小悪人をもとめて③
「あっ そうだ。徳田様、これを持ってきましたぜ。」
「これは、不正の証拠ではないか。これがあれば堂々と家探しができるか。
ご隠居 ご隠居の権力で近隣の藩から腕の立つ者を早急に集めてきてください。
代官屋敷にある証拠を処分されるかもしれませんので最速でお願いします。」
「よし。俺に任せとけ。だれか紙と筆を持ってこい。」
「ハハッ。」
バタバタバタ
「うむ。では始めるか。って硯と墨が無いではないか。」
「ご隠居の申された通り紙と筆を持ってきましたが・・・」
「もう良い。徳田、後は任せた。代筆を頼むぞ。」
「えぇ、ご隠居 それはないですよ。祐筆などいないのですからご自分でお願いします。」
「そこを何とかするのが、付き人の使命じゃろ。任せたぞ。」
スタスタスタ
あ~あ 逃げてったよ。とにかく書くか。
スラスラスラ
「お前達、この文を近隣の藩主に届けてくれ。くれぐれも粗相の無いようにな。」
シュタシュタシュタ
行ったか。隠密はこういう時は役に立つの。
※※※※ 1刻後 ※※※
「ご老公。お呼びによりはせ参じて参りました。」
「良く来た。悪野伊予守。あそこの代官館を制圧し、家探しをしたいのじゃ。頼むぞ。」
「ハハッ。私共にお任せを。ご老公はここで吉報をお待ちください。」
ゾロゾロゾロ
※※※※ 1刻後 ※※※
「なんじゃと、もう一度申してみよ。伊予守。」
「ハッ。代官は、自ら屋敷に火を付け、代官屋敷は全焼し、代官も死体で見つかっております。」
「お主らは、指を咥えて見ておったのか。」
「我々も消火しようとしましたが、火の回りが早く、延焼を防ぐだけで精一杯でした。」
「あい分かった。おって連絡する。本日は、下がってよいぞ。」
「ハハッ。」
ゾロゾロゾロ
ご隠居と徳田の二人きり
「なぁ、徳田。何か妙だと思わぬか。」
「妙でございますか。」
「うむ。俺の感が代官の自殺は仕組まれたものだと言って居る。」
自殺で終わらしときゃいいものを。ご隠居の余計な勘繰りが出てきたよ・・・
「なんじゃ、徳田。その顔は。」
「いえいえ、ご隠居。それでどうしたいのです?」
「代官屋敷を俺直々に調べるぞ。徳田、お主も来い。」
へいへい、分かりましたよ・・・
※※※※ 代官屋敷跡 ※※※
「こりゃあ 見事に焼けてますねぇ。倉までみんな真っ黒だ。」
「なあ、徳田。自殺するのに何で倉まで焼く必要があったんじゃ。」
「そりゃあ、不正の資料を倉に隠していたんでしょう。」
「だが、俺達が乗り込んだ時は帳簿を見ようとしたときに襲い掛かって来たのじゃぞ。
帳簿を始末するだけなら、わざわざ倉まで焼くことは無かろうに。」
「確かにそうですねぇ。屋敷に火を付けたのが倉まで燃え広がったんですかねぇ。」
「とにかく。帳簿の焼け残りがないか、探してみようぞ。」
ゴソゴソゴソ
「ご隠居。鉄の金庫が見つけましたぜ。」
「おお でかした。護衛その1.さっそく開けてみよう。ちょちょっと切っておくれ。」
いえいえ。鉄の金庫を刀で切れませんって。そんなものを切れるのは斬鉄・・・おっとイケナイ。
「分かりました。ご隠居。」
ズンバラリ
金庫の一片を切り落とす。
なんで切れてるの。はっ まさかあれが噂の斬鉄・・・
「おお 開いたか。なになに、代官からさらに金が流れておるの。その行き「おっとそこまでです。ご隠居。その帳簿を渡してもらいましょう。」
現れたのは、悪野伊予とその取り巻き5名。
「お前達、どうしてここに。」
「そんなことはどうでもよろしいでしょう。その帳簿はこちらで預かりますよ。」
「そうか。お前達が代官と通じていたのじゃな。」
「良くお分かりで。」
「ご隠居。帳簿を渡しても生きて帰れませんよ。どうするんです?」
「こういう時の護衛じゃ。お前達、やっておしまい。」
でりゃー どたり
「さて護衛はいなくなりましたよ。帳簿を渡しなさい。」
「お前達、ここで逃げたら一生飯抜き。」
「「えぇ~ 徳田様、そりゃないですよ~」」
「だったら働け。ご隠居を守り切れなかったら毎日1食 粥のみだ。」
ズンバラリ ドサドサドサドサドサ
一瞬で取り巻きを倒しちまいやがった。本気を出させたら強いな。
「伊予守。観念せい。」
ぐったりうなだれる悪野伊予守
「正義は、必ず勝つのじゃ、カ~カッカッカ」
※※※※ 後日談 ※※※
なに 将軍様から手紙とな
『ご老公を守り、不正を暴いたこと褒めてつかわす。ただなぁ、大名まで成敗したことはいただけぬ。お前が付いていながら暴走を止められないとはどういうことだ。次はしっかりやるように。』
ビリビリビリ
あっ 将軍様からの手紙を破いちゃったよ。まあいいか。ご隠居に見つからないように始末したって言えばいいか。
「徳田ぁ。次はどこへ行くのじゃ。」
「次はですねぇ・・・・」
ご老公の旅はまだまだ続く。
一応 完結とします。
また次回 お会いしましょう。