第7話 偽りの親友
コサメはヒメに隠し事をしている。
それは〈電撃の殺人〉と〈破壊の殺人〉を持っていること。
つまり主人公を2体所有していることになる。
マスターに所有制限はないので、何体でも扱うことできるのだ。
親が共働きのため、帰って来るのは6時半ほど。
その間彼女は前まで先輩であるヒメと遊ぶのが定番だった。
だが今は学校が変わったため連絡することしかできない。
遊べるのは用事がない休みの日。
寂しさを紛らわせるため、〈電撃の殺人〉と〈破壊の殺人〉をスクールバッグの中から取り出す。
「電撃の暗示、破壊の暗示、出てきて良いよ」
召喚される2人の主人公。
金髪を2つの青い輪っかでツインテールにまとめ、可愛らしい黄色の瞳、耳から顎にかけてオレンジ色のガードが取り付けてあり、機械仕掛けの青いボディには電気が巡回している黄色のコードが繋がっている。
腕もまた機械仕掛けで、電撃を放てる様になっている。
そんな少女の名は電撃の暗示と言う。
もう1人は黒いボディに赤い角、左の複眼は赤くて丸く、右の複眼はバッテンで赤い、腰にはヒーロー物のベルトを着け、下半身が黒い骨となっており、足がなく、宙に浮いている。
彼の名は破壊の暗示。
この2人との関係は親友と言っても過言ではない。
マスターとしてではなく、ゲーム仲間として共に家庭用テレビゲームをやっている。
最新の物ではなく兄のお下がりだが、3人でやるなら十分遊べる物がこの部屋にはある。
「コサメ、あれから大丈夫? なんかやつれてる様に見えるけど」
電撃の暗示が心配で表情を曇らせる。
あの事件以来主人公がどこから襲って来るのかと恐怖しながら生きてきた。
なんとか逃げ出すことができたものの、トラウマとして植え付けられた彼女を見過ごせず、2人は返答を待つ。
するとコサメは返答ができないままつらさに耐えきれず泣き出した。
ぐしゃぐしゃになった表情を手で覆い、溢れ出す涙が床に滴り落ちる。
「私怖い………いつあの赤い奴が来て殺しに来るか………もしまた会ったら………絶対殺される………」
あまりの恐怖で出る本音。
それに対して破壊の暗示は彼女の右肩を軽く叩く。
「なにがあってもコサメは俺達が守る。だから心配するな」
「そうだよ。あんな奴黒焦げにしてやるんだから」
確かにこの2人ならヒーローの皮を被った化け物を倒せるかもしれない。
だが、それは可能性の話だ。
親友を失いたくないと言う考えがコサメの頭に過ぎる。
2人の死ぬ姿を見たくないと、思わず目を閉じ、崩れ落ちるように座り込む。
すると電撃の暗示もその場に座り込み、ため息を吐く。
「大丈夫、私達はいつもコサメの側にいるよ」
親友として、戦わせたくないのは分かっている。
しかしこの時コサメ達は知る由もない。
主人公狩りの標的に自分達がなっていることを。
一方その頃、とある警察署では次々と起きる殺人事件を未解決事件として処理していた。
書類の山が保管庫に入れられていく。
その現状が許せない男性刑事がいた。
彼の名はホンジカゲタ。
40代のカゲタはその大人びた冷静さとは裏腹に若さを感じさせる熱い正義感を持っている。
「この未解決事件、俺達が解決してみせる。そうだろう、ガン」
彼は覆面パトカーを運転しながら〈銃の殺人〉の中に潜む主人公、銃の暗示に話しかける。
『当たり前だろ〜。マスターは刑事で俺はカウボーイ。2人がいればなんだって解決できるさぁ〜』
軽い口調で話す銃の暗示に「フフ」と笑う。
「あぁそうだな」
覆面パトカーでパトロールをしていると、銃の暗示が主人公の気配を感じ取った。
『マスター。事件の匂いだ。この近くでコンビニ強盗をしてやがる』
「分かった。位置を教えてくれ」
『オーケー』
ランプを屋根に取り付け、光らせながらサイレンを鳴らす。
他の車を通り越し、案内でコンビニに到着する。
『こりゃ主人公がいるな。あとは俺に任せろ』
「良し、頼んだぞ」
カゲタはスーツの胸ポケットから〈銃の殺人〉を取り出し、銃の暗示を召喚する。
その風貌はまさにカーボーイ。
カーボーイハットを被り、赤いバンダナで口元を隠しており、目はまるで爬虫類を思わせ、不気味にギョロギョロと動いている。
コンビニに入ると、そこには金の暗示が金をバッグに詰めていた。
チャイムの音に気づき、こちらに視線を合わせてくる。
「よ〜、俺は銃の暗示、意味は銃、生成、軽いノリと裏腹に。お前を逮捕しに来た〜」
そう言って銃の暗示は次元の裂け目を開き、マシンガンを取り出すと、銃口を金の暗示に向ける。
「ほう、逮捕と言うことはあなたは政府の犬のマスターをお持ちで?」
「お〜と、マスターをバカにするのはそこまでだ〜。俺は殺す準備ができてるからよ〜」
軽い口調だが、正義感に燃える彼に金の暗示はマスクの裏で青ざめているのだった。




