ズルいズルいズルいズルいズルいズルい
希華が乃寧たちの告白現場を目撃しようと後をつけているのは行動で察した。
それは本人の自由だし、僕には関係はない。
『おい主将がコクりに行ったらしいから校舎裏見に行こうぜ』
『だなっ。あのイケメンが振られるところ見てみたいし』
『おまっ、それ酷すぎじゃねww』
教室に入ろうとした時、すれ違いで廊下を歩く生徒の会話が耳に入った。彼らはサッカー部の部員。仲間の告白のが気になるのは分かる。
それも僕には関係ない。
一回は無視した。
だが、席着いてハッとした。
もし、希華がサッカー部の男子たちと鉢合わせたりでもしたら……そう思った時には何故か駆け足で追いかけていた。
「あのっ、あり……」
言葉が聞こえ、後ろに視線をやった時には、彼女の身体が傾いていた。咄嗟に抱き止める。
「おっと、大丈夫?」
抱き止めて気づく。
触って大丈夫だったかな……確か希華は男性恐怖症とか聞いたことが……。
顔を覗き込むも、そのまま気を失ったようだ。運が良かった。
「早く保健室にでも連れて行かないと……」
「……希華?」
「っ!」
背後から声。振り返ると乃寧がいた。
男子たちは先に立ち去り、この場には僕しかいない。証言者の乃寧は眠っているし……
これは……ヤバい。
「ッ……!」
鬼の形相で乃寧が近づいてきた。
「待って違う! 違うんだっ! 僕は希華さんが男子に絡まれて怖がっているのを見て……」
「分かってる。貴方がそんな事なことをしない人だって」
「え……」
乃寧は僕から希華を取るとおんぶする。
「ありがとう。じゃあ」
「う、うん」
そのまま去っていった。
僕がそんな事する人じゃないって、今でも信用されていて嬉しかった。会話が弾まなかったのは残念だったけど。まぁ僕が遠ざけたせいだよね。
「……どんまい」
「あ、ああ……」
振られてたサッカー部の主将に肩を叩かれて励まされてしまった。
帰宅後、ダラダラと過ごしている時だった。
ピーンポーン
家のチャイムが鳴る。時刻は5時を回ったところ。
「誰だろう……って……え」
インターホンの画面に映るのは、乃寧の姿だった。
なんで僕の家を……って、幼馴染だったから家は知ってるか。家までなんできたんだろう……。
まさかやっぱり僕のせいだって言われたとか? 仮にそうじゃなくても、昼間みたいに会話が続かないし……
うん……居留守を使おう。
ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン
応答しないとチャイムの連打。
画面の乃寧は真顔で押している。
『……』
しばらく経って乃寧は諦めたように画面から消えた。
(乃寧side)
「……出ないわね」
何度チャイムを押しても出てこない。留守なのだろうか?
私は玄関から、移動する。メーターがある場所へ。
「ふーん……メーターが動いているから居留守ねぇ」
『お姉ちゃん、男子に囲まれてたところをね、スーくんが助けてくれたの! 凄く、カッコよかったんだよ。私のために、私だけを見て声を掛けてくれて、抱きしめてくれて……』
保健室で希華が嬉しそうに話してくれた。
希華が無事で良かったし、助けてくれた涼夜には感謝してる。
けど……
……ズルい。
ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい
私だって、涼夜に助けられたい、抱きしめられたい。あわよくば、貴方だけのこの身体をめちゃくちゃにして……
「あっ、そうだわ。うふふ、うふふ……」
今日の私はとても冴えてるかもしれない。