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65話 村の戦い

――カイ視点


朝の光が村を包み込み、かすかな風が草木を揺らす頃、一行は村の外れにある広大な平原で戦いの準備を整えていた。先ほどまで村人たちは農作業や家畜の世話に追われ、穏やかな日常を取り戻しつつあったが、その平穏を打ち破るかのように、魔王軍の尖兵が二手に分かれて襲来していた。カイはルクスを腰に収め、腕に力をこめながら剣先を天にかざした。蒼光の刃先が微かに揺らぎ、瘴気の残滓を一掃する覚悟を示している。


「皆、配置につけ。敵は二手に分かれている。ジーク、東側の丘へ向かい援護射撃を頼む。ガロン、正面の平原を抑えてくれ。リリアナとマギーは瘴気対策を万全にし、セレスティアは村人の安全を祈りつつ、回復を支援してくれ」

カイが指示を飛ばすと、仲間たちはそれぞれが託された役割を果たすべく動き出した。リリアナは杖を高く掲げ、蒼光の結界を広げながら瘴気の気配が薄い道を確保する。マギーは巻物を取り出して瘴気断裂陣と瘴気封鎧陣を同時に展開し、瘴気の残党が村人に紛れ込まないよう監視を強化する。ガロンは剣を肩に担ぎ、騎馬隊の襲撃に備えて低い姿勢で待機する。ジークは東の丘へと駆け上がり、短弓を肩に掛けながら的確に狙いを定める準備を進める。セレスティアは祈りの光を小刻みに点滅させており、その光が村人たちの背後を温かく包み込んでいる。ルレナは村人たちの子どもたちを集め、彼らを安全な建物の中へ誘導した。


「俺たちは、この村を守るためにここにいる。村人たちを守り、次の戦いへと進む道を開く」

カイは深呼吸して気を引き締め、剣先を地面へ向けたまま仲間と視線を交わした。唇を引き結びながら、カイは自分に言い聞かせるように呟いた。


「どんなに瘴気が濃くとも、俺たちの絆があれば必ず勝てる。皆、村人たちが安心して暮らせる未来を一緒に掴もう」


古びた風車の羽がゆらりと回転し、遠くの丘からは騎馬隊の足音と戦鼓が聞こえてきた。その音が次第に近づくたびに、カイの胸は高鳴っていく。最前線で待機するガロンの剣先にも蒼光が強く灯り、リリアナの杖先からは瘴気を押し返す光の壁がわずかに膨らんでいく。


■   ■   ■


リリアナ視点


カイからの指示を受け、リリアナは杖を高く掲げたまま呪文の詠唱を始めた。瘴気浄化・結界展開の詠唱が完了すると、杖先から放たれた蒼光の結界が村の入口に向かって波紋のように広がり、瘴気の侵入を阻止する。優しくも力強いその結界は、村人たちが安全に避難するための回廊を作り出す役割を果たしていた。


「瘴気浄化・結界展開! 村人たちをまず守りましょう。マギー、瘴気封鎧陣を強化してね」

リリアナは仲間へ呼びかけ、杖を振るいながら瘴気の流れを強力に押し返す。瘴気が結界に触れる度に、蒼光が一層鮮やかに輝き、黒い霧が一瞬にして凍結するように消えていく。リリアナは痛む左腕を気にしつつも、仲間や村人たちへの想いを胸に力強く立ち続けた。


「皆、ここを通れ! 瘴気を通さない蒼光の道を進むのよ!」

リリアナの声は大地にこだまし、村人たちは蒼光の道を通って安全な建物へと導かれていく。その姿を見届けたリリアナは、大きく息を吸い込んで立ち上がり、次なる攻撃に向けて結界を維持し続けた。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナが結界を展開する中、マギーは巻物を取り出して瘴気断裂陣の詠唱を繰り返した。地面に描かれた紋様が淡く光り、瘴気が引き裂かれる音がかすかに響く。マギーは仲間たちの背後に控えており、瘴気が結界を突破しようとするたびに断裂させる役割を担っていた。


「瘴気断裂陣、発動! 瘴気の層を裂き、村への侵入を許さない!」

マギーの声が荒野の風に乗って響き、瘴気の波動が断ち割られた。その瞬間、瘴気魔獣が飛び出してきたが、瘴気の塊は断裂陣に弾き返され、魔獣の動きは一瞬鈍った。マギーは続けて「瘴気封鎧陣」を発動し、仲間の体に瘴気が付着しないよう強固な結界を張り巡らせた。


