34話 新たな魔物の脅威
――カイ視点
魔王本陣への道を再び歩き始めて数里、朝の光が徐々に大地を照らし始めたころ、一行は小さな森の縁に差し掛かった。昨夜の祝杯の余韻はまだ消えておらず、仲間たちはそれぞれ疲れを癒しつつも次なる戦いに備えていた。カイは剣を背に担ぎ、先頭を進みながら周囲に漂う魔力の気配を注意深く探っている。ルクスの刃先からは瘴気を浄化する蒼い光がわずかに漏れ、その輝きがいつでも戦闘態勢へ切り替えられるように彼を支えていた。
「この先で何かが動いている。注意して進め」
カイは大きく息を吸い込み、剣を握る手に力を込めた。森の縁には雑木が茂り、小道はくねくねと曲がりくねっている。草むらの向こうに何か黒い影がちらちらと揺れ、カイの鋭い感覚がそれを感知していた。ガロンは剣を鞘から引き抜き、剣先を前方へ向けながら険しい表情で周囲を見渡す。
「魔物の気配だ。昨夜と同じやり方で一気に襲われるかもしれない。油断するな」
ガロンの低い声が仲間たちの緊張をさらに高める。リリアナは杖を抱えつつ、瘴気の残骸を浄化する魔力を注ぎ込む結界を張り巡らせながら周囲を見渡した。その目には恐れよりも慎重さと必死の覚悟が宿っている。マギーは巻物を広げ、古代文字で記された魔物のデータを再確認しながら呟いた。
「ここら辺りにはまだ確認されていない魔物が潜むらしいわ。どうやら大型の獣人系魔物がひそかに徘徊しているとのこと……私たちが油断した隙に背後から襲われる可能性が高い」
マギーは短く眉根を寄せ、小瓶から瘴気抑制の薬液を取り出して仲間に配りながら準備を整えた。ジークは短弓を肩に掛け、的確に周囲を見張りながら矢筒に手をかけている。彼の表情は緊張と集中が入り混じり、まるで次の一瞬が勝負の分かれ目になるかのように鋭く光っていた。セレスティアは静かに杖を掲げ、仲間たちに癒しの祈りを捧げている。その祈りは瘴気の澱を絡め取るように森の中に漂い、まるで人々の不安を和らげるように柔らかな光を撒き散らしていた。
「皆、準備はいいか? 一瞬の隙も見せるな。魔王軍もあの瘴気を使って何か恐ろしい手を打ってくるかもしれない」
カイの声が低く響くと、仲間たちは一斉に頷き、一列となって小道を進み始めた。やがて茂みの奥から、不気味なうめき声が微かに聞こえた。その音は風に紛れてかすかに届き、まるで闇の底から這い出てくる怪物の足音のように感じられた。
■ ■ ■
リリアナ視点
カイとガロンが警戒を呼び掛ける中、リリアナは杖をしっかり握りしめて周囲の魔力の流れを探っていた。魔物が潜んでいれば、その瘴気の痕跡を感知できるとリリアナは知っている。小道の両脇に沿って張り巡らされた木々の影が揺れるたび、刹那的に瘴気が蠢く気配が伝わってきた。
「ここに魔物が潜んでいる。そっとこちらを見ている……まだ姿は見えないけれど、すぐに襲いかかってくるかもしれないわ」
リリアナは小声で呟き、杖から放たれる蒼光をゆっくりと広げた。その光は草むらを照らし、瘴気の残滓を浄化するだけでなく、隠れている魔物に警告を与える役割を果たしている。リリアナの魔力が地面を伝って木々に届くたび、草木がかすかに震え、周囲の空気が変化した。
「皆、準備してください。魔物はすぐそこにいるはずです!」
リリアナの声が仲間に届き、彼らは一瞬にして警戒態勢へと切り替わった。ガロンは剣を両手で構え直し、マギーは巻物を胸に抱えながら次の行動を思案している。ジークは短弓を引き絞り、セレスティアは杖を前に掲げてさらなる祈りの光を仲間に注いでいる。その光景はまるで戦場の前哨戦が始まるかのように緊迫感に満ちていた。
