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閑話 本当の

「きぃちゃんがうちに来たのって久々じゃない?」


 ――それはあんたがあの出間とかいう先輩に入れこんでるからでしょうが。


 なんて、夕愛の気持ちに水を差したりはしない。


「そう? というか部屋、めちゃくちゃ片付いてない?」


 夕愛は苦笑いを浮かべた。


「反省してるってとこ見せないと」

「よくわからないけど偉い」

「でしょ」


 勧められたクッションに座り、コンビニで買ってきた秋限定のほうじ茶ラテをふたりで飲む。


「意外とおいし~」


 ご満悦の夕愛にわたしは尋ねた。


「先輩とはどこまでいった?」


 夕愛はむせた。けほけほと咳きこむ。


「な、なんて?」

「出間とかいう先輩。あれからどうなったかなって」

「そ、そんな関係じゃないから!」

「じゃあどんな関係?」


 夕愛はなにか反論しようと口を開いたが、なにも出てこず、やがてあきらめたようにうなだれた。


「わたしが一方的に甘えてるだけ」

「甘えさせてくれる感じなんだ?」


 けっこう意外だ。むしろ女に甘えそうな感じなのに。


「わたし、いろいろしてあげたいっていうか。ひとに喜んでもらうのが好きなんだよね」

「夕愛は尽くすタイプだからなあ」

「そうかな」

「そうだよ」


 それで今までいいように遊ばれてきたわけだけど。


「でも誠汰くんは逆に、わたしがしてほしいことを叶えてくれる。わたしを、尊重? してくれるっていうか」

「へえ」

「基本的にはめちゃくちゃ真面目で固いんだけどね」

「モーションかけたけどスルーされた?」

「な、なんでわかるの!?」


 リサーチ済みだから――とは夕愛には言えないけど。先輩はヘタレさと生真面目さをいい感じでブレンドしたようなひとだ。


「だから、最初はわたしに魅力がないのかなって」

「大丈夫、夕愛はひいき目に見ても可愛いよ」

「あ、ありがと」


 と、頬を染め、照れをごまかすみたいに髪をいじる。


「でもね、それってわたしのことを真剣に考えてくれてるんだなって、だんだん思うようになって」

「へえ。そう思ったきっかけは?」

「きっかけは……、とくにないけど。確信したのは、この前、わたしが強引に連れていかれそうになっているのを助けてもらって」

「なにそれ、初耳。もしかして元カレ?」

「違う違う。もう連絡もとってないし。ちょっと前に寄りをもどそうって連絡きたけどソッコーでお断りしてやったし。すっきりした」


 と、歯を見せて笑う。


「相手はお兄ちゃん。わたしが家事をさぼったから」


 それで反省したっていうわけか。


「そしたら誠汰くんも元カレと勘違いして、すごく怒ってくれてさ。わたしが前に誰と付きあってたとか、どんなふうに付きあってたとか気にしないって言ってくれて……、わたしめっちゃ嬉しくてさ……」


 そのときのことを思いだしたのか夕愛は目をきらきらさせた。


「かっこよかった……」


 あんな気の弱そうな先輩が、夕愛のお兄さんみたいな強そうなひとに食ってかかるなんて……。


 わたしが思っているより、ずっと真剣なのかもしれない。


「キスくらいはした?」

「してない」

「だろうね」


 先輩は奥手だから、キスのサインを何個も見逃してるんだろうな。


「じゃなくてっ」

「なにが?」

「わたしが……、恥ずかしいっていうか……」

「……は?」


 思わず夕愛をまじまじと見てしまった。


「乙女?」

「乙女だよ! ……乙女だよね?」

「広義ではね。狭義では違うけど」

「きぃちゃんってたまに難しいこと言うよね」

「今さらキスが恥ずかしい……?」


 夕愛は指をもじもじさせた。


「前にほっぺたにキスはしたけど……。そのときね、なんかこう……、ふわふわっていうか、きゅーっていうか、急に恥ずかしくなって……。それから変なの」

「変って?」

「ハグもできなくなった」


 夕愛はうつむき耳まで赤くした。


「きぃちゃん、あのね。わたし、もしかしたら――」


 夕愛は顔をあげた。潤んだ瞳、ピンクに染まる頬。女のわたしでもちょっとドキッとしてしまう魅力的な表情だった。


「初恋、したかも」

これにて第一部完となります。ここまでお読みいただきありがとうございました!

参考にさせていただきたいので、ここまでの評価など入れていただけると嬉しいです!


また、第二部の連載も近々開始したいと思います。

少し準備期間をいただきますが、今しばらくお待ちください。


藤井でした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第一部をお疲れ様でした(*・∀・*)ノ [一言] いつも楽しく読ませて頂いています♪ 第二部の始まりを心待ちにしておりますので、これからも頑張ってください(o´・∀・)o
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