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第10話 わたし抜きで話を進められちゃ困る

 その夜は疲れたので早めに休ませてもらうってことで自分の部屋に引き上げた。前世を思い出してみると、この夜に家族会議が行われたとしか思えないからだ。

 どうやら、わたしが寝るのを待ってから深夜に行われたのだろう。


「紗里ちゃん、起きてるかな?」


 わたしが部屋に戻ってしばらくすると、亜紀さんが呼びに来てくれた。計画通りだ。


「うん、すぐ行くね」


 わたしは布団から飛び起きた。わたし抜きで話を進められた困るんだ。

 亜紀さんとともに居間に行くと皆が嫌そうな顔をする。それでも今更ごまかすこともできずに、あらためてわたしも含めて話が始まった。


「大阪のわたしの家で暮らすってのはどう?」


 佐和子叔母さんがそんな提案をしてくる。アイツからそう言えって言われてるわけね。


「絶対にイヤ!

 アイツと同じ家で暮らすとか、何されるかわかったものじゃないもん」


 何されてるかはわかってます。ナニされるんです。

 さすがに、それ以上この提案を進めようとは思わないようだ。言うだけ言ったから、もういいでしょって感じの態度。

 他の皆もさすがに、これはわたしの言い分を聞かざるをえないでしょう。


「オレのとこは世間的に言ってムリだぞ」


 そう言うのは父の弟の正彦まさひこ叔父さん。

 正彦叔父さんは独身。さすがに独身男性1人のところへ女の子引き取るってのはムリがあるでしょう。おっしゃるとおりです。


「うちは正直言って苦しいなぁ」


 次の発言は。母の兄の俊雄としお伯父さん。

 俊雄伯父さんは東京でアパート暮らしと聞いている。子供、わたしから見れば従兄弟いとこが2人いる。部屋の間取りとか知らないけど、もう1人引き取るのは厳しいだろう。


「この家から離れたくないの」


 わたしは、うつむき加減で涙を浮かべて小さな声でつぶやく。こんな感じが効果的かなって。


「そうは言ってもなぁ、皆、仕事もあるし、ここに引っ越してくるわけにもいかないからなぁ」


 正彦叔父さんがそうつぶやく。


「亜紀さんなら……」


 わたしがそう言うと、皆ははじめて亜紀さんのことに思い当たったように目を合わせる。まだ成人したばかりで、わたしとあまり年齢も変わらないような亜紀さんに引き取らせようという発想がなかったようだ。


「亜紀さんなら、もともと近くに住んでるし、ここに引っ越してくるのもあまりムリがないと思う」

「亜紀は、どう思うんだ?」


 亜紀さんの兄でもある俊雄伯父さんが、亜紀さんに尋ねる。


「わたしはそれもいいかなって、家賃とかかからないなら経済的にも問題ないとおもうし」


 他の条件のことはさすがに言わないようだ。そりゃそうだ。


「その答えの早さからして、2人であらかじめ相談してたな」


 そりゃまぁ、バレるでしょうね。


「でも亜紀、将来結婚とか考えてないのか?

 子供付きだと条件難しいぞ」

「結婚?

 ないない。そういうの興味ないから」


 そのあたりのこと考慮してなかったな。

 まぁ、亜紀さんにいい人ができたら、いろいろ考えてあげないといかんか。


「亜紀がいいのなら、オレとしては反対するつもりはないな」


 俊雄伯父さんが一同に問いかける。佐和子叔母さんだけは、嫌そうな表情をしているが、反対するつもりはなさそうだ。


 どうやら、アイツ以外はわたしの受け取る遺産を横取りできる可能性より、わたしを引き取ることに寄る様々な面倒を避けることのほうを優先したようだ。

 この家もボロいし、慎ましやかに暮らしてるし、会社があるとはいえ、個人経営でたいしたことなさそうだし、遺産とか言ってもしれてると思ってるだろうね。

 実際のところ、わたしもそう思ってたんだけど、昨夜軽く調べてみただけで、結構貯めてたみたい。

 わたしのためにのこしてくれたのかどうかは、わからないけどね。前世ではこの遺産どうなったんだろ?

 アイツがすべて着服したんだろうねぇ、きっと。

 

 まぁ、これでわたしの思惑通りに話はまとまってくれたようで一安心だ。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!


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