表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/100

50話 決戦の地へ

――カイ視点


朝靄に包まれた薄曇りの空の下、一行はついに決戦の地となる「黒曜の要塞」の前に立ちはだかっていた。要塞は黒煙をたなびかせる巨大な石造りの城塞で、瘴気が渦巻く防壁の内側からは鋭い咆哮が断続的に響く。そこにいるのは魔王軍の尖兵たちであり、この要塞を突破できなければ魔王本陣へ辿り着くことはできない。

カイは剣を背に担ぎ直し、淡い蒼光を宿した刃先をじっと要塞の正門へと向けた。霧の奥に潜むその大門は重厚な鉄格子に覆われ、瘴気をまとった鎧武者が見張りを続けている。カイは深く息を吸い込み、仲間たちを見回した。皆の顔には疲労と緊張が交錯しているが、その瞳には決して揺るがぬ覚悟が宿っていた。

「皆、ここが最後の砦だ。この要塞を越えれば、魔王本陣はすぐそこにある。全力を尽くして突破するぞ」

カイの声が静かな荘厳さを帯びて響くと、仲間たちは一斉に頷いた。リリアナは杖を高く掲げ、蒼光の結界を仲間の周囲に広げる。マギーは巻物を胸に抱えながら呪文構成を最終確認し、ガロンは剣を構え直して警戒を強める。ジークは短弓を肩に掛け、闇に潜む敵を見逃さぬ覚悟を見せている。セレスティアは杖を胸に抱えたまま祈りの光を放ち、仲間たちに癒しと勇気を注いでいる。

一行は列を整え、要塞の大門へと向かって一歩を踏み出した。門前には瘴気を纏った衛兵たちが待ち構え、呪術師が瘴気の結界を強化している。リリアナの結界が瘴気の一部を浄化するが、瘴気は多数の呪詛と絡み合い、簡単には消し去れない。マギーは巻物を開き、「瘴気断裂陣」を詠唱し始めると、地面に刻まれた結界紋がほのかな光を放ち、瘴気を裂くように渦を起こした。

「瘴気縛陣、発動! リリアナ、今よ!」

マギーの号令に応じ、リリアナは杖を振りかざし、「浄化の結界」をより強固に展開した。蒼光が周囲を包み込み、瘴気の結界にひび割れを入れる。ガロンは剣を腰に納めると、疾風のごとく先陣を切って門前の衛兵へ駆け込んだ。巨大な瘴気剣を携えた衛兵を一閃で打ち砕き、その衝撃が瘴気の結界をさらに揺るがした。

ジークはその隙をつくように矢を放ち、呪術師の杖を狙い撃った。矢は瘴気をまといつつも正確に命中し、呪術師の呪文詠唱を寸断する。セレスティアは祈りの声を高め、仲間たちを癒しながらも瘴気の圧を和らげる光を放ち続ける。カイはルクスを抜き放ち、蒼光の刃が大門の鉄格子を焼き切るように斬り込んだ。鉄格子はみるみる歪み、ついに崩れ落ちる。

「進め!」

カイの号令とともに、一行は要塞の内部へと滑り込んだ。瘴気はより濃密さを増し、壁や床から染み出す黒い霧が視界を遮る。マギーは巻物をかざして「瘴気追放陣」を発動し、瘴気の奔流を押し返す。リリアナは杖から放たれる蒼光を振り回し、瘴気の触手を切り裂きながら進む。ガロンは剣を振り回し、瘴気魔獣の群れを次々と薙ぎ払った。ジークは影から飛び出してくる敵を矢で仕留め、セレスティアは祈りの光で一行の心を温かく包み込んでいる。

廃墟の廊下を進むと、巨大な地下空間へと辿り着いた。そこには瘴気の柱が天井を貫き、闇の渦が不気味に揺れる。中央には魔王軍の将校が呪術陣を描きながら詠唱しており、その脇には瘴気を纏った巨大な魔獣が鎮座していた。将校の背後には扉があり、その奥こそが魔王本陣へと続く最後の道だ。

カイは剣を握り締め、決然とした眼差しで将校を見据えた。

「ここで立ちはだかる敵は、俺たちが手を取り合って倒す。誰一人欠けることなどない」

カイの宣言とともに、愈々一行は最後の戦いへと身を投じた。


■   ■   ■


リリアナ視点


瘴気の柱が天井を突き破る広大な地下空間で、リリアナの心臓は激しく鼓動していた。周囲には濃密な瘴気が渦巻き、そこから呻き声や獣の咆哮が響く。彼女は杖をしっかりと握りしめ、大きく息を吸い込んだ。

「浄化の結界――全力で瘴気を抑え込む!」

リリアナは杖を高く掲げ、蒼光の結界を広範囲に展開した。瘴気は結界に触れるたびに炎のごとく燃え上がり、泡のように弾ける。しかし、その度にリリアナの魔力が滲み出して瘴気を浄化し、黒い瘴気の渦を徐々に薄めていく。彼女は仲間の背後を守るため、一歩も引かずに呪文を唱え続けた。

