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時の加護者のアカネの気苦労Ⅱ~暗欄眼の涙と小さな手  作者: こんぎつね
1章 時を越えて
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第8話 守護白馬

私は「時の加護者」アカネ。

何とか異世界アーリーに渡ることができた私は精霊ドライアドからここが私の知る異世界から6年後の世界だと知らされる、世界は4人の人間により混乱に陥っている。まずは「運命の加護者」シャーレに会い現状を知る必要がある。私は6歳に成長したツグミを連れて旅立つ

—南極タイサント—


「お馬さん、ありがとう。私、これから絶対に馬刺しなんて食べないからね」


タイサントの中心部にあるサイフォージュの森から優に8時間かけて、ようやくレンパス村に到着した。


実は1時間半ほど歩いた丘の上で偶然、牧草を食べている白馬と遭遇したのだ。これは幸運と白馬に1歩にじり寄ると白馬は1歩後退する。3歩素早く近づくと3歩素早く後退。


むむむ、お尻向けられて走り去られてしまっては元も子もない。


そんな状況を見かねたツグミが『お馬さん、お友達になろう』と笑顔で近づくと、驚いたことに馬は足を折り曲げ、ツグミを背中に乗せたのだ。


続いて私が急いで跨ろうとすると馬は素早く立ち上がり、私だけが地面にお尻を打ち付けた。


歯茎を出して笑っているような馬の顔が憎たらしい。


ラインとソックスにはこんな仕打ちを受けたことはないのに..


ツグミが『おねえちゃんも一緒だよ』というと、驚いたことに再び足を折り曲げ、私に乗れと鼻を鳴らすのだった。


そして、今、6年ぶりのレンパス村を目の当たりにする。


丘に並ぶ宿舎は雨戸が閉められ長年使われていないようだ。中には半壊しているものもあった。


「 ....」


私にとってはつい先日の思い出なのに.. 人に使われずに痛み始めた宿舎を見ると6年が急に重みをもち始めた。


シエラ、カレン、ロッシ、それにカレン調査船のクルーの人々と過ごした、この地が、この空気が、思い出が、6年も経っているなんて。


「おねえちゃん、あっちからお馬さんが来るよ」


ツグミの言葉に振り返ると誰かを乗せた黒い馬が走って来た。


敵か!?


ツグミを建物の陰に連れて行くと敵の迎撃に備える。


そういえば、私の『時の加護者』の力はあるのだろうか。


そんな不安が頭をよぎる。


どこかの岩を蹴るなどして自分の力を試しておくべきだった。


しかし、今はやるしかない!


ん? 何か叫んでいるようだ。


[ ぉ-ぃ.. ]


遠く馬から聞こえてくるのは女性の声だ。


盛んに手を振って近づいてくる。


敵意は感じない。


どうやらここレンパス村の女性のようだ。


私は警戒を解いてツグミを手招きする。


女性は鼻を鳴らす馬をひと撫ですると、馬を繋いで近づいてきた。


「やぁ、あんたたち見ない顔だね。船で来たの? 」


「えっと.. 」


異世界からやって来たなど言えない..どうしたものか..


女性は応えあぐねる私とツグミの体をまじまじと観察している。


「う~ん.. あんたらの服、あまり見なれない服だね.. あんたら、もしかして違う世界のひとじゃない? 」


何でそのことを!?

私はツグミを物陰から出したことを後悔するとともに再び身構えた。


「何でそんなこと、聞くんですか? 」


「 ..やっぱり、そんなに怪しまないで。私はラチャグの娘『ノラ』よ。はじめまして」


「え? ラチャグさんの? 」


「そうよ。あなたとカレン調査船、そして光鳥ハシルの事は聞いているわ。 ..いつの日かあなたが現れるかもしれないということもね」


「私、ラチャグさんに会いに来たんです。ラチャグさんに会わせてください」


そういうとノラは首を横に振った。


「ラチャグはもう白馬になったわ」


「白馬? 」


「そう。ここ自然と調和と光鳥を信仰する南極タイサントでは人としての時間を全うすると光鳥を守護する白馬に成ると言われているのよ。まぁ所謂、人の死の比喩表現ね」


「え.. そうなんですか。すいません.. それは残念な事です」


「でもね、大丈夫よ! 父さんは全て私に委ねて行ったからね」


そういうとノラさんは自分の胸をポンと手で叩いた。


「ところで、父さんの話だとあなたはサイフォージュの森から現れるってことだったんだけど、もしかしてあそこから歩いてきたの? 」


「いいえ、丁度、丘に馬が居まして.. ほら、あの白い.. 」


後ろを振り返ると、白い馬の姿はどこにもなかった。



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