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【完結】死に戻り令嬢、敵国の王子に溺愛される  作者: 間野ハルヒコ


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最終話

 ランバルドとフリージアはかなり早い段階で二人の結婚を認めた。


 戦争がようやく終結すると思ったら、今度は敵の英雄がこちらの英雄と結託し。反旗を翻してきたのだ。


 しかも要求は「この結婚を認めろ」である。


 別に認めたところで大きな問題があるわけでもない。結婚年齢を定めていた教会の教皇も、このまま戦争状態に突入されるよりは結婚可能年齢を引き下げた方がずっと人道的だと判断した。


 両国民の間ではまことしやかにこんな噂が流れた。


「最初にフェーデ嬢を要求したのは、どうやらアベル王子だったらしい」


 そもそも、ガヌロンが結婚できない年齢のフェーデ嬢を送りつけるというのは、民からすれば理に適わないことだ。


 ならば、アベルがそう要求したと考えれば自然である。


 アベルの動機はフェーデを守る為。

 つまり、ヴィドール家によるフェーデへの虐待も真実であり、フェーデを守るにはアベルもそうするしか手立てがなかったのではないかというわけだ。


 この噂を補強するように、アベル王子は明らかに過剰な兵力を徴兵し、いきなりヴィドール領を攻め落としている。さらに、アベルとガヌロンは一騎打ちをし。ガヌロンが大怪我を負ったところを、アベルに治療されている。


 ガヌロンが唐突に寝返ったのは、死の淵で脅され選択肢がなかったからなのではないか。


 こうした憶測はアベル王子悪人説を強くしたが、同時にその愛の強さも認められた。


 アベルはフェーデの為なら振り構わない危険な男だ。

 とんでもないやつを王子にしてしまった。


 こうした認識がランバルドとフリージアの政治的選択に影響を与えたのは事実だろう。

 

 だが、それもまたアベルの物語(ナラティブ)

 何を隠そう、噂を流したのはアベル王子自身である。




「納得いかないわ。アベルはこんなに優しいのに」


 そう言って拗ねるフェーデにアベルが笑う。


「ごめんね。ガヌロン側にだけ瑕疵(かし)を作るより、両者痛み分けの状況の方が都合がよかったんだ」

 

「それは、わかるけど……」


 辺境城塞都市トロンにある不在城。

 その結婚式場の控え室で二人は言葉を交わす。

 

 本来新郎新婦で別の部屋になるものだが、アベルから片時も離れたがらないフェーデの為に同じ部屋が使われている。


(ああ、でも。本当かもしれないわね)

(だって、アベルは何度何度繰り返しても、わたしを助けようとしてくれた。そして)


 純白の花嫁衣装に身を包み、硝子の靴を履いて、フェーデはアベルに寄り添う。

 もう、二度と離れまいと、その手を強く握った。


 握り返したアベルは急に愛おしくなって、フェーデを抱きかかえた。


「え、わわ!」


 お姫様抱っこである。

 アベルの体温に包まれたフェーデは真っ赤に赤面した。


「じゃ、行こうか」

「このまま行くんですか!?」




 

 

 この結婚によりランバルドとフリージアの和平は正式に結ばれ、両国の関係は急速に回復した。

 

 祝賀ムードの辺境城塞都市トロンには人々が押しかけ、大規模徴兵によって人口が流出した時より増加してしまったほどだ。


 むしろ、一度人口が激減していなかったらトロンは人口過多に耐えきれず破綻していたのではないかと後世の歴史家は指摘している。


 


 父ガヌロンはその悪辣さを戦場から政治に移し、未だ政争の経験が浅いアベル王子をよく助けた。フリージアの第一、第二王子からの毒殺や暗殺を見抜けたのはガヌロンあってのことだろうと言われている。長く戦場で争った二人の英雄はここにきて背中を預け合うようになったのである。


 義姉のアンナは不在城で生活しながら、トロン第一城壁内の貴族学校へ通うようになった。妹に敗北した姉。王子に愛されなかった悪役令嬢とまことしやかな噂が流れ、時にいじめにも発展したが、アンナは挫けることなく勉学に励み、やがてその頭角を現した。


「ここでフェーデに頼ってたまるものですか」


 フェーデや王子が圧力をかければ簡単にいじめはなくなっただろうが、アンナは自らの力で自由を獲得することを選択する。これはもう意地である。


 貴族達の群れにひとり放り込まれた元平民(アンナ)が「面白いやつ」とフリージア公爵家の息子たちに好意を向けられるのは、また別の話であった。

 

 

 継母は、ヴィドール領の経営を不在城の使用人に掌握されやることがなかった。そもそも、継母に領地の経営の仕方など土台わからない。使用人を通じてフェーデに遠隔経営してもらった方がずっとよいのは事実だった。


「奥様、どうぞご自由になさってください」

「何なりと欲しい物をおっしゃってください」


 何不自由ない暮らしは、どこか空虚だった。

 時折、不在城から帰還したガヌロンが花束を贈ってくれたが、自分には不相応にしか思えない。この幸福に釣り合うほどの価値が、自分にあるとは思えなかったのである。


 かつていじめ続けたフェーデは自分よりも遙かに大きな存在になっている。

 王太子妃にして多くの領地を管理する傑物。世界を天秤にかけてまで愛されたもの。


 しかも、積年の恨みを晴らすでもなく、継母に平穏な生活を与えてくるのだ。


 あらゆる敵が消え去っても、自分自身を認めることができなければ人は幸福になり得ない。


 こうなると、継母は自分の小言が何の意味もないことに気づき始める。ただ、優しく聞き流されるだけだ。ずっと、配慮されている。


 継母は庭の片隅に自分の菜園を作り、そこを自分だけの世界とした。

 小さな芽が芽吹き、成長し、枯れていくのを繰り返すうちに。アンナが家に戻ってくるようになった。帰省というやつらしい。そんな言葉も継母は知らなかった。


 アンナはどんどん賢くなっていく。

 学費はすべてアベル王子とフェーデが出してくれているらしい。


 自分の生活も、食べるものも、着ている服も、すべてフェーデが与えたものだった。

 選んだのは継母であっても、金の出所はフェーデである。


 私は何。

 私は、一体、何者なの?



 穏やかな光にあてられ続け、悪の花はここに枯れる。

 フェーデの義理によって継母の心は挫かれた。 




 随分、大人しくなったという継母の様子を聞いて、王族たちとの会議に備えるフェーデはただ「そう」と返した。


 義娘としての責務は果たすが、それ以上何かするつもりもない。

 やるべきことは他にあるのだ。


 許すでもなく、許さないでもなく。

 ただ、継母への興味を失ったその日、世界のどこかで時計の針が動き出した。

 

 

 世界はもう二度と繰り返さず、死に戻ることなく。

 時は過ぎ去り、物語は幕をおろす。


 

END

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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