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78話 死闘の果てに

――カイ視点


朝靄が薄く神殿内を満たし、カイは剣ルクスを腰に収めたまま深い呼吸を繰り返していた。開かれた扉の向こうには漆黒の闇が広がり、その先に待つのは魔王アズラエルの玉座の間だ。剣先には確かな蒼光が宿り、アリウスの魂を浄化したことでかつてない力を感じさせる。だがカイの心には焦燥と緊張が混在していた。


「皆、準備を――」

カイは低い声で号令をかけ、仲間たちを振り返った。リリアナは杖を胸に抱え、蒼光の結界を扉の入口に張り巡らし、瘴気の侵入を防ごうとしている。マギーは巻物を胸に抱えながら呪文を頭の中で再構築し、瘴気断裂陣の最終調整を行っていた。ガロンは剣を肩に担ぎ直し、剣先の蒼光を揺らしつつ闇の中から敵の気配を探っている。ジークは短弓を肩に掛け、矢を番えながら足元の石畳を確かめ、暗がりに潜む魔獣や兵の影を見逃さぬよう集中している。セレスティアは杖を胸に抱え、小さな祈りの光を放ちながら仲間の背中を温かく包み込むように見守っている。ルレナは剣を胸に収めたまま目を輝かせ、小さな身体に揺るぎなき意志を秘めて立っていた。


カイは剣先を微かに揺らし、蒼光を確かめた後、一歩踏み出した。深い闇の中で、ルクスの蒼光がわずかな道筋を描き出す。カイはその光を頼りに、ゆっくりと前へと進んだ。その瞬間、闇の中から轟音が響き渡った。瘴気の渦巻く空間の先で、魔王アズラエルの影がゆらりと浮かび上がる。


「カイよ……ついに来たか」

アズラエルの低い声が両耳を貫くように響き、カイの背筋を凍りつかせた。瘴気を纏ったアズラエルは玉座の間の中央に座し、その妖艶な瞳をカイへ向けている。カイは剣先を揺らしながら、仲間の背中を振り返り、一瞬の覚悟を固めた。


「アズラエル……ついに決着をつける。俺たちの光を、貴様に見せてやる」

カイは剣ルクスを抜き放ち、その蒼光は広間全体を淡く照らし出した。アズラエルは優雅に立ち上がり、漆黒のマントをひるがえすと、闇の瘴気を手先で操りながら一歩踏み出した。


■   ■   ■


アズラエル視点


カイの蒼光が広間を照らすと、アズラエルは薄く笑みを浮かべた。その笑みは狂気と知略を併せ持つ恐怖の象徴であり、瘴気の柱は彼の周囲に黒い渦を形成している。アズラエルは目を細め、カイを見据えながら優雅に手を掲げた。


「光か……面白い。その刃がどれほどの闇を切り裂くか、興味深いな」

アズラエルの声には一片の揺らぎもなく、その存在から溢れ出す瘴気は広間を重苦しい闇へと染めあげている。彼は杖を軽く振るいながら、瘴気を渦にしてカイへ向かって放ち、その威圧感を高めた。


「貴様らがここまで来られたのは認めよう。しかし、この魂は――この世界は、私のものだ」

アズラエルはその言葉と共に瘴気を膨張させ、巨大な瘴気の龍を形作った。その龍はカイたちを一気に包み込もうと襲いかかる。アズラエルは漆黒の瞳を細め、さらなる瘴気の力を引き出す詠唱を始めた。


■   ■   ■


――カイ視点(続)


巨大な瘴気の龍が襲いかかると同時に、カイは剣先から蒼光を迸らせた。ルクスの刃に宿る光は、瘴気の龍の口元に閃光を放ち、一瞬で瘴気を裂いた。瘴気の龍は呻き声をあげながら広間に散り、闇の渦は一瞬だけ揺らいだ。カイはその隙を逃さず、剣を振りかざした。


「ルクス――この一撃で、貴様の闇を断つ!」

カイの詠唱が響き渡り、剣先から放たれた蒼光の刃は瘴気の痕を一閃で切り裂き、アズラエルの黒い瘴気を一瞬で広間から浄化した。光が廃墟と化した間を照らし出し、アズラエルは咆哮をあげながら後退した。


「ふ……愚かな」

アズラエルは呑気にも笑い声をあげながら、その瘴気を瞬時に再結集し、広間を再び暗闇へと変えた。カイは蒼光を揺らしつつも剣を次の構えへと移し、息を整えた。


「ここが……我々の限界か?」

アズラエルは遠くない足元に瘴気の泉のような何かを潜ませ、そこから暗い瘴気を引きずり出す。カイは蒼光を強めながら仲間を振り返り、一瞬だけ目で合図を交わした。リリアナは杖を高く掲げ、マギーは巻物を構え、ガロンは前へ踏み出し、ジークは矢を番え直し、セレスティアは静かに祈りを深め、ルレナは剣を胸に強く握りしめた。


「行くぞ、仲間と共にこの闇を打ち砕く!」

カイは蒼光の刃を引き連れ、アズラエルへと突進を開始した。


■   ■   ■


リリアナ視点


カイの号令に応え、リリアナは杖を前方に掲げ、蒼光の結界を広間全体に張り巡らした。瘴気の渦を抑え込むため、杖先から放たれる蒼光は踊るように闇を切り裂き、間の空気を一瞬凍結させる。アズラエルの瘴気魔法が再び轟くと、リリアナは深く息を吸い、詠唱を続けた。


