第7話 恨み重なるアイツのはずなんだけど
翌日になって親族も1人また1人と我が家に集まってきた。
そして昼過ぎになってアイツが現れたのだ。前世のわたしを不幸のどん底に陥れたアイツだ。
前世では、いつ行われたかもわからない親族会議で決められたまま、わたしは大阪のアイツの家に引き取られた。正確に言えば、アイツの妻はわたしの父の妹、アイツとわたしとは何の血縁もないわけで、わたしの後見人は叔母だったようだ。
アイツは最初からわたしの体と、わたしについてくる遺産が目当てだったように思える。叔母は当時のわたしから見ても、アイツの言うがままに動くだけのロボットのようだった。
引き取られてすぐ、叔母が留守のときに、アイツにわたしは処女を奪われた。当然、合意などないまま、力づくで犯されたのだ。
そのまま大人しくしているようなわたしではない。わたしを犯した後、悠々とタバコを吸っているあいつに、台所から持ってきた包丁で襲いかかり、あいつのまだ大きいままのナニをちょん切ってやった。
その後すぐに帰宅した叔母が救急車を呼んで、あいつは一命を取りとめた。
叔母は半狂乱でわたしを罵ったものだ。
でも、別に悪いことしたとは思ってない。
その後、当然のように警察に取り調べられたが、その時の婦警さんは優しく気遣ってくれてたと思う。他の親戚が裏から手を回したのかどうかはよく知らないけど、叔母もアイツも告訴しないということで事件性なしの事故ということになったようだ。
まぁ、昭和の警察なんてそんなものだろう。
そういうことの後だから、叔母もアイツもわたしをそのまま引き取る気もなく、他の親戚もあらためてわたしを引き取りたくなんてなかったようだ。知らない人にわたしは引き取られて、保護施設行きとなった。
その保護施設がまたひどいところでさっさと飛び出して、わたしは急展開で運命のドツボに落ちていったんだが、それはまた別の話だ。
アイツは現れると同時にわたしの身体をいやらしい目で舐めるように見る。前は気づかなかったけど最初からこうだったんだな。
あらためて、こうして向き合ってみると……あれ? こんな小物だっけ?
ずっとわたしの人生を狂わせた悪の元凶、こいつさえいなければと思いこんでいた。それはまぁそれで間違ってはいないんだけど……
これ、ただの貧相なロリコンの変態オヤジじゃん。別に目くじら立てるほどの大物でもないか。
よくよく前世の人生思い直してみれば、もっと酷い目にいっぱいあってるわ。
なんか自分の処女性を思った以上に重要視してたみたいだ。
前世でちょん切ってやったし、あれでチャラでいいんじゃね?
とりあえず、今世ではまだ何もしてないわけだし、そういうチャンスを与えるつもりは毛頭ない。
欲ボケの親戚の1人として適当に利を食らわしてやれば、それで大人しくなるだろう。そうしよう。
こんな小物に囚われる必要とかないね。わたしはわたしの幸せになる道を考えることにするよ。
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