なんか召還されたけど、至極まっとうにお断りいたします!~俺は早く妹にマンガを渡さなきゃならないんだ~
いつものコンビニの帰り道。
このままいつも道理、家につく…
はず、だった
◇◇◇◇◇◆
「王よ、召還魔法は成功しました!!」
視界が光って一番最初に聞こえてきた、言葉はそれだった。その瞬間俺は悟った。
_あ、これ勇者として召還されたな
と。
「うむ、よくやった」
などと言っているのが、多分王様。なんかthe・王という感じだし間違っていないだろう。
「そなたよ、突然この場所に召還され混乱し、しているか?」
まぁ俺は召還されたりする異世界物が好きだからな。それで、召還されたっていうのも分かったわけだし。
「まぁとにかくお主、名はなんという?」
「あ、伊関天…いや、ファミリーネームの方が先ならテン・イセキと申します」
「ふむ、その機転!やはりお主が勇者にふさわしい!」
あ、勇者召還確定ktkr。
だが、俺の返事は最初から決まっているのだ。
「テンよ、勇者になってこの世界を破滅に陥れる魔王を倒してくれないだろうか?」
俺は息を精一杯吸い、胸を張って答える。
「お断りいたします!!!!!」
「な?!」
俺は早く帰って妹にさっき買ったマンガを渡さなきゃならないんだ!!!
「勇者だぞ!?伝説の勇者だぞ!?」
「あ、そういうのご遠慮致します」
いたって普通の人の俺に魔王なんて倒せるわけないんだって!!
「そういうことなんで、さっさと元の世界に返してください!」
「だが、勇者になって魔王を倒せば一躍有名に」
なんかイライラしてきた。そもそも俺は正当な勇者物じゃなくて召還巻き込まれなんかの作品で、自分を捨てた王様に成り上がりしてざまぁするのが好きなのだ。
だって召還なんて
「理不尽しかねぇじゃねぇか」
「なぬ?」
「だってそうだろ?急に召還されて、勇者になって魔王を倒してくれだなんてそんな死ぬかも知れないことしたくなくて当然だろ!!」
「そもそも、なんで勇者なんて召還するんだ!!!自分の世界のことだろ、自分でなんとかしろよ!他の世界を巻き込むな!!!!」
今まで正当な召還ものを見てモヤモヤしていたものを思いっきり吐き出す。
「俺にだって家族がいるんだ!!それを急に引き離して命をかけろだなんて、最っっっっ低だ」
大きめの声で、悲痛さを混ぜて訴えかける。特に最低のところはためた。思いっきりためた。これで俺の気持ちは伝わっただろう。
「分かったらさっさと返してくれ」
「あ、あぁ分かった。おい!お前たち!!!」
周りにいた魔法使いらしき男たちが動き出す。最初に聞こえた声の男が詠唱を始める。
まったく意味は分からんがな!
それと同時に視界が光る。
「おい、王様!これにこりて勇者召還なんてやめろよ!!!」
返事は聞こえなかった。
が、光につつまれ元の世界に戻っていく感覚が何よりも心地よかった。
◇◇◇◇◇◆
帰宅して、そこで俺は元の世界に戻ってきたことをやっと理解した。
時間はしっかりたっていた。
…これ勇者になってたらやばかったんじゃ。
「2ちゃん…あ、星~マンガ買ってきたぞ~」
「…」
返事は返ってこないのがいつものことだった。俺は和室に入り、慣れた様子で正座をし、星にマンガを見せる。
「ほら、新しい刊がでたんだ。
すげぇ面白そうだろ」
「そういやさぁ_」
俺は、星にさっき帰り道に起こったことを話す。それでも、返事は返ってこない。これもいつものことだ。
「この話、後で2ちゃんねるに投稿しようと思ってるんだけど、どう思う?」
なんとなく、いいんじゃない?と笑っているような気がした。
「…じゃあまた後で」
俺はそう言い、仏壇の遺影を見た。
俺に、家族はいた。
「母さんも、父さんもまた」
_ま、もういないけど。