第22話 それどころではない
テレビをつけると台風のニュース一色。
関西方面は鉄道も止まって大混乱のようだけど、このあたりはたいした雨でもない。警報も出てないみたいだから、学校が休みになることはなさそう。
台風がこのあたりにどの程度の被害をもたらすかは、残念ながら覚えてない。
学校で授業を受けていたら、雨がどんどんひどくなってくる。どしゃぶりだ。
ゲリラ豪雨ってやつだけど、この時代は確かこの言葉は使ってないね。なんて言ってたんだろう? 普通に集中豪雨って言ってた気がする。
急に校内放送が流れ始めた。
「この地方に、暴風警報が発令されたため、午後からの授業はなくなります。
集団下校となりますので、給食を食べた後、各自分団別に定められた教室へ移動してください。
なお、臨時職員会議を開きますので、午前中の授業は自習として教師は職員室へ集合してください」
あらまぁ、こりゃ大変だ。
「やったぁ!」
男子を中心に教室には歓声が響くが、それどころではないだろう。
先生は慌てて職員室へ移動していく。
生徒たちは……自習と言われて真面目に自習するような小学生はいない。さすがに教室から出ていくようなヤツはいないが教室内でそれぞれのグループに分かれて適当なおしゃべりなどをしている。
「ねぇ、今日はサッカー部もお休みだよね?」
「休みだろうな。まぁもともとサッカー部は雨だったら休みだけどな」
学校に体育館はあるけど、体育館はバレー部やバスケ部が使っているから、割り込むスペースなどありはしない。
廊下でトレーニングとかはできるだろうけど、小学校のサッカー部がそこまですることはないんだろう。
「昨日、図書館で海外サッカーチームの本、借りたんだけど、家に見に来ない?」
本当は今日、学校に持ってこようと思ってたんだけど、台風のドタバタで忘れたのだ。
藤堂くんはちょっとまわりを見回した。わたしたちの会話に聞き耳を立てている男女の存在はわたしも把握してるけど、もう2人はクラスの公認カップルとなっているから、わたしはそんなことは気にしない。
「……行こうかな」
その一言でまわりは盛り上がっている。
低学年の頃はともかく、小学校高学年の男子が女子の家に行くという習慣自体がこの時代にはない……いや、令和の時代でもあまりないかな?
「集団下校って言ってたから、そのまま行こうかな?」
「ダメダメ、こんな台風の時に寄り道して遅くなったりしたら、家の人が心配するよ。
藤堂くんの家は通り道だから、先にカバンを置いていっしょに行きましょう」
わたしのうちは……心配してるんだろうか? 亜紀さん、朝わたしが出かけるときには、まだ寝てたし……
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