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45話 ベルナールの陰謀

――カイ視点


朝陽が草原を黄金色に染め上げる頃、一行は蒼月の村へと続く細道に差し掛かった。道端にはまだ瘴気の痕跡が残り、時折風に乗って黒い霧が流れ込んでくる。カイは剣を背に担ぎながら、眼前に広がる風景をじっと見つめた。廃墟の家屋で出会ったルレナを仲間に加え、小さな温もりを力に変えてここまで来たが、魔王軍の圧力は依然として強く、次の村への道は決して平坦ではない。


「蒼月の村まではあと数里。この先にベルナールの手先が潜んでいる可能性がある。気を抜くな」

カイは低く呟き、剣先から迸る蒼光を道端へと注ぎ込むことで、瘴気の侵入を抑えようとした。リリアナは杖を握りしめ、蒼光の結界を道沿いに広げている。マギーは巻物を胸に抱え、辺りの地形と魔王軍の報告を比較しながら情報を整理している。ガロンは剣を構えたまま険しい表情で前方を警戒し、ジークは短弓を肩に掛けて矢を番えながら周囲を見張っている。セレスティアは杖先からほのかな光を放ち、仲間へ癒しと祝福の祈りを捧げ続けている。ルレナは未だ心の傷が癒えぬまま、仲間の背中を見守っていた。


一行が草むらを抜け、丘を越えた直後、遠くの低い丘陵地帯に人影が見えた。数人の影が小さく点在し、旗を翻す瞬間が一瞬だけ見えた。マギーは巻物を片手で開き、地図と照らし合わせた。


「ここにある砦跡は、かつて魔王軍の前線部隊が駐屯していた場所のはずよ。最近の瘴気の揺らぎを見る限り、再び動き出しているように感じる……ベルナールの仕業かもしれないわ」

マギーの言葉に、カイは頷きながら剣を強く握りしめた。ベルナールは常に闇に潜み、一行を魔王本陣へ近づけまいと暗躍している。昨夜の戦いでベルナールに挑みかかったものの、結局逃げられてしまった。今度こそ、ベルナールの陰謀を阻止しなければ、蒼月の村が壊滅する危険性がある。


「皆、準備しろ。ここから先は警戒をさらに強める。遠距離からの魔術も考えられる。リリアナ、マギー、瘴気結界をさらに広げろ。ガロン、ジークは索敵を続けてくれ」

カイの声が草原に響き渡ると、リリアナは杖を大きく振り上げて詠唱を加速し、広範囲の蒼光の結界を展開した。瘴気の揺らぎが一瞬だけ緩和され、仲間はほっと息をつく。マギーも巻物を開き、「瘴気縛陣」に続く「瘴気追放陣」を詠唱し、瘴気の高濃度な箇所を一時的に封じ込める結界を完成させた。


ガロンは剣を構えたまま、前方を注視しながら周囲を警戒した。草むらが突然揺れ、そこから瘴気を纏った魔獣が飛び出してくる可能性もある。ジークは短弓を引き絞り、次の標的を逃さぬよう静かに視線を巡らせている。セレスティアは杖を掲げ、荘厳な祈りを口にしながら光を仲間へ注ぎ込んでいる。その光はまるで仲間たちの精神を支える糧のように、闇を祓って道を照らしていた。


一行が丘陵の頂上を越えた瞬間、突然空が暗く曇り、一団の影が姿を現した。黒いマント姿のベルナールと、瘴気を纏った魔術師の数人が、まるで待ち受けていたかのように一行を迎え撃つ構えを取っている。空気が凍りつくような冷たさが襲い、瘴気の結界が一瞬だけ揺らめいた。ベルナールは薄く笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄る。


「よく来たな、カイ――お前たちはまさに俺の罠にかかった。ここが最後の学び舎だ」

ベルナールの声は深く低く、瘴気を含んだ風に乗って耳元へと届いた。ガロンは剣先を地面に突き立て、周囲の影を睨みつけながら反応を待つ。カイは剣を抜き放ち、ルクスの刃先から蒼光が迸った。その光は瘴気を弾き返し、ベルナールの姿を一瞬だけ浮かび上がらせる。


「ベルナール、お前の罠にはもう乗らない。俺たちは仲間を護り、この先へ進む。お前の邪悪な思惑を終わらせる」

カイは低く発声し、ルクスを地面に突き立てて結界を展開した。ルクスの刃先から漏れる蒼光は瘴気を浄化し、その光の結界は仲間を取り囲むように一気に広がった。リリアナは杖を高く掲げ、「浄化の結界」をさらに強化して瘴気を抑え込みながら呪文を唱え続けた。マギーは巻物を取り出し、「瘴気縛陣・第2陣」を発動して瘴気を完全に封じ込めた。ガロンは剣を構え直し、ジークは短弓を引き絞り、セレスティアは荘厳な祈りを唱えて仲間へ癒しの光を注ぎ込んだ。


