表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/100

76話 魔剣の真実

――カイ視点


朝靄に霞む魔王本陣の最深部へと続く通路を抜け、カイは剣ルクスを腰に収めながら深呼吸を繰り返していた。彼の目の前には、かつて魔剣ルクスが封印されし古代神殿が広がり、その床には無数の亀裂が走っている。瘴気が完全に消え去った今も、そこに残る闇の気配が過去の戦いを語っているかのようだ。カイは左腕の傷を押さえながら剣先を振るい、微かに揺らめく蒼光を確認した。ここが、ルクスの真実を知る場所であり、彼がその剣に込められた運命と向き合う最後の舞台だ。


「……ここが、魔剣ルクスの真なる起源が隠された場所か」

カイは低く呟き、一歩ずつ床の亀裂を跨ぎながら奥へと進んだ。神殿の壁には古代文字が刻まれており、その文字はかつてルクスに宿った英雄の魂の物語を語っているという。カイは剣を握る手に力を込め、剣先を天井へ向けると、蒼光が壁面の文字を浮かび上がらせた。


「リリアナ、皆、壁をよく見てくれ。ここに刻まれた古代文字が、ルクスの正体を語るはずだ」

カイの声に、一行は静かに周囲を見渡した。リリアナは杖を高く掲げ、マギーは巻物を開いて古代文字の翻訳を支援しようと詠唱の準備を整え、ガロンは剣先を揺らしながら警戒を怠らない。ジークは短弓を肩に掛け直し、周囲の警戒を続けつつ古代文字を凝視する。セレスティアは杖を胸に抱え、淡い祈りの光で壁面を照らし、ルレナは剣を胸に抱えて恐る恐る周囲を見渡していた。


カイは剣ルクスを軽く揺らし、壁の文字を反復するように見つめた。そこにはこう刻まれていた。


「かつて人の世を救うべく、英雄アリウスは魔王の軍勢と相対し、その魂を剣に託した。だが剣は裏切りと憎悪に囚われ、アリウスの意思を汚す邪剣と化した。彼の魂は剣に縛られ、永遠に光と闇の狭間を彷徨うこととなる。真の使い手が魂を浄化せしとき、剣は再び世界を照らす光となるであろう」


カイは剣先を下げ、深い息をついた。剣ルクスに宿るのは英雄アリウスの魂であり、その魂は邪剣としての意思に囚われつつも、真の使い手を待ち望んでいるという。カイは剣を腰に収め、仲間に向かって静かに告げた。


「ルクスはかつて英雄の魂を宿し、邪剣と化した。それを、真の使い手が魂を浄化することで再び光となるらしい。つまり、俺がルクスを使い続けることで――俺自身がこの剣の呪いを断つ鍵となる……」


カイは剣先を揺らしながら言葉を噛み締め、その覚悟を胸に刻み込んだ。仲間は沈黙のまま見守り、リリアナが静かに口を開いた。


「カイ様、その覚悟は……あなた自身の魂を削ることにもなるかもしれません。けれど、仲間と世界を守るために必要なことなら、私たちはあなたと共に歩みます」


カイは深く頷き、剣ルクスを強く握りしめたまま奥の祭壇へ進んでいった。


■   ■   ■


リリアナ視点


カイの言葉に応えるように、リリアナは杖を胸に抱え、古代文字の刻まれた壁をじっと見つめた。そして、マギーが翻訳を補佐する間に、リリアナは自分の頭の中で詠唱を反復し、瘴気を完全に浄化するための詠唱プランを思い描いた。


「瘴気浄化・結界展開、瘴気追放陣、瘴気封鎧陣……どの呪文も、カイ様の剣を正しき光へと導くために欠かせない。私たちにできることはすべて尽くす」

リリアナは杖先から微かに蒼光を放ち、壁に残る瘴気の残痕を凍結させた。その光は、カイが剣ルクスを振り下ろすときに必要なサポートとなることを信じている。


リリアナは深く息を吸い込み、静かに詠唱を始めた。


「瘴気浄化・結界展開!瘴気よ、今一度我らの前に立ちはだかるならば、この蒼光の結界にて朽ち果てよ!」


杖先から放たれた蒼光が光の壁を形成し、回廊に漂う瘴気を凍結させ、白い氷の結晶となって地面に落とした。リリアナはその隙にマギーへ視線を送り、次の詠唱の準備を促した。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナの結界が瘴気を抑え込む中、マギーは巻物を広げ、瘴気断裂陣の紋様を石床に刻み出した。その紋様は複雑で、ゆらめく瘴気の奔流を一瞬で引き裂く力を持つ。マギーは筆を滑らせるように詠唱を刻みながら、心の中で次の詠唱プランを構築している。