磔にされた巨大な痕跡が床に走り、その先には瘴気魔獣が潜む。リリアナは杖を振り回し、瘴気魔獣の触手が襲いかかる瞬間に「浄化の閃光」を閃かせた。蒼光が触手を切り裂き、瘴気の奔流を抑え込む。だが、その魔獣は瘴気を変幻自在に操り、一瞬で結界を突き破ろうとする。リリアナは焦ることなく杖を再度振り下ろし、浄化結界を強化した。

「瘴気断裂陣、詠唱!」

マギーの号令に呼応し、リリアナは呪文を加速させた。蒼光の結界が一層煌めき、瘴気魔獣の動きを封じる。リリアナは疲労を感じつつも、仲間たちを守るために魔力を絞り出した。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナの結界に呼応しながら、マギーは巻物を広げて「瘴気断裂陣」「瘴気追放陣」を連続で詠唱した。廃墟の地下空間に呪文の紋章が浮かび上がり、瘴気を引き裂く光が柱のように立ち昇る。魔獣や呪術師たちはその光に晒され、動きが鈍る。マギーは仲間の声を頼りに呪文を調整し、瘴気を一気に浄化しようと努める。

「瘴気を完全に切り裂くんだ。ここで敵を一掃しないと、仲間が潰される」

マギーは詠唱を終えた後、息を整えながら杖先を地面に当て、仲間たちへの支援を続けた。彼女の呪文とリリアナの結界が重なり合い、一時的に地下空間から瘴気が蒸発するかのように消え去った。その隙にガロンとジークが魔獣たちに斬り込み、次々と一掃していく。


■   ■   ■


ガロン視点


呪文が瘴気を押し返した瞬間、ガロンは剣を引き抜き、瘴気魔獣の急所を狙って突進した。瘴気魔獣は蠢く触手で反撃を試みるが、ガロンは一閃で躱し、蒼光の剣撃を叩き込む。剣先から迸る蒼光が瘴気を浄化し、魔獣の瘴気鎧を斬り裂く。ガロンはさらに連続攻撃を加え、「俺が盾となり、槍となる!」と心の中で誓いを新たにする。

その光景を見たジークは短弓を引き絞り、魔獣の残党を狙撃する。リリアナとマギーの結界が再び形成される中、ガロンは剣を振り下ろし、要塞の壁を斬り裂くように瘴気魔獣を粉砕していく。


■   ■   ■


ジーク視点


ガロンの剣撃を援護するように、ジークは次々と矢を放ち、瘴気魔術師や魔獣の動きを封じる。剣先から放たれる蒼光が薄れても、ジークの矢は闇を引き裂き、闘う仲間に時間を与える。

「ガロンの背中を守るためなら、俺はこの矢でどんな敵も貫く!」

ジークは低く呟きながら、剣撃の隙を狙って魔獣の急所を射抜いた。その瞬間、瘴気魔獣は恐怖に歪んだ目を輝かせ、一瞬で崩れ落ちた。ジークは弓を背に掛け、再度仲間を見渡した。


■   ■   ■


セレスティア視点


リリアナとマギーが瘴気を浄化し、ガロンとジークが敵を討ち取る中、セレスティアは杖を抱えて静かに祈りを捧げている。その祈りの光が瘴気の影を打ち消し、仲間たちの心身を癒しながら力を与える。

「愛と慈悲の光よ、この聖なる場に降り注ぎ、闇を打ち砕き給え。仲間たちに揺るぎなき勇気を与え給え」

セレスティアの祈りはじわりと広がり、薄暗い地下空間に柔らかな温もりをもたらしていた。その光景を見たカイは剣を腰に戻し、静かに仲間たちへ微笑みかけた。


■   ■   ■


――カイ視点


瘴気魔獣と呪術師を討ち払った一行は、要塞の最深部にある鉄製の扉前に辿り着いていた。扉の両脇には古代文字が刻まれ、瘴気の痕跡が浮かび上がっている。カイは剣を抜き、ルクスの刃先から蒼光を迸らせながら扉に触れた。瘴気が一瞬巻き上がったが、リリアナの結界とマギーの呪文がそれを封じ込める。セレスティアの祈りは胸に温かな光を注ぎ、ガロンは剣を構えたまま扉を押し開ける準備を整えた。

「ここから先が、魔王本陣への最終ルートだ。全員、準備はいいか?」

カイの声に仲間たちは揃って頷いた。リリアナは杖を高く掲げ、マギーは巻物を胸に抱え直し、ガロンは剣を握り締め、ジークは短弓を引き絞り、セレスティアは祈りの光を強めた。ルレナも小さくうなずきながら、仲間の背中を見つめている。

カイは扉を押し開けると、轟音とともに鉄の扉が重々しく開き、その先には暗闇の中にくすぶる瘴気と禍々しい気配が漂う大広間が広がっていた。奥には巨大な階段が続き、最奥の玉座には魔王アズラエルの影がすらりと立っている。

「いよいよ、ここが最期の舞台だな」

カイは剣を握る手に力を込め、仲間たちと共に一歩を踏み出した。遥か彼方に小さく見える魔王アズラエルの姿が、決戦の時を告げる。彼らの心には、仲間の絆と祈りの光があり、どんな闇も恐れずに立ち向かう覚悟が燃え盛っている――。


50話終わり

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、下の☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると大変励みになります!

他にもたくさんの作品を投稿していますので見て頂けると嬉しいです

https://mypage.syosetu.com/2892099/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