表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと悪代官がゆく  作者: 倉 雲
1/3

小悪人をもとめて①

ワシの名前は、徳田 助兵衛。お江戸幕府より地方の天領を預かる代官を代々承っている。

はずだったんじゃが、とある事情で付き人をやっておる。


「おーい、スケベ。はよ来んかい。」


ご老公 私の名前は、スケベではなく 助兵衛ですって。


「まあ良いではないか。スケベ。それで次のターゲットはどこじゃ。」


このアホジジ・・・ 元気なご老人が、尾張のご老公。江戸幕府のお偉いさんを息子に譲って隠居した方である。

全く元気なお年寄りで・・・ こっちは少し前まで事務仕事専門だったのに。


次はこの先の天領ですよ。ご老公の手下の隠密を先行させて、代官所の人の出入りを探ってください。

となっていますよ。


ご老公が手下どもに指令を出しているのを横目に見ながら、ワシは、将軍様より頂いた閻魔帳をみながらこの先をどうするか考えていた。


「のう、助兵衛。俺は悪人をスパっと成敗したいのじゃ。その閻魔帳には証拠まで載っておらんのか。」


載ってませんよ。証拠を見つけ出し、悔しがる悪人に対して突きつけることが醍醐味だと仰っていたではありませんか。

その意向を将軍様が汲んでくださって、証拠探しからご老公に楽しんでいただける趣向となっているのではないですか。


「う~ん。俺は悪人をスパっと成敗したいから諸国を漫遊するとだけ伝えたのだがのう。

あやつなら俺の意を汲んで証拠まで全て用意する能力はあるはずなんじゃがのう。」


いや、将軍様は時間を掛けて諸国を回ってきてほしいからこんなことをしてるんじゃなかろうか。

このリストよく見ると◎と〇と△がついてるし・・・

きっと◎は成敗、〇は必要に応じて成敗、△は見せしめ程度に数件ほど成敗とかの意味じゃろうな。

上の方が◎で下の方が△になっとるし。

今回は、初めてなので近場の〇の上の方にしておるが、簡単な方だろう。

閻魔帳にも初心者向きと書いてあるし・・・


「助兵衛、何か言ったか。」


いえ 何も。


「助兵衛、手下どもも調べるのに時間がかかるじゃろうし、そこの茶屋でも入って一服していこうぞ。」


そういうと茶屋の中に入っていった。


ガヤガヤガヤ


「助兵衛、茶がうまいのう。」


ご老公、本当に付かれた体に染み渡りますねぇ。


「のう 助兵衛。これから先はご老公は辞めて、ご隠居と呼んでくれ。俺の身分がバレると不味いからのう。」


分かりました。ご隠居。



※※※※  数刻後  ※※※



「ご隠居。そろそろ腰を上げませんと宿場町まで間に合いませんぞ。」


「おお、そうか。名残惜しいが行くとしよう。助兵衛、勘定を払っておいてくれ。」


「えっ ご隠居 お足を持ってないんですか?団子をたらふく食べ、さらに隣の別嬪さんに奢ってましたよね。」


「そんなはした金。後で利子付けて返してやるから、払っておけ。」


「分かりましたよ。

女将さん、幾らだい。」


「100文になります。」


「えっ そんなに食べたのかい。」


「ご隠居様が、あちらとこちらの女性の分もつけるようにと仰っていましたから。」


全く金もないのに女にいい顔しやがって。スケベはどっちだってぇの。


「はい、100文。数えとくれ。」


「はい、丁度いただきました。今後とも御贔屓に。」



※※※※  数刻後  ※※※



「さて、今夜の宿を探して、調査結果を聞こうかのう。」


「ご隠居、宿の予約は隠密に依頼しているのですか。」


「しとらんよ。お主がしとるんじゃないのかい?」


「いえいえ。私には、現地に先行して入るような手下がおりませんので、無理ですよ。」


「そうか。じゃったら1人付けるか。おい、誰かおらんか。」


シーン


「うむ。全員調査に出払って居るようじゃの。あとから誰かつけるとしよう。」


「ご隠居、護衛に幾人か残しておくべきなのでは・・・」


「護衛ならお主がおるじゃろ。」


「私の剣の腕は散々ですよ。今は無手ですし。ご隠居の方が心得があるのでは?」


「剣術師範から剣を抜くなと言われる腕前じゃからのう。お主の方がましじゃろうて。」


「自慢になりませんよ。それならなおさら何人か護衛に残しておくべきでしょうに。」


「次から検討しよう。」


「お願いしますよ・・・」



※※※※  旅籠屋にて  ※※※


スッ 隠密が静かに部屋に入ってくる。


「ご隠居、調べてまいりました。」


「おぅ お帰り。して、どうだった。」


「代官屋敷前を見張っていましたが、出入りは役人だけで怪しい者はおりませんでした。」


「分かった。見張りを続けてくれ。」


「ご隠居、ご隠居。隠密に護衛を頼むのじゃなかったですか。」

危ない、危ない。ご隠居に任せるとすぐ忘れてしまうからのう。ほんとにボケ爺は・・・



「おぉ そうじゃった。誰か腕の立つ者を護衛として残してくれんか。」


「あいにく、我ら一同 暗殺はプロですが、護衛には向きませぬ。

ご隠居が尾張の殿様に隠密の種類を指定しなかったため、我らが付き添いとなったと聞いております。」


んっ。付き従っている者たちは暗殺のプロ?


「そうじゃった。諜報部、護衛部は忙しいから暇している暗殺部隊なら連れて行っていいと、息子が言っておったんじゃった。

こりゃあ。護衛として使えんのう。」


「どうするんですか?」


「ご隠居に近づく者全てを殺すことなら出来ます。」


「それで良かろう。」


皆殺しかよ。


「ご隠居 罪の薄い者まで殺していてはご隠居の評判にかかわりますぞ。」


「いいんじゃよ。証人も全ていなくなれば問題あるまい。」


「いえ。問題しかあり・・・。分かりました、こっちで何とかしますから当面大人しく旅籠に籠っていてください。」


このジジイに任せていたら大量殺人鬼になってしまう。ここは将軍様に泣きつこう。


「ご隠居様、足の速い隠密を1名貸してもらえませんか。」


「良かろう。好きにせよ。」


2週間ほどで町人風の武士が2名派遣されて来るのだった。


なになに、将軍様からの手紙を持ってきたとな。


『この者たちの腕は確かじゃ。ただ、大飯ぐらいなので飯はたんと与えてくれ。』


腕が確かなら飯を食わせるくらい大丈夫だろ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