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75話 禁忌の祭壇へ

――カイ視点


薄暗い朝靄が禁忌の祭壇を包み込む頃、カイは剣ルクスを腰に収めながら石段を一歩ずつ登っていた。祭壇の回廊を形成する石柱は無数に立ち並び、その間をくぐり抜けるように進むたびに、かつて封印された強大な瘴気の気配が微かに背後から押し寄せてくる。カイは剣先から迸る蒼光をわずかに揺らし、足元に残る黒い瘴気の痕跡を断ち切りながら前へ進む。左腕の傷はまだ疼くが、その痛みを仲間と世界を守る決意に変え、カイは大きく息を吸い込んだ。


「これが……禁忌の祭壇か」

カイは低く呟き、目の前に広がる円形の広場を見渡した。中央には古びた石板が一枚だけ残り、そのひび割れから瘴気がゆらゆらと立ち上がっている。刻まれた古代文字には、かつてこの地に封じられた邪神の名が刻まれていたと伝わる。剣先を揺らしながら、カイは祭壇を囲む広場に立つ四体の石像を確認した。四体の石像にはそれぞれ異なる女神の姿が刻まれており、その目には淡い蒼光が宿っているかのように見えた。


「リリアナたち、準備を整えろ。ここで瘴気の源を断ち切る」

カイの低い声に、一行は瞬時に反応した。リリアナは杖を高く掲げ、蒼光の結界を広場全体に巡らせる。マギーは巻物を取り出し、瘴気断裂陣の構文を地面に浮かび上がらせた。ガロンは剣を肩に担ぎ直し、剣先から迸る蒼光で石像の目を見据えている。ジークは短弓を肩に掛けながら、遠くの闇を警戒し、小さく息を整えた。セレスティアは杖を胸に抱え、淡い祈りの光を石像に向けて放ち続け、ルレナは剣を胸に握りしめながら、石板を見つめていた。


カイは祭壇の石板へと歩み寄り、そのひび割れから立ち上る瘴気の気配を感じ取った。心の中で深く誓いを新たにし、剣ルクスを軽く振るいながら声を張り上げた。


「ルクスよ、この刃が瘴気の核を断ち切り、世界を解放する光となれ!」


カイの詠唱と共に、剣先から迸る蒼光がひび割れに向かって放たれた。その一瞬、瘴気の渦は音を立てて激しく揺らぎ、石板の亀裂が僅かに広がる。だが、瘴気の深い怨嗟は容易には歪められない。カイは柄を握り締め、全身を瘴気の奔流が襲うのを覚悟して一歩前へ踏み出した。


■   ■   ■


リリアナ視点


祭壇の中央でルクスの一閃を見届けたリリアナは、杖を両手で強く握りしめ、蒼光の結界を最大限に強化した。瘴気が石板の裂け目から吹き出すたびに、結界は揺らぎながらもその力を保持し続ける。リリアナは左腕の痛みを感じながらも、祈りを込めて詠唱を続けた。


「瘴気浄化・結界展開! どんな瘴気も、この蒼光が阻む!」


その詠唱と共に、杖先から放たれる蒼光が祭壇の裂け目を取り囲み、瘴気を一瞬だけ凍結させた。リリアナはその隙を逃さず、蒼光の光を石板のひび割れに叩きつけるように送り込んだ。黒い瘴気の泡は一瞬揺らいで、白い結晶のように砕け散った。


だが、瘴気の源はさらに深く、祭壇の奥底から別の瘴気がぼわりと膨れ上がる。リリアナは詠唱を止めず、震えながらも仲間を見渡した。マギーが次の呪文を準備し、セレスティアが祈りの光を放ち続け、ガロンとジークが周囲の影を警戒している。リリアナは左腕を強く握りしめ、次の詠唱へと心を切り替えた。


「瘴気封鎧陣! 我らを守り、瘴気を退け給え!」


リリアナの詠唱に反応して、石板の周囲に薄い蒼光の防壁が広がり、瘴気の奔流を内側から押し返していった。リリアナは強く息を吐き、痛みを抑えるように左腕を押さえつつ、仲間を守り続ける覚悟を胸に刻んだ。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナの結界が瘴気を抑え込む隙を見逃さず、マギーは巻物を胸に抱えたまま呪文を詠唱し始めた。瘴気断裂陣の紋様は地面に刻まれたように白く輝き、瘴気の塊を引き裂くように裂け目が走った。瘴気の元が一瞬で揺らぎ、瘴気魔獣の影が石像の影の中から飛び出してきたが、その瘴気の塊は断裂陣に当たると一瞬凍結し、粉々に砕け散った。


「瘴気断裂陣、発動! 瘴気の渦を断ち、魔獣を阻む!」

マギーは続けて瘴気追放陣を展開し、裂け目から吹き出す瘴気の気配をまるで引き剥がすように浄化していく。瘴気のもとが薄まり、裂け目が白く光りながらさらに亀裂を深めていく。マギーは巻物を閉じて仲間を見上げ、その瞳に揺るぎなき信頼を映し出した。


「リリアナの結界と私の呪文があれば、瘴気も魔獣も恐れない!」


■   ■   ■


ガロン視点


マギーの呪文を援護に受け、ガロンは剣ルクスを強く握りしめたまま一歩前へ踏み出した。祭壇の石板を囲むように瘴気魔獣が群れを成して出現し、黒い瘴気を噴き上げながら咆哮をあげる。ガロンは剣先から迸る蒼光を研ぎ澄ませ、魔獣の最前線へ突き進んだ。