「瘴気浄化・結界展開! 瘴気の侵入を許さない!」

杖先から放たれた蒼光の壁が瘴気を押し返し、黒い霧を細かく砕きながら広間を清浄化していく。リリアナは左腕を強く握りしめ、痛みをこらえつつも詠唱を止めない。仲間たちの背中を守るための最後の砦として、リリアナは蒼光の結界を全身で支え続けた。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナの結界と呼応するように、マギーは巻物を胸に抱えて瘴気断裂陣の最終呪文を詠唱した。地面に刻まれた紋様が白く光り、瘴気の渦を裂くように裂け目が走るたびに、瘴気魔獣が咆哮をあげて崩れ落ちた。マギーは次に瘴気追放陣を展開し、残留した瘴気を一気に吸い上げるように浄化していく。


「瘴気追放陣、発動! 瘴気の残滓を完全に断て!」

マギーの詠唱が完了すると、瘴気が白い霧となって蒸発し、広間には清浄な空気が戻った。マギーは巻物を閉じ、仲間を見上げながら静かに呟いた。


「この呪文があれば、瘴気の壁を乗り越えられるはずです。リリアナの結界と私の呪文が一つになって……」


■   ■   ■


ガロン視点


瘴気が浄化された広間で、ガロンは剣ルクスを肩に担ぎ直し、鳴り止まぬ剣戟の鼓動を血潮と感じながら前方へ突進した。ルクスの刃先は蒼光を宿し、瘴気魔獣を薙ぎ払うたびに黒い塊を砕き、仲間の進路を切り開いた。


「カイの背中は俺が護る! この剣で貴様の瘴気も打ち砕く!」

ガロンは剣を振るうたびに剣先から迸る蒼光を壁面へ向け、その光が暗闇の影を切り裂いた。瘴気魔獣が再び現れようとも、ガロンの剣が闇を断ち割り、仲間を守り続けた。


■   ■   ■


ジーク視点


カイとガロンの剣戟を援護しつつ、ジークは短弓を引き絞って闇の中に潜む敵影を探し続けた。瘴気が払われた空間では、魔獣の闇が次々と剣戟に晒され、ジークの矢は確実に命中していく。


「兄貴の背中は俺が護る! この闇は俺の矢が吹き飛ばす!」

ジークは炎のように輝く矢を手にし、暗闇の奥から現れた魔獣の頭を狙って矢を放った。矢は瘴気を貫き、そのまま標的を穿ち、魔獣は呻き声をあげて斃れた。ジークは再び呼吸を整え、次なる危機へと目を向け続けた。


■   ■   ■


セレスティア視点


神殿の最深部で静かに祈りを捧げるセレスティアは、杖先から放たれる祈りの光を断続的に放ち続けている。その光は仲間の背中を温かく包み込み、瘴気の残り香すらも浄化するかのごとく拡散している。セレスティアは目を閉じ、祈りの言葉を静かに紡ぎ続けた。


「愛と慈悲の光よ、仲間たちに揺るぎなき希望と力を与え給え。闇の中でも彼らの魂を照らし続けよ」

その祈りが響くたびに、古代文字が刻まれた壁が淡く光り、瘴気の残滓が空間から消え去っていった。セレスティアはその祈りを最後まで捧げることで、仲間の背中を支え続ける決意を胸に刻んだ。


■   ■   ■


ルレナ視点


暗闇を払う祈りの光に包まれながら、ルレナは剣を胸に握り締め、小さな身体を震わせつつも決意を新たにした。仲間と共に進むこの先にどんな困難が待ち受けようとも、ルレナは信じる心を手放さない。


「皆、私はここで祈ってる……あなたたちが勝利することを信じてる」

ルレナは小さな声で呟き、剣先から放たれる祈りの想いを仲間へ送った。その祈りが仲間の蒼光と共鳴し、闇を切り裂いていく。


■   ■   ■


――カイ視点クライマックス


仲間の援護によって瘴気の渦が消え去り、剣戟と矢と祈りが一つとなったその瞬間、カイは剣ルクスを高く掲げた。蒼光の刃先が暗闇を切り裂き、反響する雷鳴のように広間中に光が迸る。カイは全身の力を込めて詠唱を始めた。


「ルクスよ、アリウスの魂と共に――この一撃で世界を照らす光となれ!」

その声と共に、剣先から放たれた蒼光は巨大な光の柱となり、魔王アズラエルの瘴気を瞬時に貫いた。瘴気は一瞬で崩れ去り、黒い闇は白い閃光に飲み込まれる。アズラエルは咆哮をあげながら光に呑まれ、黒い瘴気の衣が剝がれ落ちて朽ち果てた。


広間には一瞬の静寂が訪れ、仲間たちは深く息を吐きながら互いの顔を見渡した。リリアナは杖を胸に抱き、涙を浮かべて微笑み、マギーは巻物を閉じながら安堵の息を漏らした。ガロンは剣先を下ろし、荒い息を整えながらも剣先に宿る蒼光を確かめた。ジークは矢を背負い直し、静かに頷いた。セレスティアは祈りの光を天へ解き放ち、ルレナは微笑みを浮かべたまま剣を胸に強く握りしめた。


「これで……アズラエルは倒れた。俺たちの光が、暗闇を打ち破ったんだ」

カイは剣ルクスを腰に収め、深く頷くと仲間に告げた。その声には、試練を乗り越えて共に歩んだ絆と誇りが宿っている。


こうして、「死闘の果てに」の章は、魔王アズラエルとの最終決戦を制し、世界に再び光を取り戻す瞬間で幕を閉じた。彼らの旅は終わりを迎え、平穏な未来へと歩みを進めるのであった――。


78話終わり

お読みいただきありがとうございます。

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他にもたくさんの作品を投稿していますので見て頂けると嬉しいです

https://mypage.syosetu.com/2892099/

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