目だ。


 手をあげようとしたら、伯爵邸から轟音が聞こえた。


「大変です。サコタ伯爵が花火で魔物と戦っています。音に釣られて魔物が集まっています」

「「「何?」」」

「馬鹿な。花火で魔物と戦えるはずがない」


 俺は察した。花火で魔物と戦う馬鹿はいない。

 伯爵殿は魔物を引きつけているのだ。


 ・・・自らを犠牲にして。


「皆、伯爵殿の決死の覚悟を無駄にするな。今のうちに民を逃がすぞ!」

「「「「分かった」」」」


 金にうるさい強欲だと思ったが、最期、領主の責任を果たしたのだな。


「敬礼!」


 俺は伯爵邸に向かって挙手の敬礼を行った。

 エスダも見よう見まねで右手を目の位置にあげた。


(助けてくれ~~~~!)


「マツナガ、助けてくれと聞こえる。伯爵の声?!」


「そんなわけないだろうさ。それは決死の覚悟の伯爵を愚弄する意見だ。まさか、伯爵邸付近に現れた魔物に花火で戦いを挑んで返り討ちにあった馬鹿ではなかろう」


「うん、そうだね」


 民を運び馬車を背景に、サコタ伯爵の顔が大きく大空に浮かんだ。


 まだ、まだ、この世界も捨てたものではない。



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