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100話 そして未来へ

――カイ視点


淡い朝焼けが大地をほんのりと染め始めた頃、カイは剣ルクスを腰に納めたまま、戦いの傷跡が残る広野に立っていた。先刻まで続いていた運命の最終決戦を乗り越えた今、ここに生き残った者たちはそれぞれの想いを胸に抱えながら、新たな世界への第一歩を踏み出そうとしている。左腕の傷はすっかり癒えたわけではないが、その痛みはむしろ仲間と共に闘い抜いた証として誇りに変わっている。剣ルクスの蒼光は静かに揺れ、アリウスの魂が「未来を見よ」と囁くように感じられた。


「……静寂がやって来たか。だが、これが本当の始まりなんだろうな」


カイは剣ルクスの柄に軽く手をかけ、深呼吸をしてから仲間たちのもとへ歩みを進めた。どこか冷たい風が吹き抜け、草木はかすかに揺れる。草むらの隙間からは、夜露を浴びた小花が芽吹き、まるで戦いを終えた世界の再生を祝福しているかのようにきらきらと輝いている。それを見た瞬間、カイの胸に新たな決意が満ちた。彼は仲間たちと共に、この世界を守り抜き、平和を築く責務がある。


「リリアナ、マギー、ガロン、ジーク、セレスティア、ルレナ――みんな、ここまで来られて本当によかった。これからは、どんな困難が訪れても、俺たちが支え合って歩み続けるんだ」


カイは剣ルクスをゆっくりと腰の鞘に収め、そのまま草むらの中を踏みしめながら仲間たちに歩み寄った。心の奥にある小さな不安は、仲間と交わす視線によって徐々に溶けていく。駆け抜けた激闘の日々――瘴気との戦い、封印の泉での祈り、古代神殿の試練、黒き邪神との最終決戦。すべてはこの瞬間のためにあったのだと、カイは胸に刻んだ。


■   ■   ■


リリアナ視点


カイが穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄るのを見て、リリアナは杖を胸に抱えたまま静かに微笑んだ。先刻まで封印の泉で捧げた祈りと、瘴気を断ち切るために使い果たした魔力は、すべてこの未来を守るための道しるべとなった。左腕の古い傷はまだ淡い痛みを残しているが、その痛みもまた、世界を救うために捧げた代償だと受け止めている。杖先から放たれる淡い蒼光は、朝焼けの光と共鳴しながら、仲間たちの背中を優しく照らしている。


「カイ様、本当にお疲れ様でした。あなたの覚悟と剣戟のおかげで、私たちは新しい夜明けを迎えることができました」


リリアナは杖先を大地に向け、かすかに詠唱を続ける。その詠唱は、戦いの終焉を告げる祝福の祈りとなって朝靄に溶け込み、草木をそっと包み込む。小鳥が枝を揺らしながらさえずり始め、花々は夜露を受けて笑うかのように揺れている。リリアナは深く息を吸い込み、仲間たちと共に歩む未来への希望を胸に秘めた。


「これからは、傷ついた世界を癒すために、私も魔力を尽くして導くわ。仲間と共に平和を紡ぎましょう」


杖先から放たれる蒼光が微かに強まり、その光がリリアナの揺るぎなき決意を映し出している。


■   ■   ■


マギー視点


リリアナの祈りに呼応するように、マギーは巻物を小脇に抱えながら草むらを駆け抜けた。古代文字の呪文は永久の炎となり、瘴気の闇を打ち払ったが、その呪文を維持するには知識と仲間たちの祈りが不可欠だった。今、その知識は静かに燃え続け、世界を再生へと導くための道標となっている。マギーは剣ルクスを見つめ、深い感謝とともに声を紡いだ。


「みんな、本当にありがとう…… 私はこれからも、知識を探求し、呪文を磨き続けます。世界が闇に堕ちぬよう、この命を燃やし尽くす覚悟です」


マギーは巻物をそっと閉じ、仲間たちと共に歩む未来を思い浮かべた。朝風が吹き抜け、彼女の短い赤髪が揺れる。その姿はかつて情報屋として駆け回った少女ではなく、世界を守るための知識と覚悟を携えた賢者へと成長していることを物語っていた。


■   ■   ■


ガロン視点


リリアナとマギーの声を背に、ガロンは剣ルクスを肩に担ぎ直しながら大地を踏みしめた。かつての戦いで削ぎ落とされた瘴気の影は消え去り、広野には清らかな光が満ち始めている。剣先から蒼光が揺れるたび、草木は微かに揺れ、新たな生命の息吹を感じさせた。ガロンの背には、易々と屈することのない剛毅な姿勢が映し出されている。