「瘴気断裂陣、発動! 瘴気の奔流を切り裂き、瘴気魔獣の影を消し去れ!」

マギーの詠唱に連動して、瘴気の奔流が裂け目を走るように裂け、黒い瘴気が白い結晶となって砕け散った。マギーは息を整えながら次なる呪文構成を思い浮かべ、リリアナの結界と連動させて瘴気追放陣を展開する準備を整えた。


■   ■   ■


ガロン視点


マギーの瘴気断裂陣が瘴気を断ち切るのを受け、ガロンは剣ルクスを軽く振るって蒼光を確認しながら回廊の奥へ進んだ。薄暗い通路の先で、かすかに黒い影が蠢くのを見捨てることなく、その剣先を引き絞った剣の構えで向かっていく。


「瘴気魔獣の影か……しかし、ガキの頃からこれだけ暗がりの中で先読みしてきた。お前らごときに俺の道は塞がせない!」

ガロンは剣を振るいながら瘴気の影を切り裂き、霧のように漂う瘴気魔獣を薙ぎ払った。そのたびに、ルクスの蒼光が剣先から迸り、瘴気を凍結させて魔獣を打ち倒していった。ガロンは仲間と村の希望を、この剣で最後まで護ると誓い上げている。


■   ■   ■


ジーク視点


ガロンの勇壮な剣戟を見届けながら、ジークは短弓を引き絞り、闇の中に潜む瘴気魔獣の気配を探る。周囲には殲滅されてなお瘴気の空気が漂い、ジークの目にはその瘴気が揺らめいている。ジークは小さく息を整え、矢先を一点に定めた。


「ガロン兄貴の背中は、俺が守る! 一矢たりとも外さない――!」

ジークは狙いを定めた瞬間、矢を放ち、瘴気魔獣の胴を貫いた。瘴気の塊は瞬間的に揺らぎ、魔獣は呻き声を上げて崩れ去った。ジークは再び矢を番え、次なる標的を探し続けた。その瞳には仲間を護る覚悟が揺るぎなく宿っている。


■   ■   ■


セレスティア視点


回廊の最奥で静かに祈り続けるセレスティアは、杖を胸に抱えながら淡い祈りの光を壁面に向けて放っている。その祈りの光はリリアナとマギーの紋様と共鳴し、瘴気を浄化する力を強化していた。セレスティアは祈りの言葉を優しく紡ぎながら、仲間たちの背中を照らし続ける。


「愛と慈悲の光よ、仲間たちの魂を支え給え。瘴気を浄化し、彼らの闘志を揺るぎなきものとせよ」

その祈りが空気を震わせると、瘴気の気配が一瞬ゆらめき、白い結晶のように砕け散った。セレスティアは目を閉じたまま祈りを続け、その薫りのような光が祭壇全体を淡く包み込む。


■   ■   ■


ルレナ視点


廃墟となった神殿へと続く回廊で、ルレナは剣を胸に握りしめ、仲間たちの背中を見つめていた。幼い体には瘴気の冷たさが染み込んでいるが、仲間と共に闘う覚悟が小さな胸を暖めている。ルレナは小さく声を張り上げた。


「皆、頑張って! 私はみんなの祈りをここで送るから!」

その声に、カイは剣先をわずかに揺らし、ルレナへ向かって微かに頷いた。ルレナは安心したように微笑み、剣を胸に強く握り締めた。


■   ■   ■


――カイ視点


瘴気の奔流を断ち切り、古代神殿の壁を浄化し終えた瞬間、カイは剣ルクスを腰に収め、仲間全員を振り返った。リリアナは杖を胸に抱え、マギーは巻物を畳み、ガロンは剣を肩に担ぎ直し、ジークは短弓を背に掛け直し、セレスティアは杖先から最後の祈りの光を放ち、ルレナは剣を胸に抱えて目を輝かせている。


「これで、魔剣ルクスの真なる力は解放された。アリウスの魂は浄化され、この剣は再び世界を照らす光となる。あとは、あの魔王アズラエルを討つのみだ」

カイは剣先を天へ向け、仲間に低い声で告げた。その声には、仲間と共に乗り越えた苦難すべてが刻まれている。


こうして、「魔剣の真実」の章は、ルクスに宿る英雄アリウスの魂が浄化され、真の光が宿った剣ルクスと共に最終決戦へと向かう瞬間で幕を閉じた。次なる最終舞台は、ついに「魔王アズラエルとの最期の決戦」である――。


76話終わり

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります!

他にもたくさんの作品を投稿していますので見て頂けると嬉しいです

https://mypage.syosetu.com/2892099/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