ベルナールはかすかに舌打ちをし、瘴気を纏う魔術師たちに合図を送った。魔術師たちは瘴気を操る呪文を唱え、瘴気の奔流を一気に放出しようとした。だが、リリアナとマギーの強固な結界がそれを阻み、瘴気は弾かれて大地に還っていった。ガロンは剣を振り上げ、目の前に飛びかかってきた瘴気魔獣を一撃で切り裂き、ジークは矢を放って魔術師の隙を突いた。セレスティアの祈りは仲間たちにさらなる勇気を与え、瘴気魔獣の瘴気を浄化し続けている。


一行の連携攻撃はまるで歯車のように噛み合い、次々と呪術師や魔獣を打ち破っていった。カイはルクスを高く掲げ、渾身の剣撃を放って瘴気魔術師の結界を強引に切り裂き、その首をはねた。ベルナールはその様子を見て薄く笑みを浮かべながらも、自らの瘴気をより強く操ろうとした。瘴気魔術師たちが瘴気の結界を再構築し始める中、彼らの背後から巨大な瘴気の柱が天を貫き、森を暗黒の霧でおおった。


「上等だ――俺の真の力を見せてやる!」

ベルナールが叫ぶと同時に、瘴気の柱は一行の頭上に猛威を振るい、周囲の地面を抉り取るほどの衝撃波を生み出した。ガロンは剣を地面に突き立てることでその衝撃を受け止め、ジークは反射的に矢を番えて周囲の魔獣を討ち取りながら盾となった。リリアナとマギーは合唱のように呪文を詠唱し、瘴気の奔流を相殺し続けた。セレスティアは祈りによって仲間を癒し、瘴気の圧力から精神を守る光の結界を拡大させた。


カイはすべてを見越したかのようにゆっくりと構え、ベルナールに向かって一歩前へ踏み出した。ルクスの蒼光は一層強く燃え上がり、瘴気を貫く刃となって暗雲を裂き始める。ベルナールはその刃先をあざ笑うように受け止め、自らの瘴気を刃先にぶつけた。瘴気の奔流と蒼光の刃が激突し、その衝撃で大地が揺れ、天地の境界がわずかに歪む。


「お前の力は確かに驚異的だ、カイ……だが、俺の瘴気はお前の刃ですら貫けぬ」

ベルナールは深く低く呟き、瘴気の渦を再構築しようとする。しかし、その瞬間、セレスティアが唱えた祈りの光がベルナールの瘴気を包み込み、膨大な瘴気をゆっくりと浄化していく。リリアナとマギーが詠唱する瘴気断裂の呪文が重なり合い、瘴気の勢いを完全に消し去った。


「一瞬の隙だ、今だ! 全員で攻撃を仕掛ける!」

カイの号令が響くと、ガロンは剣を振り下ろしながらベルナールへ突進し、ジークは矢を並列に放って魔術師たちを一掃する。リリアナの杖から放たれた蒼光が一瞬にして瘴気を払拭し、マギーの巻物から迸る呪文が瘴気の結界を完全に剥ぎ取り、セレスティアの祈りの光が仲間たちを包み込んで力を与えた。


カイは渾身の力をこめてルクスの刃を振りかざし、ベルナールの前に現れた。蒼光の刃が瘴気に飲み込まれることなく、そのままベルナールの胸部を深々と貫いた。その一撃は、魔剣の代償で得た力を総動員したものだった。ベルナールの瞳には驚きと怯えが交錯し、瘴気の結界は一瞬で崩れ去った。


「なっ……こんな、はずでは……!」

ベルナールは剣を握る手を緩め、膝から崩れ落ちた。その周囲に漂っていた瘴気が一気に収束し、暗雲を引き裂いて消えていく。仲間たちはゆっくりと剣や杖を構え直し、残された瘴気を完全に浄化するための準備を整えた。セレスティアは深い祈りを捧げ続け、その光が草原一帯を穏やかに包み込んでいく。


カイは剣を鞘に納め、仲間たちを見渡しながら静かに言った。

「ベルナールの陰謀はこれで終わりだ。奴が何を企んでいたかはわからないが、俺たちはこれからも進み続ける。蒼月の村へ行き、村人たちに真実を伝えよう」

仲間たちは深く頷き、剣や杖、短弓を軽く振りかざして力を確かめるようにした。ルレナはカイの足元に寄り添い、剣の湛える蒼光を見上げながら目を輝かせた。セレスティアは杖を高く掲げ、祈りの光を村へ向けて注ぎ続けている。


こうして、「ベルナールの陰謀」の章は、ベルナールの罠を仲間の連携で打ち破り、魔王軍の誘惑と瘴気に打ち勝った後、蒼月の村への道を確かなものとした一行の姿を描いて幕を閉じた。仲間たちの絆と信念は、どのような闇が襲いかかろうとも決して揺らぐことはなく、やがて訪れる試練の中でも輝きを放ち続ける――。


45話終わり

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