「仲間たちの命と誇りを守り抜いた証が、この大地の再生だ。俺はこれからも、この剣を振るって誰かを守り続ける――そのために、この世界を歩み続ける」


ガロンは握りしめた剣ルクスの柄を見つめ、その輝きがまるで希望を映す瞳のように感じられた。朝陽が剣先を照らすたびに、剣ルクスは穏やかな光を返し、彼の胸に新たな決意を刻み込む。


■   ■   ■


ジーク視点


ガロンの背中を見つめつつ、ジークは短弓を肩に掛け直して草むらを抜けた。瘴気を擊ち払うために放ち続けた矢の疲労はまだ残っているが、その疲労は誇りと達成感に変わっていた。ジークはふと、夜明け前に兄と共に戦いを語り合った日々を思い返し、深い笑みを浮かべた。


「兄貴とリリアナ様、マギー様、みんなと共に戦えたことが、俺の誇りだ。これからはこの弓で平和を護り、誰かの盾になる。どんな敵が現れても、運命を背負って立ち向かう」


ジークは矢筒に手を触れ、かすかに弓を振るって景色を眺めた。朝風に乗って草花の香りが鼻をくすぐり、世界が再び息を吹き返したことを肌で感じた。その瞳は真っ直ぐに未来を見据えている。


■   ■   ■


セレスティア視点


夜明けが完全に訪れる頃、セレスティアは杖を胸に抱えながら仲間たちの後方に立っていた。先刻まで放たれていた祈りの光は、今や世界の調和を示す柔らかな輝きへと変わっている。セレスティアの声は静かだが、その言葉には深い慈愛と誇りが宿っていた。


「皆、よく頑張ったわ。私の祈りは終わったけれど、これからはあなたたちが世界の光となる。世界の平和を護り、誰かが困っている時には必ず手を差し伸べて」


リリアナ、マギー、ガロン、ジーク、ルレナ、そして何よりカイへ向けたその言葉は、かつて聖女として捧げた祈りと同じ力を持ち、仲間たちへ静かに届いた。朝陽を背に受け、セレスティアの髪は柔らかな黄金色に輝いている。


■   ■   ■


ルレナ視点


剣を胸に抱えたまま、ルレナは仲間たちと共に戦場を後にした。世界の闇と光が交錯した最終決戦を乗り越えた彼女の瞳には、深い哀しみと喜びが混ざり合っている。

「私は、この剣を、みんなとの誓いを守るために振るい続ける。誰かがまた困った時、その剣が希望となるように――」

ルレナは一歩踏み出すたびに剣を強く握りしめ、仲間たちの背中を見つめながら未来への覚悟を新たにした。朝陽を浴びて蒼光が揺れる剣先は、まるでこれからの歩みを祝福する祝杯の輝きのようだった。


■   ■   ■


――カイ視点


広野に響く小鳥のさえずりを背に、カイは剣ルクスを腰に納め、仲間たちと肩を並べて歩き始めた。朝風が草木を揺らし、大地には再び新たな緑が芽吹いている。先刻まで濃く立ち込めていた瘴気の影は消え去り、清らかな光が世界を満たし始めていた。


「みんな、ありがとう。これからは辛い試練もあるかもしれない。でも、俺たちがいれば乗り越えられる。共に歩む未来を信じて、剣ルクスの蒼光を胸に、俺は進み続ける」


カイは視線を仲間たちに移した。それぞれの顔には疲労と傷跡が残るものの、その眼差しには揺るぎなき誇りと希望が宿っている。同行した仲間たちも一様にカイを見つめ、優しく頷いた。


「はい、カイ様!」

「私たちの光は永遠にこの世界を照らし続けます!」

「兄貴と一緒に未来を守る!」

「愛と慈悲の祈りを、この大地に刻み続けましょう!」

「私はいつまでも仲間と共に、この希望の夜明けを歩み続けます!」


その声が草むらにこだまし、鳥のさえずりが新たな朝を祝福する音色として広野を満たす。カイと仲間たちは剣ルクスの蒼光を胸に抱き、肩を並べて静かに歩き出した。彼らの歩みは、終わりではなく、これから始まる新しい物語の架け橋となる――。


100話終わり"


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