直接、愛を囁かれる。臆病になったら負け③
午後は真面目に勉強をした。
乃寧と希華は、毎回テスト順位1、2位をどちかが取っている。つまりは、優等生。
教えてもらったが、とても分かりやすかった。無駄な公式の省略や考え方など、数時間で賢くなれた気がした。……1回負けたけど。
夕食は、希華は裸エプロンではなく、通常の格好で安心したが、交互にあーんはし合った。心なしか、ちょっと慣れた気もした……はず。2回負けたから説得理ないけど。
お風呂はさすがに土下座をかまして回避してもらった。1回負けと交換で。入らせてもらったというか、普通は1人で入ると思うけど。
そして夜も深まり、後は寝るだけ。
……今更2人が泊まるだーなどという驚きはない。
臆病ゲームはまだ続いており、現時点で9回ともうギリギリ。だけど、結構耐性がついた。先に眠りについてしまえば、罰ゲームを受けずに済む。
もちろん乃寧と希華が何もせず、寝かせてくれるとは思ってない。現に今、2人に挟まれた状態だ。
「今日がもう終わるわ。早いわね」
「そうだね。今日みたいな日が毎日続けばいいのに」
さすがにこんな誘惑まみれの毎日が続いたら、いつか恥ずか死してしまいそうだ。
腕に先ほどから柔らかい感触が当たる。右は乃寧、左は希華に腕を絡められ密着した状態。
僕は天井を見上げながらなんとか、誘惑に耐える。チラッと視線を漂わせながら。
白く透き通った肌。滑らかな曲線を描く肢体。宝石みたいにきらきらと、美しく流れる茶色の髪。
そしてたわわに実った果実――これでもかと存在感を主張しながらも決して美の調和を乱すことのない、豊かな胸。大きく綺麗な形をしたおっぱい。
うん、だいぶ冷静に見れるようになってきたな。
「でも、さすがに涼夜が慣れてきたわね。ちょっと面白味がないわ〜」
「私はそれでもいいと思うけど。スーくんが私たちの誘惑が受けられるのを当たり前だと思うぐらい堂々と構えてほしい」
「希華はそっち派なのね。私は初心な涼夜を揶揄うのが楽しいけど」
「うーん、初心なスーくんも対応に慣れた男らしいスーくんも私は好だよ?」
「はいはい。涼夜であれば、どれでもいいって事ね」
「そうかも。でも優しすぎて他の女の子を無自覚に惚れさせて、そっちに行っちゃったら、将来監き――とにかく、スーくんが私の事をずーと見てくれるならいいかな」
一瞬何かを言いかけたのは気にかかったが、話を聞き続ける。
「涼夜はどんな私たちが好き?」
「スーくんは今日みたいな積極的な私たちが好き?」
ここのところ乃寧も希華も積極的!! って感じしかしないけどな……。
「僕も乃寧と希華が、2人は2人であればどんなのでも好きだよ」
「……スーくん!」
「ふふっ、言うようになったじゃない。さすが9回負けただけあるわね」
「うん、9回負けた甲斐がある」
「9回9回と言わないでくれますかね……」
それから少し雑談していると眠気が襲ってきた。
「眠そうね」
「おやすみ、スーくん。明日もよろしくね」
……あれ? もう誘惑してこないんだ。もしかしたら、頑張ったご褒美的なものかもしれない。
「おやすみ、乃寧、希華……」
眠る涼夜越しに、乃寧と希華は会話していた。
「――42回くらいかしら」
「ん? お姉ちゃんなにが?」
「涼夜が私に負けたの」
「むぅ、私の方が多いよ。58回くらいだもん」
「希華のは裸エプロンがほとんどでしょ」
「それ抜いても私の勝ちだもん。だからスーくん襲っていい?」
「だーめ。そんな裏ルール知りませーん」
「とかいいながら、お姉ちゃんだってしっかり数えてたじゃん」
「当たり前じゃない。涼夜が私に照れてくれた瞬間は、一秒たりとも見逃せなもの」
「私だって……もう、お姉ちゃんはまたそうやって上手く纏めて話を逸らそうとする」
「抜け駆けは許さないわよ。あくまで私たち2人の涼夜なもの」
「それはもちろんだよ。私たち双子だけのスーくん……」
「……」
「……」
熱い瞳で涼夜を見守る。
その後、何をしたのかは双子姉妹のみぞ知る。
ピピピ! ピピピ!!!
携帯のアラームが鳴る。眠い目を擦りながら止める。もう一度寝ようとしたが、画面の『(水)』という文字を見て目が冴えた。
「って、今日は学校じゃないか!!!」
時刻は、7時50分。まぁまぁヤバ目
「ほら2人とも早く支度しないと!」
「ふぁ……眠いわ……」
「スーくん……もうちょっとだけ……寝よ……? 学校だって休んじゃって……」
「ダメだよ2人とも! 早く起きて〜〜!!」
二輪の花が2日も欠席となると、学校中が大騒ぎするだろう。それに、2日連続で誘惑されたらたまったもんじゃない。
乱れたパジャマ姿の乃寧と希華を起こせた僕は、ちょっとだけ成長できたかもしれない。




