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ノルド川汚染問題

 冬の終わりが近づくトロンは問題を抱えていた。

 

 経済が発展し流通が劇化した結果、爆発的に人口が増加し、ノルド川にゴミを放棄するものが後を絶たなくなったのである。


 これまでも川にゴミを捨てるものはいたが、すべて流されていた。しかし、ゴミの量が増えた結果、川の水力では流しきることができなくなり、詰まってしまったのである。


 川の水は生活にも使用される。汚染されたノルド川の水を使った第二城壁の住民が病にかかったという話も枚挙にいとまが無かった。


 汚染度の低い上流の水を使えば問題はないのだが、いちいち城壁の外まで出ようとすると。門をくぐる度に関税が発生するので、そこで金を払わなくてはならない。


 結果、貧困層ほど清潔な水を使用することができなくなっていた。


 無論、何も手出しをしないアベル王子ではなかった。

 人足を雇い、ノルド川を清掃して定期的に環境を回復するよう努めていたが、清掃してもすぐにゴミはたまってしまうのだ。


「トロンの外に捨てに行くにも関税がかかるから、ノルド川に捨てるのが一番安上がりになっちゃってるのね」


 執務室。

 フェーデがアベル王子の膝の上で、トロンの見取り図を見る。


 まだ十歳の令嬢では仕事の邪魔をしているように思えるかもしれないが、この場合は逆である。この小さな令嬢はトロンに起きる幾つもの問題を解決してきた。


「アベル、アベルの魔法はどれくらいの範囲まで凍らせることができるの?」


 膝の上から見上げるように問う。

 磨かれた白い髪はつややかに、青の瞳には知性があった。


 思えばここに来た時とは随分違う表情をするようになったものだ。

 このまま、ずっと幸せでいて欲しい。


 そんなことを思いながら、アベルは答える。


「そうだな、川を凍らせて部隊を通過させたこともあるよ」


「わー、すごい!」


 この世界本来の魔法は心に作用するものだが、上達し魔法使いと呼ばれるようになると物質にまで影響を与えることができるようになる。


 そんな魔法使い達の中でも、ここまでの規模で魔法を行使できるものはほとんどいない。一抱えくらいの大きさの火球を飛ばせれば大魔法使い扱いである。


「ただ川を凍らせてもゴミが消えるわけじゃないから、今回は役に立てないけどね」


 ゴミを凍らせることで臭いなどの衛生問題を一時的に解決することはできるだろうが、そんなことをすれば、川の流れを堰き止めてしまうことになるだろう。


 

「え、できますよ?」


 フェーデが不思議な顔をする。


「ゴミ問題はこれで解決です」

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