■ ■ ■
マギー視点
マギーは巻物に記された古代文字を指で辿りながら周囲の異変を確かめた。その文字には「瘴気と闇に宿る獣の咆哮が夜に鳴るとき、深淵より魔物の軍勢が這い出す」という警句が記されている。マギーは静かに地図を広げ、現在地と地形を照らし合わせた。
「この地点は小道が狭まり、森の奥深くへと続く。まさに魔物の襲撃に最適な場所なのね……」
マギーは巻物を丁寧にたたみ、小瓶の瘴気抑制薬液を一滴ずつ取り出してカイ、ガロン、ジークに配りながら呟いた。その薬液を手の甲に塗ると、瘴気の影響を和らげる効果があり、魔物の毒にも耐えられる可能性がある。マギーは仲間たちの表情を確認しながら、必要な補給が先か、敵撃破かを判断しようとしていた。
「もし真っ向から戦闘となった場合は、瘴気の結界解除に加えて、こちらの呪文で魔物の動きを封じ込める呪文も用意している。少しでも有利に進むために、協力を惜しまないわ」
マギーは剣士たちの背中を見ながら、最後の呪文詠唱の準備を整えた。その間にもリリアナが放つ光が魔物の潜む闇を切り裂き、手繰り寄せているかのように感じられた。マギーは深呼吸をし、仲間たちと視線を合わせた。
■ ■ ■
ガロン視点
ガロンは剣を構えたまま、カイの隣で静かに呼吸を整えていた。その剣先から放たれる蒼光が草むらを照らし、魔物の動きを察知するための探知光線のように作用している。ガロンの視線は常に周囲を巡り、草木の揺れやわずかな風の変化にも敏感に反応する。
「魔物の気配はここから数十歩先か……だが、ここで油断するのは危険だな」
ガロンは小声で呟き、剣を少し前に突き出して構え直した。その立ち姿はまるで大岩のように揺るがず、近づく魔物の突進を一瞬で切り裂く態勢が整っている。ガロンは仲間たちに目配せし、次の指示を待ち構えていた。
「カイ、ジーク、お前たちはどうする? 真っ向勝負で一気に叩きつぶすか、それとも囮と罠を使って迎え撃つか」
ガロンは状況を的確に判断しようと問いかけると、カイは剣を握りしめながら頷いた。
「まずは一気に突き抜けて、敵の数を減らす。だが、魔物の本体はまだ見えない。後方から援護しながら進めば、囮役は必要ないはずだ」
カイの言葉にガロンは深く頷き、剣を構え直して更に集中力を高めた。森の奥から再びうめき声が響き、カイたちは一列となって前へ進み出す準備を整えた。
■ ■ ■
ジーク視点
ジークは短弓を背に掛けたまま、森の入り口で剣士たちと並んで構えていた。細い矢先はわずかに瘴気を帯びており、その先端は朝日の光を受けてかすかに赤く光っている。ジークは呼吸を整え、弓の弦を軽く引いて風切り音を確かめた。その音は森の静寂をわずかに切り裂き、仲間たちに不意の襲撃を知らせるための合図となっている。
「いざというときは、ここから一気に狙いを定める。魔物が群がる前に、要所を狙い撃つんだ」
ジークは小声で呟き、村人を守るために鍛え抜かれた短弓を肩に掛け直した。その視線は険しく鋭く、剣士たちを見守りながら次の一瞬の動きを逃さぬ覚悟を示している。森の奥から濁った唸り声が聞こえ始め、ジークはすぐに矢を一本取り出して弓に番えた。
「仲間の背中を守るためなら、俺の矢は必ず命中させる……」
ジークは呟きながら深く息を吸い込み、その矢先を前方の茂みへと向けた。そして、一瞬の静寂の中、引き絞った弓弦が震え、その強い緊張感が魔物を誘い出すかのように響き渡った。
