表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時の加護者のアカネの気苦労Ⅱ~暗欄眼の涙と小さな手  作者: こんぎつね
3章 王国ポルミス
50/81

第48話 繭

私は「時の加護者」アカネ。

このナンパヒ島は「3主の力」が誕生した場所である。3主はこの惑星の意思を受け「島」を守る役割を与えられた。この言い伝えが事実ならば、この「島」とはいったい何なのだろうか?セイレーンはその質問をクローズが隠れている場所で話すと言った。

—ナンパヒ島 湖—


「この湖の湖底は地下洞窟となり、洞窟は海へと繋がっております。そして、この洞窟の先にクローズ様は待っております」


「ねぇ、さっきからクローズの名前しか言っていないけど、シャーレはやはりいないの? 」


「はい。シャーレ様はお隠れになっていますので、まずはクローズ様とお会いしてください」


「そっか。で、どうしたらいいのかな? 」

「そりゃあ、ここを潜って行くんじゃないですか? 」


「えっと.. 恥ずかしながら私、泳ぎはあまり得意ではないのよ」

「なんと! アカネ様、僕は得意ですよ」


『ふふんっ』という表情。


シエラがマウントを取り始めた。


悔しいが、ここは張り合う材料がない.. 敗北


「そんなに不安そうな顔しないでください。アカネ様の手は僕が引いてあげますから」

「大丈夫だよ。泳げないとは言ってないし.. 」


「そうなんですか? でも一生懸命泳ぐと苦しくなっちゃいますよぉ」


(ううっ.. 苦しいのは嫌い.. )


「そ、そうね。じゃ、少しだけ手をつないでもらおうかな」



「あ、あの、お二人とも、そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ。こちらを咥えてください」


それは小さな葉っぱが付いた枝だった。


「これはこの島のキャカの枝です。少し咥え心地は悪いですが、葉が付いている側を口の中へ。枝が水中の酸素を吸収して葉から放出してくれます」


それを早く言ってくれないかしら.. おかげでシエラへの敗北を認めてしまったじゃない。


葉っぱを咥えると「うげっ」となったけど、水面に顔をつけてみると、葉っぱからプーッと空気が出て来る。しかも酸素濃度が高く少し吸うだけで、かなり楽だ。


いざっ! 水中へ。


水の中は透明度が良いのと、周りの水底の構成物が白浜と同じように発光をしているためにかなり明るい。洞窟を先に進んでいくと、さすがに光の蓄積がままならない為か薄暗くなったが、それでも上映中の映画館並みの明るさはある。


しかし不思議なのはこの水だ。


この水の中にいるだけで体に力が流れ込んでくるようだ。かなり長い距離を泳いでいるが疲れや寒さを感じない。


洞窟が二つに分岐する場所に到達するとセイレーンの声が頭に響く。


『 こちらへ 』


洞窟は少し上向きになり、やがて空気のある空洞に変わった。


「ここはこの島の中心部になります」


想像と違って小さな牢獄や倉庫くらいの空間だった。


「がれーぐがだばい? 」


「あの.. アカネ様、もう口、取っていただいても大丈夫ですよ」


「あ、あぁ、クローズはどこ? 」


「こちらに道があります」


壁の下の方に直径1mくらいの玉がはめ込まれている。


「試しに、こちらを叩いてみてください」


触ってみると、まるで鉄球のように固い。


『どれどれ? 』と私を押しのけ、シエラが拳で殴った。


彼女の目が涙目になっていた。


「ぷぷっ」

「いま、笑いました? 」


「笑ってないよ」


『よーし』とシエラが脚に力を入れ構える。


「ああっ、ダメです。待って! さすがに、シエラ様が蹴ったらこの洞窟が崩れてしまいます」


慌てて、止めに入るセイレーンに親近感を覚えた。


セイレーンが手をかざすと、玉はボロボロと崩れ始め小さな幼虫に変化して土の中に逃げて行った。


「げぇ.. これ、きもくない? 」


シエラを見上げると、口が波打つように震え、少し青ざめていた。


「さぁ、ここをくぐっていきますよ」


セイレーンは意気揚々としゃがんで小さい穴の中に入っていく。


「アカネ様、僕、ここで待ってます」


気持ちはわかる。穴の中で幼虫が服の中に入ってきたらと思うと..


「いくよ、シエラ! 」

「 .... 」


『はやや.. 』『あわわ.. 』とおおよそシエラらしからぬ言葉が穴の中に響く。


穴を抜けると、中はまるで繭のような空間だった。地中の虫たちの糸が巧妙に絡み合い、この空間を作り出しているのだ。


「やっと来てくれましたね、『時の加護者』よ。あなたが来るのを長い間まっていた。」


力なく壁に寄りかかるのはクローズだった。


***


—同じころ、『未完の白浜』では、アコウが突然倒れた。マジムによって診療所のベッドに運ばれたアコウはうわごとを言っていた。


「愛する者.. 守る。 それが私の運命.. 」


その言葉を聞くと、マジムは結月を連れて姿を消した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