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35話 決意の剣

――カイ視点


夜闇に包まれた街の防塁上に佇み、カイは剣を背に担いだまま空を見上げていた。空気は冷たく、遠くでは街灯の橙色がぼんやりと揺れ、昨夜の戦いが嘘だったかのように静寂が支配している。しかし、その静けさの裏には新たな緊張が潜んでおり、魔王本陣への道を案じるカイの胸には、まだ消えぬ覚悟が潜んでいた。ルクスは刃先からかすかに蒼い光を漏らし、その光はまるで「お前の覚悟を示せ」と囁くかのように揺れ動いている。


カイは深く息を吸い込み、剣の柄に手を添えた。

「……この街を守るために、剣を抜いた。だが、まだ終わったわけではない」

昨夜、街の防衛戦で魔王軍の襲撃を跳ね返したものの、街の人々の目には疲労と安堵が混じり合い、その先に迫る魔王本陣への最終決戦を思い描いている。カイは剣を見つめながら、自分がこの世界で果たすべき使命を改めて胸に刻んだ。剣の先端からは蒼い光が「さらに深い覚悟を示せ」と呼びかけるように瞬き、カイは剣を強く握り直す。


「俺は……この世界のすべてを守る。街も、人も、仲間も、そして世界そのものを」

カイは低く呟き、剣先を夜空に向けた。その瞬間、ルクスの光が一瞬だけ強く輝き、まるで魂が解放されたかのように震えた。カイはその光景を胸に焼き付け、背後にいる仲間たちへと振り返る。


「リリアナ、マギー、ガロン、ジーク、セレスティア――お前たちと共に歩んできたこの道が、ここで終わるわけではない。これから先が、本当の試練だ」

カイの声は静かだが、確かな強さを帯びていた。仲間たちは皆、剣を構えたままカイの言葉に耳を傾け、その眼差しには新たな決意が宿っている。


■   ■   ■


リリアナ視点


カイの宣言を受けて、リリアナは杖に光を宿しながら胸を張った。夜気が冷たいにもかかわらず、リリアナの頬には微かな紅が差している。昨夜の防衛戦では、瘴気に包まれた戦火の中でも仲間を守るために魔力を注ぎ込み、その疲労は相当なものだった。しかし、カイの覚悟を聞き、リリアナの心には新たな力が湧き上がっている。


「カイ様のために、そしてこの世界のために、私も力を尽くします。私の魔力があれば、瘴気を祓い、仲間たちを守ることができるはずです」

リリアナは杖を高く掲げ、蒼い結界を形成し始めた。その光は城壁の高みにまで届き、夜闇をわずかに切り裂く。リリアナは頷きながら、再び仲間たちへと視線を向けた。


「皆さん、準備はいかがでしょう? この魔力の結界でしばらくは凌げるはずです」

リリアナの声が仲間の緊張を和らげ、その瞳には確かな安心感が映っていた。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナが結界を張る間、マギーは近くの石段に腰を下ろし、巻物の端を広げて呪文を確認していた。昨夜の戦闘で瘴気の力が増幅されていた理由や、今後予想される敵の動きを再度整理しながら、マギーは冷静に次の行動を思案している。


「魔王本陣には、さらに強大な瘴気の結界が張られているはず。ここで得た情報を基に、呪文を組み合わせて突破口を作る必要があるわ」

マギーは巻物を丁寧にたたみ、小瓶を取り出して手をかざした。その中には瘴気抑制薬液が数滴入っており、マギーは仲間に配る用意をしている。


「瘴気抑制薬は限られている。万が一、防御結界が崩れた場合に備えて、ジーク、カイ、ガロンには優先的に渡しておくわ」

マギーは静かにそう呟き、腰にぶら下げた小瓶を共有するために立ち上がった。その姿はまるで軍の参謀のように落ち着いており、仲間たちがいかに安心できるかを考えていることが伝わってきた。


■   ■   ■


ガロン視点


夜の空気は冷たく、ガロンの息が白く瞬いている。ガロンは剣を背に担ぎ、石畳の上で一歩前に進み出た。その剣先から漏れる蒼光は、まるでガロン自身の覚悟が形を成したかのように揺らめいている。ガロンの瞳には、戦いの厳しさを知る者だけが宿すことのできる深い炎が燃えていた。


「カイ、お前の覚悟は俺の胸にも響いた。この剣で、お前の背中を一度たりとも見捨てない。俺が盾となり、前へ進ませる」

ガロンは剣を軽く掲げ、その先で夜光を散らす。剣の刃先を地面に突き刺して祈るような姿勢を取り、その力を自身の全身に満たしている。ガロンは深呼吸してから、再び仲間たちに視線を向けた。


「皆、最後までこの場を守り抜く。お前たちの背中を護ることが、俺の信念だ」

ガロンの一言は重く、仲間たちの心に強い安心感を与えた。その揺るぎない決意が、剣の光と共に夜空に反射し、まるで星空をも揺るがすかのように輝いていた。


■   ■   ■


ジーク視点


ジークは短弓を肩に掛けたまま、剣士たちと並んで静かに構えていた。暗闇の中に目を光らせながら、ガロンの隣で緊張の糸を張り巡らせている。その視線は一瞬たりとも仲間から離れず、まるで誰かを守るために鍛え抜かれた獣のように鋭く光っていた。


「カイの言葉を聞いて、本当に胸が震えた。俺は盗賊だった。だが今は――仲間を守る狩人だ。この道を歩むことに誇りを感じる」

ジークは低く呟き、短弓を軽く引き絞った。手にかかる緊張と期待が指先に伝わり、弓弦がわずかに震える。ジークの瞳には決然とした覚悟が宿り、その覚悟が仲間たちに力を与える。


「リリアナ、マギー、ガロン、セレスティア――お前たちの背中を、俺の矢で守る。どんな魔物や瘴気が襲いかかっても、俺が最前線で迎え撃つ」

ジークは静かに言い放ち、仲間たちと視線を交わした。その瞬間、セレスティアが優しく光を放ちながらジークに微笑みかけ、ジークは短く頷いた。


■   ■   ■


セレスティア視点


セレスティアは静かに祈りを捧げるために剣士たちの後方に立ち、杖を胸に抱えて両手を大きく広げていた。夜空には星が瞬き、木々の隙間から月光が差し込む中、セレスティアの光はまるで天界の慈光のように揺らめいている。その祈りは瘴気を少しずつ浄化し、仲間たちの心に平穏を与える。


「愛と慈悲の光よ、闇を切り裂き、魂を護り給え。ここにいるすべての者が――光と共に歩み続けられるように」

セレスティアの言葉が夜空に溶け、杖の先端から放たれる光筋は仲間たちを包み込むように降り注いだ。その光はまるで鼓動のように膨らみ、瘴気の影を押し返し、仲間たちにさらなる勇気と平穏をもたらす。


「皆がいなければ、私は祈りを捧げることしかできない。しかし、皆がいれば、この世界に光を取り戻せる」

セレスティアは微笑みながら再び祈りを続け、仲間たちが夜の闇を突破するための力を与え続けた。


こうして、「決意の剣」の章は、カイをはじめとする仲間たちが夜の静寂を背に、新たな覚悟を胸に魔王本陣への道を歩き続ける場面で幕を閉じた。彼らの心には強固な絆と揺るぎない決意が刻まれ、どのような闇も打ち砕くべく、再び進軍を開始する――。


35話終わり

お読みいただきありがとうございます。

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