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第12話 貫禄というものは

 葬儀、それに引き続いての火葬、そして初七日法要と続くと、さすがのわたしにも精神的に辛いものがある。ましてや、それが自分の両親のものとなるとなおさらだ。

 親戚の皆もずいぶん疲れているようだ。

 火葬の待ち時間に聞いてみたのだが、今回の葬儀関連の費用諸々は親戚の皆で負担してくれたようだ。

 香典代わりとのことだ。わたしのほうで出すとも言ったんだけど、さすがに、それならとは言えないでしょう。ここはお言葉に甘えることにします。


 いわゆる人間関係というのは、こういった恩の貸し借りの繰り返し。ここはわたしが恩を借りておきます。いつかまた借りを返す機会もあることでしょう。場合によっては借りを増やすこともあるかもしれません。

 借りは借りとして、ありがたく借りさせていただきます。その人に借りを返すことができなくても、そのときは他の誰かにでも、代わりになにかしてあげれば。そうやってまわりまわっていけばいい。わたしはそう思ってる。


 そして、人は誰しも自分が受けた恩は少なめに感じて、自分が与えた恩は過大に評価しすぎるものだ。だから受けた恩の倍くらいを返すことでちょうどいいところだろう。いわゆる倍返し……それはちょっと違うか。


 そんなことを思い出してたら、玄関の呼び鈴がなった。あくまでも呼び鈴でインターホンじゃないので会話はできない。

 わたしが立ち上がろうとしてたら、亜紀さんがさっさと立ち上がって玄関に小走りで向かったので、とりあえずおまかせすることにした。


「はーい、どちら様ですか?」

「すみません、わたくし斎藤弘泰と申します。遅くなりましたが、大島祥吉さんにお線香上げさせていただけたらと……」


 あ、斎藤のじーさんだ。早くも来てくれたようだ。そして、そういう設定にしてくれているようだ。

 わたしも、あわてて玄関に向かう。


「こちら、父の友人の弁護士さんで斎藤さんです」


 親戚の皆にもそういう設定で説明する。


「このたびは誠に……」


 いわゆる定型のあいさつで始まる。


「紗里さんも本当に大きくなって……」


 初対面だけどね。思った以上に役者ですね。

 でも、なんかそういった言葉の一つ一つが軽いんだよね。自分の知ってた斎藤のじーさんはそういった一つ一つの言葉に重みがあったんだけどなぁ。

 まぁ、斎藤のじーさんと言っても所詮アラサーだから人生経験が浅い。貫禄というものは、もっと経験を積んでいかないと出せないんでしょうね。

 でもまぁ、自分としては人間として信用できる法律関係の人は、この斎藤のじーさんしかいないんだから、すべてを任せるしかないってことです。


「以前、父が将来法律関連で相談したいことがあったら、斎藤さんに連絡しなさいって言ってたことを思い出して、あらかじめお願いしておいたんです」


 親戚の皆にはそう説明する。このあたりは斎藤のじーさんに電話したときの設定通りだ。


「昨夜、皆で話し合って、こちらの平岩亜紀ひらいわあきさんにわたしの後見をお願いすることに決まりました」

「おや、もうそこまで話が進んでいるとは思いませんでした。紗里さんはできればわたしに相続関係の手続きを依頼したいということでしたが、それでよろしいですか?」


 亜紀さんがわたしのほうを向いて、どうなの?って感じで見つめてくる。

 わたしは、無言で大きくうなずく。


「紗里さんが、そう望んでいるのなら、わたしの方に異存はありません」

「それではよろしくお願い致します」


 いい感じで話を進めていけそうだ。

 詳しい話は翌日からということで、斎藤のじーさんはいったん引き上げることになった。うちに泊まって行ったらと勧めたんだが、さすがにそれはちょっとと言うことで予約してあるホテルへ。

 親戚の皆も仕事をこれ以上休めないということで、亜紀さんを残して引き上げて行った。

 亜紀さんはいったん自分のアパートに戻って着替えなどを取ってくるということに。ちなみに本格的は引っ越しは後日改めてということに。


 とりあえず、お疲れ様って感じか。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!


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