すれ違いは更なる重い愛を生む
『涼夜、希華、早く〜!』
『待ってよ、乃寧!』
『スーくん、お姉ちゃん待って〜〜』
私たちはいつも3人一緒だった。
同じ病院で同じ日に産まれた事がきっかけで昔から家族ぐるみの付き合いをしていた。どこへ行くのも3人一緒。
まさに運命共同体。
けれど、そんな当たり前は徐々に変貌を遂げようとしていて……
———小学6年生の頃。
「スーくん一緒に帰ろっ!」
「あ、その……僕、今日は習い事だからっ」
「あっ、スーくん!」
希華の横を駆け足で通り過ぎる涼夜。
「日直終わったわ……って、あれ? 涼夜は?」
「お姉ちゃん……!」
「わっ、どうしたの希華。いきなり抱きついてきて……」
腰に抱きつく希華。悲しそうな瞳を上げる。
「ねぇお姉ちゃん。やっぱり私たち、スーくんに《《嫌われた》》のかな」
希華がそう思うのは無理もない。
最近の涼夜は双子姉妹をあからさまに避けていた。いい例は、今のように一緒に帰ることを拒む。加えて以前のように3人一緒に遊ぶことは少なくなっていた。
「そうね……」
乃寧は難しい顔をして、希華の頭を撫でる。
乃寧はうすうす気づいていた。
自分たちが一緒にいるせいで、涼夜が裏で同級生ちょっかいをかけられたり、嫉妬されて輪を省かれたり……原因は自分たちであると。
好きな人が酷いことをされているのは自分のせいだけど、好きだからこそ、傍にいたい。
幼かった2人には《《解決策》》が思いつかなかった。
だから……
「ねぇ、希華。私たちも涼夜と一緒にいるの、控えよう」
葛藤のすえ、恋を諦め、自分たちも遠ざかることにした。
成長した幼馴染は僕とは釣り合わない高嶺の花になってしまった。だから、2人が自分といて疑問を持たれないように遠ざけた、幼馴染だった男。
好きな人が自分たちのせいで傷つくのがいやで同じ遠ざけていた双子姉妹。
お互いがお互いの迷惑だと遠ざけ合っていた。
「え、好きな人……?」
「ええ、好きな人。そのままの意味よ」
「お姉ちゃんズルい……わ、私もスーくんの事、好きだもん」
幼馴染なんて気づいたら話さなくなるって忘れるものだと思っていた。
遠ざけていたら、自然と恋なんて忘れると思っていた。
初めはそう——好きだった幼馴染。
けれど……見かけるたびに彼を目で追っていた。
『あはは、くすぐったいよ』
『大丈夫? 保健室に行く?』
誰かを助け、誰かに頼られ、いつも一生懸命でとこにでもいる普通の人なのに……
『おっと、大丈夫?』
『彼女を悪く言うなッ!!』
目で追っていた。
想いが積み重なっていた。
そうして今、遠ざけていた理由が判明した今、——もう一度、恋していいんだと確信した。
「ねぇ涼夜」
「な、なに?」
「むぅ、お姉ちゃん近い。私だって……」
涼夜の両側に乃寧々と希華が擦りつくように身を寄せる。耳元で熱い吐息を吹きかける。
(ふ、2人とも距離がちち近い……っ。僕は今から一体、何をされて……)
涼夜は目を閉じ、あらゆる期待を抱く。
恥ずかしいがる涼夜に2人はクスリと微笑み、乃寧が口を開く。
「2人でお礼、じっくりとしたいから……お昼ご飯、うちで食べていこっ?」
姉:乃寧 盲愛保護型ヤンデレ
妹:希華 絶対共依存型ヤンデ