「リリアナ、大丈夫? 瘴気封鎧陣であなたの結界を強化するから、安心して」

マギーはリリアナの左腕をそっと照らしながら囁き、結界の力を共有して瘴気の侵入を一層防いだ。リリアナは微笑みを浮かべながら杖を握りしめ、再び詠唱を続けた。


■   ■   ■


ガロン視点


村の入口には既に瘴気魔獣が群れをなし、荒野の風に乗って呻き声が響いている。ガロンは剣を肩に担ぎ直して姿勢を低くし、剣の柄を強く握りしめた。騎馬隊の一部が丘の上から駆け下りてくるのを見据え、ガロンは深い息を吸い込んで一気に突進した。刹那、蒼光の剣戟が荒野の瘴気を切り裂き、魔獣を薙ぎ倒す。


「俺がここを抑える! カイ、ジーク、リリアナ、村人の安全を最優先にしてくれ!」

ガロンは振り下ろす剣と共に叫び、瘴気魔獣の咆哮を切り裂いた。瘴気を帯びた魔獣は大地を蹴り上げながら襲いかかるが、ガロンの剣撃はそれをいずれも受け止め、刹那の蒼光で瘴気の瘴流ごと魔獣を切り捨てていく。その姿はまるで荒野の嵐を一刀のもとに打ち払う豪勇そのものだ。


■   ■   ■


ジーク視点


一方、東側の丘に陣取っていたジークは短弓を引き絞り、村の入口へ突進してくる騎馬隊を狙い撃つ準備をしていた。馬の蹄が地面を打つ音が次第に大きくなり、敵兵の甲高い叫び声が混じってくる。ジークは冷静に息を整え、的確に狙いを定めて矢を放った。


「ガロンの背中は俺が守る。仲間を狙う者は、この矢から逃れられない」

矢は瘴気をまといながらも正確に標的を捉え、騎馬隊の一騎を地面へ引きずり落とした。その瞬間、瘴気が一瞬だけ揺らいで消えかけ、その隙に再び矢を番えた。次々と放たれる矢が騎馬隊を削り、村への侵攻を食い止めていく。ジークの弓さばきは無駄がなく、狩りのごとく巧みに敵を仕留めていった。


■   ■   ■


セレスティア視点


騎馬隊と魔獣が次々と放たれる中、セレスティアは丘の上から杖を掲げ、祈りの光を村と仲間に注ぎ続ける。祈りの声が静かに澄んだ調べとなり、荒野の瘴気を凍結させる力を帯びていく。瘴気の影響で苦しむ村人たちがいれば、その眉間に浮かぶ皺が一瞬で和らぎ、心身が軽くなるのが感じられた。


「愛と慈悲の光よ、我らに安らぎを与え、瘴気の暗闇を打ち払い給え。仲間たちの剣と矢に力を与え給え」

セレスティアの祈りが荒野を満たすと、うねる瘴気が凍りつき、魔獣たちは足を取られて崩れ落ちる。その隙にマギーとリリアナの結界が瘴気を完全に封じ込め、ガロンとジークは残党を仕留めていく。セレスティアは目を閉じたまま祈りの旋律を紡ぎ続ける。


■   ■   ■


――カイ視点


ガロンとジークの奮戦、リリアナとマギーの結界、セレスティアの祈りが一体となり、村を襲う瘴気魔獣と騎馬隊の猛攻は次第に収束していった。カイは剣ルクスを握り直し、荒野に舞い散る砂煙を払いながら仲間を見渡した。


「よくやった、皆。村は一命を取り留めた。だが、これで終わりではない。魔王本陣への道はまだ続く」

カイは剣先を大地に突き立て、深い息を吐き出した。村人たちは感謝の声を上げながら、傷ついた大地を踏みしめて生きる力を取り戻していた。リリアナは左腕を抑えつつも小さく微笑み、マギーは巻物を再び胸に抱え、剣を収めたガロンは杖を背に担ぎ直し、ジークは短弓を肩に掛け直し、セレスティアは最後の祈りの光を丘へと送った。ルレナは子どもたちの輪の中で、楽しげに笑っている。その笑顔に、カイは仲間と共に歩む道の先にある未来を確信した。


「この村の希望を胸に刻み、俺たちの旅路は続く。この先に待つ魔王アズラエルとの最終決戦――皆で必ずや成し遂げる」

カイの言葉が荒野にこだまし、仲間たちは再び立ち上がった。彼らの背中に刻まれた誓いと絆は、どんな闇でも打ち破る光となり、魔王本陣へと続く険しい道を照らし続ける――。


65話終わり





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