■ ■ ■
セレスティア視点
セレスティアは深い祈りの瞑想から一瞬目を覚まし、杖を胸に抱えたまま視線を仲間たちに向けた。その祈りは前線に立つ者たちの心を癒すと同時に、瘴気の渦巻く森に光の帯を編むように注がれている。
「闇裂きの光よ、仲間たちの心を導き、魔物の魂を浄化し給え」
セレスティアの詠唱は静かだが、確かな力を感じさせる。杖の先端から放たれる淡い光が、森の奥へとまっすぐ伸び、魔物の潜む闇を切り裂くように進んでいく。その光は目に見える範囲を超えており、仲間たちの背後からも光の援護を与えているように感じられた。
「きっと、皆の祈りと力が合わされば、この森を抜けることができる……」
セレスティアは小声で呟き、再び瞑想の姿勢に戻った。彼女の呼吸と共に光の粒子が波打ち、仲間たちにさらなる勇気を与えている。
■ ■ ■
――カイ視点
一行が警戒を強めつつ森の中へ一歩踏み出した瞬間、木々の間から黒い影が飛び出してきた。それは全身を瘴気に包まれた大型の獣人で、肩幅の広い鋭い角を持ち、触手のように伸びる瘴気の尾を引きずっている。獣人は咆哮を上げながら一気にカイたちへ襲いかかろうとした。
「来たぞ!」
ガロンが剣を振りかざし、大きな振り下ろしで獣人の胴体を強打した。その衝撃で瘴気が吹き飛び、獣人は一瞬硬直する。カイは迷わず剣を抜き放ち、獣人の側面を斬り裂くように一閃した。ルクスの刃先から放たれる蒼光が瘴気を断ち切り、獣人の肉体が鋭い金属音と共に裂けていく。
「リリアナ、援護を!」
カイの呼びかけに、リリアナは杖を振り上げ、魔力を集中させた。杖先から放たれた蒼光が獣人の残滓を浄化しようと奔流となって瘴気を押し戻す。その光が獣人の渦巻く瘴気を飲み込み、森の奥深くへと押し返していった。獣人は断末魔の咆哮と共に崩れ落ち、その場に灰となって消え去った。
「よし、倒した……だが、まだ数は減っていないはずだ」
カイは剣を鞘に収めながら周囲を見渡した。刹那の隙をつくかのように、木々の向こうから次々と瘴気に包まれた獣人たちが現れ、彼らを取り囲もうとしている。ジークは短弓を一閃させ、引き絞った矢を次々と放ち、獣人の前進を阻止しようと奮闘していた。マギーは巻物を取り出して呪文を唱え、瘴気を抑え込む魔法陣を床に描いている。ガロンは剣を構えながらさらに戦闘態勢を強め、セレスティアの祈りが仲間の背後を守るように光を浴びせている。
「皆、油断するな! 一斉に攻撃を仕掛けるぞ!」
カイの声に、一行は一斉に動き出した。ガロンは剣を大きく振り下ろし、次の獣人を押し倒す。リリアナは杖を回しながら詠唱を加速し、瘴気の浄化の結界を広げて仲間を守る。マギーは巻物を開いて次の補助呪文を唱え、瘴気を痺れさせて獣人を鈍らせる。ジークは矢を次々と放ち、切り裂かれた瘴気の隙間を突いて獣人の弱点を貫く。セレスティアはかすかな祈りながら光の矢を森の奥へ放ち、新たに現れる獣人を牽制している。
■ ■ ■
リリアナ視点
獣人が数体倒れた森の中で、リリアナは杖を胸に抱えながら詠唱を続けた。その声は静かだが確かな力を帯びていて、森全体に満ちる瘴気の渦巻きを徐々に消し去っているかのようだった。周囲の獣人は瘴気の瘴気に包まれながらも、リリアナの放つ蒼光に照らされるたびに動きが鈍くなり、やがて空気中に浮かぶ瘴気粒子が崩れ始める。
「瘴気を浄化しながら、仲間を支えます。カイ様、マギー様、ガロン様、ジーク様、どうか前進を!」
