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時の加護者のアカネの気苦労Ⅱ~暗欄眼の涙と小さな手  作者: こんぎつね
1章 時を越えて
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第3話 蜘蛛の糸

私は一ノ瀬茜。

私は異世界アーリーでは3主のひとり「時の加護者」だ。飛行機の中で見せられた幻覚。この現世の全てが砂になってしまったあの幻覚は、絶対に異世界アーリーの誰かが意図的に見せたものだ。もしかしたら「運命の加護者」シャーレが見せたのかもしれない。私は取り敢えず異世界アーリーへ行こうと考えていた。

—修学旅行の帰り道—


急ぎすぎる心を落ち着かせ、平静を装おうとすることが、これほど大変だとは思わなかった。今は隣に杏美ちゃんや友達がいるのに、私は異世界の皆が気になって仕方がない。


—ラヴィエ、アコウは大丈夫だろうか? 今頃、シエラは傷つきながら戦っているのではないか? ラインやソックスは泣いていないだろうか?—


「茜、大丈夫? 」

「うん、もう平気だよ。家に帰ってカステラ食べるのが楽しみだね♪ 」


そうだ。杏美ちゃんがここで私に話しかけているってことは、魂で繋がれているラヴィエの命は無事ということだ。


リュウセイの対決から1か月。その間、私は3回ほど異世界アーリーへ遊びに行っている。シエラとアリアの町へ行き、アリア料理を堪能したり、ラヴィエと一緒に王国シェクタの舞踏会に参加したり.. 特に変わったことはなかった。「運命の加護者」シャーレから何かを告げられることもなかった。平和な日常だったはずだ。


野原に寝ころび、両隣のラインとソックスに抱き着かれながら過ごした野原のひと時を思い返す。


(早く、みんなの所に行かなきゃ! )


家に帰宅すると、すぐさま自分の部屋に閉じこもった。そして私はいつものように瞳に意識を向け、『審判の瞳』を発動させる。


「何? どういうこと? 」


いくら瞳に意識を集中しても、白い通路を作り出せない。いつもならその白い通路の先に異世界が広がっているのに。それどころか、鏡で自分の瞳を見てみると、白色の瞳にすらなっていなかった。


懐中時計は平和を守ってもらうために異世界のシエラに預けている。


「これじゃ、異世界に行けないじゃない! 」


ますます異世界アーリーで何かが起きているのではないかと私は焦った。


「茜、帰ったの? いるの? 」


下からお母さんが呼ぶ声が聞こえた。 私は私服に着替え、お土産を持って下の居間へ駆け下りた。


「どうしたの、茜?『ただいま』も言わないで」


「うん。ごめん。ちょっとお腹が痛くなっちゃって」


「やだわ。おいしいもの食べすぎちゃったんじゃないの? 」


「はは.. 」


「あら、福砂屋のカステラね。これおいしいのよね。あと明太子ね。しっかり押さえてるわ。でかしたぞ、我が娘」


「うん.. 」


「やだわね。本当に元気ないわね。風邪でも引いたのかしら? 」


「大丈夫だよ。飛行機に緊張して疲れちゃったのかも」


「じゃ、お部屋で少し寝ていらっしゃい」


「うん、そうするね」


・・・・・・

・・


部屋で寝そべると、天井を見つめ、考えを巡らせてみた。


—どうする?


懐中時計も秩序の力も発動しない。もしかして、既に詰んでいるのか?


(福砂屋のカステラかぁ。おいしいかったな.. ひと箱ラヴィエに持って行ってあげたかった。でも2箱しかないからダメか。もうひと箱買ってきたらよかったなぁ.. )


ひとつは、家の分、もうひとつは留美子おばさんへのお土産分。


あさって、留美子おばさんの誕生日祝いにお母さんが持って行くのだ。


(留美子おばさんは苦手だ.. 一緒にいくのはご遠慮しちゃうな.. )


「 そうだ! それだよ! 」


私は階段を駆け下りた。


「お母さん! 留美子おばさんの誕生日祝いって、香菜さんも来るの? 」

「どうしたの、急に? 」


「ねぇ、来るの? 」

「う、うん。いつも来てるわよ」


「ほんとに!? 私も一緒にお祝いに参加していいかな? 」

「あら、珍しいわね。きっと留美子姉さん喜ぶわ」


そうだ。ひとつだけあった。


異世界アーリーと特別に繋がるもの。


ミントのような香り、サイフォージュの香りがする依美つぐみちゃんだ。


あの子からサイフォージュの香りがするということは、きっと異世界につながる何かがあるに違いないのだ。


私はその希望の糸は依美ちゃんの中にいるヨミが用意してくれたように感じた。


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