「俺の剣は仲間の盾になる!」

ガロンは巨大な瘴気魔獣に向かって剣を振るい、その刃先から放たれた蒼光が瘴気を切り裂いた。その一撃で魔獣は咆哮と共に吹き飛び、巨大な瘴気の塊と化したが、ガロンはさらに剣を振り下ろし、魔獣を粉砕した。次々と現れる瘴気魔獣を一体ひとたい倒しながら、ガロンは仲間の背中を護り続ける覚悟を胸に刻んでいる。


「仲間と村の希望を、この剣で守り抜く!」

ガロンは息を荒げながらも剣戟を止めず、蒼光の刃が次々と瘴気魔獣を薙ぎ払っていく。


■   ■   ■


ジーク視点


ガロンが瘴気魔獣を打ち砕く隙に、ジークは短弓を肩に掛け直し、暗がりの中に潜む魔獣の気配を探り出した。彼の目には一瞬の揺らぎもなく、矢先を構えて息を整える。廃墟の祭壇に反射するかすかな蒼光が、ジークの瞳に薄暗い影を映し出す。


「リリアナとマギーの支援がある限り、俺の一矢も逃さない」

ジークは狙いを定め、矢を放った。その一矢は瘴気の渦を切り裂いて魔獣の胸を貫き、瘴気の塊が一瞬揺らいで崩れ落ちた。ジークは素早く矢を番え直し、次なる魔獣を探し始める。その瞳には仲間の背中を護る覚悟が滲んでいる。


「俺は一度も敵を見逃さない。リリアナの結界も、マギーの呪文も、俺の矢も、お前たちを守るためにある!」

ジークは再び息を整え、暗闇を見据えた。


■   ■   ■


セレスティア視点


廃墟の石像の前で、セレスティアは杖を胸に抱えながら深い祈りを捧げ続けている。その祈りは四方に広がり、瘴気の渦を浄化する光の柱となって祭壇全体を包み込んでいた。石像の目が微かに光を帯び、闇に囚われた瘴気を拒絶するかのように震える。


「愛と慈悲の光よ、瘴気の怨嗟を浄化し、仲間たちの魂に揺るぎなき希望を与え給え」

セレスティアの声が静かにこだまし、杖先から放たれる光が仲間の背中を包み込む。瘴気が一瞬凍結し、白い結晶となって地面に落ち、次々と消えていく。セレスティアは目を閉じ、祈りの言葉を絶やさない。


(私の命が尽きるまで、この祈りを捧げ続ける。仲間を導き、瘴気を打ち払う光となるのだ)


■   ■   ■


ルレナ視点


セレスティアの祈りに包まれながらも、ルレナは剣を胸に握りしめ、小さな身体を震わせていた。廃墟の祭壇の中央で繰り広げられる戦いは苛烈で、瘴気魔獣が肉を裂く咆哮をあげて襲いかかってくる。ルレナは仲間たちの背中を見つめ、胸に強い想いを抱いた。


「皆がいるから、私もここにいるんだ。皆と一緒に、この瘴気を打ち払うんだ……!」

ルレナは静かに目を閉じ、小さな声で祈りを紡いだ。その祈りは仲間の背中に響き、カイの剣を揺るぎなき光へと変えていく。


■   ■   ■


――カイ視点クライマックス


仲間の剣戟、詠唱、矢、祈りが一つとなり、カイは剣ルクスを強く握りしめて最後の詠唱を始めた。祭壇のひび割れはわずかに広がり、瘴気の源が最後の抵抗を示すかのように渦巻く。カイは剣を高く掲げ、蒼光を極限まで高めた。


「ルクスよ、この刃に宿る蒼光で瘴気の核を断ち、禁忌を解き放て!」

カイの詠唱に応え、剣先から放たれた蒼光は一瞬で暴れ狂う瘴気の渦に突き刺さり、強烈な閃光が広間を照らし出した。瘴気の核は音を立てて砕け散り、黒い瘴気の柱は白い光へと変わって崩壊した。


広間には静寂が一瞬だけ訪れ、仲間たちは深く息を吐き出しながら互いの顔を見渡した。リリアナは杖を胸に抱え、痛みをこらえながら涙を浮かべて微笑んだ。マギーは巻物をそっと閉じ、瞳を潤ませながら仲間を見上げた。ガロンは剣先を下ろし、荒い息を整えながらも剣先に宿る蒼光を確かめた。ジークは矢を背負い直し、静かに仲間を見渡して深く頷いた。セレスティアは杖先を天へ向け、祈りの光を最後に放ちきった。ルレナは剣を胸にぎゅっと握りしめ、仲間と共に歩み続ける覚悟を胸に刻んだ。


「これで……瘴気の核は浄化された。だが、魔王アズラエルはこの先にいる」

カイは剣ルクスを鞘に収め、深く頷くと仲間に告げた。その声には揺るぎなき決意が込められている。


こうして、「禁忌の祭壇へ」の章は、瘴気の核を断ち切り、次なる最終決戦へと続く道を切り開く瞬間で幕を閉じた。魔王アズラエルとの最期の対峙は、もはや避けられない――。


75話終わり

お読みいただきありがとうございます。

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他にもたくさんの作品を投稿していますので見て頂けると嬉しいです

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