第25話 思わぬところに
「ケーキ買ってきたから、お茶にしよー」
帰ってきた亜紀さんの声が響く。
「は、はーい」
返事をしたものの、少し声が上ずっているかも……
「早かったね」
亜紀さんが買ってきてくれたケーキをもぐもぐしながら。
「うん、男性陣は川が決壊しないように土嚢を積む作業で、女性陣はそのお手伝いの後方支援するみたいなんだけど、小学校が午後休校になったから小学生がいる家は帰っていいってさ。
ラクしちゃった」
「ふーん、そうなんだ。川とか危なそうなの?」
「帰りに見てきたけど、ちょっと危なそうかもねぇ」
いや、台風の時に川を見に行くとか、危ないから。それフラグだから。
「それより、今日はどうしたの?
藤堂くんだっけ、男の子を家に連れてくるとか初めてじゃない?
しかも、こんな天気の日に。
もしかして、早く帰ってきてお邪魔だったりした?」
いやまぁ、びっくりしたけど、わたしが暴走する前でよかったかもしれない。
「うん、普段は藤堂くん、サッカー部があるから、こういう日じゃないとね」
亜紀さんには、これまであまり事情を話してなかったので、いい機会かといろいろ話してみた。
「ふーん、そんな感じなの。
コネねぇ……コネ、コネ……
もしかしたらあるかも?」
「え?」
思わぬところにコネがあったりした!
「たいしたコネじゃないよ。
あのね、わたしの短大時代の親友に相模翔子ってのがいてね」
「うん、その人が何かコネを……」
「いや、翔子は普通のOL。
その翔子の彼氏がね。新聞社に勤めてるって言ってた」
「新聞社、いいかもね」
「とは言っても、部署とかぜんぜん知らないし、なんか役立つかどうかもわからないよ」
「そうだね。でも、もしかしたらその人がいいコネ持ってるかもしれないし、一度その人とお会いしたいなぁ」
「ちょっと、翔子経由で聞いてみるね。
いつがいいとかある?」
「わたしは学校ないときならいつでも。
でも、藤堂くんはサッカー部があるから、平日は夕方までダメだね。
休日とかはどう?」
「日曜は今週からしばらくの間ずっと、区の大会があるから……」
「え、大会あるの?
出るよね」
「当然、レギュラーだよ」
「なら、応援に行くね。お弁当いるかな?」
「家で作ってくれるとは思うけど……」
「わたしが作って持っていくんじゃダメ?」
「いや、嬉しいよ」
「んじゃ、お弁当作ってくね」
「待った待った待った。2人仲がいいのはいいけど、それは2人のときにやっとくれ。んじゃ日曜より平日の夜のほうが良さそうね」
2人で盛り上がっちゃってたところへ亜紀さんが割って入る。
「あ……ごめんごめん。
それでお願いします。それでいいよね?」
「うん、お願いします」
「んじゃ、そういうことで話をしてみるけど、上手くいくかどうかわからないからね」
思わぬところからコネが見つかるかもしれない。
上手くいくといいな。
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