リリアナは杖を高く掲げ、さらに魔力を注ぎ込んだ。その動作に呼応するかのように、リリアナの周囲には淡い光の鎧が形成され、仲間たちの瘴気耐性を高めている。彼女は目を閉じて呼吸を整え、次の一撃に備えた。
■ ■ ■
マギー視点
マギーは巻物を広げ、瘴気を抑える結界を確実に展開した。その巻物には「瘴気を封じし結界」の図が描かれており、古代文字を紡ぎながら結界を発動させると、発生する瘴気が一瞬だけ引き留められ、森の中に漂う瘴気が一時的に薄まった。マギーは続く動作で「縛鎖の呪縛」を唱え、瘴気が濃い場所を帯状に掘り返すように呪文を唱えた。その瞬間、周囲の樹木がまるで血を流すかのように色を変え、瘴気を帯びた空気をまとって宙に漂う小さな触手のようなものが根元から取り除かれる。
「この結界で瘴気の拡散を抑えることができるはず。ガロン様、ここでしばらく防御を固めてください」
マギーはガロンを指差して告げ、ガロンは剣を構えたまま小道の入口に移動して防御陣形を敷いた。マギーは巻物を再び仕舞い込み、次の段階に備えて魔力を蓄える。周囲の獣人が再び瘴気を絡めて襲いかかる中、マギーは冷静に情報を整理し、仲間へのサポートを最優先に考えている。
■ ■ ■
ガロン視点
ガロンは剣を構えたまま森の小道を塞ぐ防御陣形を展開していた。その姿はまるで岩壁のように揺るがず、周囲の瘴気を断ち切る刃として鋭いオーラを放っている。ガロンは剣先を地面に突き立て、その鍔を握りしめて魔物の突撃を受け止める心構えを示した。
「この場を守る限り、誰一人後ろには引かせない。俺が盾となる以上、この道を超える魔物はいない」
ガロンは低く呟き、その誓いが剣から蒼い光となって外気に溶け込む。その光が魔物に照らされるたび、獣人は一瞬動きを止め、次の一撃を躊躇するかのように見える。ガロンは剣を構えたまま体勢を低く保ち、次なる突撃に備えていた。
■ ■ ■
ジーク視点
ジークは短弓を引き絞り、魔物の群れがガロンの陣形に突撃してくる前に矢を次々と放った。その矢は瘴気を帯びた魔物の中心部を貫き、鋭い金属音とともに瘴気の痕跡を残して消え去る。ジークの集中力は極限に達し、目の前に現れる標的を次々と仕留める正確さを発揮している。
「少しでも前進を楽にするために、一体でも多く減らす。ガロンの盾が崩れないよう、俺が卓越した射撃で援護する」
ジークは低く呟きながら矢を番え、次の標的を定めた。その目はまるで狩人のように鋭く、魔物の一瞬の動きさえ見逃さない。ガロンの背後から次々と襲いかかる小型の瘴気怪獣に対しても、的確に一撃で仕留めていった。その姿を見た市民たちは遠くから見守りつつ、再び希望の光を取り戻したかのように見えた。
■ ■ ■
セレスティア視点
セレスティアは森の縁に立ち、杖を前に掲げたまま静かな祈りを続けていた。両手から放たれる光が瘴気を浄化し、仲間たちの背後を守る結界となっている。獣人の群れが途中で動きを鈍らせるたび、その背後からセレスティアの光が伸び、瘴気の中に漂う邪悪な魂を浄化しようと渦を巻いている。
「光よ、闇を切り裂き、仲間の心を傷つけることなくひとつに守り給え」
セレスティアの詠唱が揺らぎながら響き渡ると、枝葉がかすかに震え、瘴気の渦がさらに弱まる。その光はまるで聖なる刃のように森の中に突き刺さり、瘴気を押し戻しながら仲間に力を与え続けている。セレスティアはその場で深呼吸をし、やや疲れた表情を見せながらも仲間の活躍に微笑みかけた。
■ ■ ■
――カイ視点
ガロンとジーク、リリアナ、マギー、セレスティアが見事に獣人の第1波をしのいだ直後、森の奥からさらに強力な気配が漂い始めた。瘴気が急速に濃くなり、空気が重くなっていく。その気配はまるで森全体が呼吸するかのように脈打ち、巨大な獣人の影が木々の中から浮かび上がった。全身を瘴気で包まれたその獣人は、人間の背丈をはるかに超え、鋭い角と巨大な牙を持ち、尾からは長い瘴気の触手が幾重にも伸びている。
「あれが魔王軍の獣王か……!」
カイは大きく息を吸い込み、剣を握り直した。その獣人は巨体ゆえに一撃で押し潰されそうな威圧感を放っているが、カイは臆することなく前に進み出た。
「皆、行くぞ! あれを突破すれば、魔王本陣へ一直線だ!」
カイの叫びに応えて、ガロンは剣先を大きく振りかざし、ジークは一気に矢を放ち、リリアナはより強力な魔法を解放する構えを見せた。マギーは次の呪文を唱える準備を整え、セレスティアは最後の祈りを込めた光を仲間に注ぎ込む。
獣王は咆哮を上げながら一歩踏み込み、森林の木々が激しく揺れ、瘴気が渦巻いて一行を襲おうとした。その瞬間、カイはルクスを高く掲げ、刹那の閃光を放った。蒼い光が瘴気を裂き、獣王の瞳を捉えて震撼させる。その隙を狙い、ガロンは剣を振り下ろして獣王の足元を斬りつけ、ジークの矢が確実に獣王の肩を貫いた。リリアナの魔法が瘴気を断ち、マギーの呪文が獣王の動きを鈍らせ、セレスティアの光が獣王の瘴気を浄化する。
その連携攻撃はまるで一つの命令で動く機械のように正確で、獣王は苦痛の咆哮を上げながら崩れ落ちる寸前まで追い詰められた。その姿はまさに魔王軍の脅威を象徴する存在であったが、仲間たちの連携によって瞬く間に打ち破られようとしていた。
「皆、最後の一撃を加えるんだ! これで倒せば道は開ける!」
カイの声に合わせて、仲間たちは一丸となって攻撃を仕掛けた。ルクスの刃先から放たれた蒼光の一閃が獣王の心臓部を貫き、獣王は震える身体を震わせながら地面に倒れ伏した。瘴気の激しい迸りが一瞬だけ拡散し、やがて静かに消え去っていった。その場に広がっていた暗い瘴気が消えると、森の空気は再び清涼な風が舞い始めた。
「やったか……!」
ガロンが剣を鞘に収めながら周囲を確認し、ジークは矢を短弓に戻して深く息を吐いた。リリアナは杖を高く掲げ、周囲を照らしながら魔力の流れを確認している。マギーは巻物をたたみながら次の呪文を準備し、セレスティアは深い祈りを唱えて仲間たちを癒している。
■ ■ ■
――カイ視点
獣王を討ち破った瞬間、カイは胸の内で深く息を吐き、ルクスを鞘に納めた。その剣先はかすかに震えながらも、再びその輝きを放っている。カイは仲間たちを見渡し、疲れた表情とともに満足げに微笑んだ。
「皆、よくやった。これで魔王本陣へと続く道がひらけた。さあ、もう一息だ!」
カイの声に、仲間たちは声を揃えて頷いた。ガロンは剣を掲げ、リリアナは杖を揺らし、マギーは巻物を再び収納し、ジークは短弓を背に掛け直し、セレスティアは優しく微笑んで祈りを捧げ続けた。
一行は再び森の奥深くへと足を踏み入れ、魔王本陣へと向かう最後の道を進み始める。その背後には倒れた獣王の影があり、まるで新たな希望のために道を切り開いた証のように佇んでいた。仲間たちの絆と力が一つとなり、魔物の脅威を打ち払ったこの瞬間、まさに世界を救うための一歩が確かなものとなったのである。
34話終わり
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