最終回 悪魔は誰にでも
コサメが入院していると聞いてヒメは心配になる。
だが精神病院は家族以外は面会はできないため、休みの日も行くことはできなかった。
今日もグループホームで料理を作り、順番に提供する。
その繰り返しを続けている内に利用者との信頼を獲得していった。
そんな中帰りの際ヤマトと話をしながら帰宅する回数が多くなり、彼の交流を深めるようになった。
「ただいま」
誰も居ない部屋で朝ごはんであるレトルトのカレーライスが乗った皿をテーブルに起き、カーペットに座る。
ピリリとした辛みを堪能しつつ、テレビでニュース番組を観ていると、スマホから電話が掛かってくる。
画面を確認するとブラッドの着信であることが分かったので、すぐに返答する。
「もしもし、ヒグラシです」
『もしもしヒグラシさん、いつも世話人のお仕事お疲れ様』
優しい口調でこちらに話し掛けてくる彼女に、思わず上限反射で頭をぺこりと下げる。
上司として優れた才能があるブラッドに、いつも頭が上がらない。
これこそカリスマと言う物なのだろう。
数日でそれを思わせる実力を持っていた。
『あのね、最近この付近で物騒なことばかりでしょ。だから気をつけてもらいたいなと思って。あと新しい人が何人か入るからよろしくね』
「はい分かりました。今度とも働かせていただきます」
『えぇ、じゃあ切るわね』
「はい、ありがとうございます」
電話が切られ、スマホをテーブルに置くと、良い仕事場を見つけたと確信しつつ、カレーライスを再び食べ始めるのだった。
一方その頃救いの暗示は算数のテストを自分なりに攻略していた。
ヒメと残酷な映画の暗示と共にひたすら勉強した成果をここで見せる時。
結果は72点、自己ベスト更新だ。
別に成績なんてどうでもいい。
これでヒメに褒めてもらえればそれで良かった。
帰り道、キリアと一緒に帰宅することが当たり前になったこの日、話を合わせながら歩いていると、男子高校生4人がこちらを睨みつけてきた。
「お前か、俺の妹を殺したのは!」
1人が叫びを上げ、空気弾を放った次の瞬間、霧が立ち込め、大剣を持ちローブを着た大男が現れ、攻撃を刃で切り裂き、さらに後ろからローブを着た者達が、各々の武器で敵を瞬殺した。
「ボス、それに友人のヘルプ、申し訳ない。俺達、いじめる、奴の、処理が、遅れた」
大男の顔は仮面で分からないが、分かるのはキリアの悪夢を見たような歪んだ表情。
「なんで………なんであなた達は………私の周りの人を殺すの………?」
「その質問に、対して、俺はこう返す。俺達の存在理由、それを否定することは、ボス自身を否定するのと、同じ」
その言葉に対してなにも言えなくなる彼女に、主人公の気配を感じた救いの暗示は次元の裂け目からハンドガンとサバイバルナイフを取り出す。
現れたのは正義を語る殺人鬼、セイギとその相棒である最強の暗示だった。
2人を殺しにかかるローブの集団を次々に稲妻を思わせる傷を持った戦士が持つ 破壊の暗示の意味で消していく。
「行くよ最強の暗示、悪を根絶やしにするんだ」
「分かっている。相棒」
ゆっくりと近づいてくる彼らに、為す術なく消される者達。
白髪の少女はキリアをお姫様抱っこし、逃走しようとするが、支配者の暗示の意味によって動きを封じられ、絶対絶命。
「ようやくだ。ようやくお前を殺せる」
ダイヤモンドカッターを投げ槍に変え、救いの暗示へ投げようとしたその時。
「その言葉は、俺のセリフだー!」
ミサイルがセイギに向けて現れ、大爆発を引き起こした。
吹き飛んだ彼らはアスファルトの外壁に激突、意識を保ちつつ、後ろを確認すると、武器の暗示がイライラしたように首を回していた。
「さっさと死ね。マスターの機嫌が悪いんでな」
ミサイルを見境なし次元の裂け目から発射し、次々に建物を破壊して行く。
セイギの体は爆発に耐えることなどできず、変身が解除される。
火傷が侵食していき、激痛が彼を襲う。
(なぜだ。なぜ俺はセイギを見殺しにしているんだ)
〈正義の殺人〉〈槍の殺人〉〈変身の殺人〉が燃えていき、3人の命は燃え尽きていく。
(そうか、俺は止めてほしかったんだ。セイギとのヒーローを語る人生を)
完全に死滅した彼らの姿に、武器の暗示は後ろを振り返り、ブックエスケープを高笑いを上げながら使用し、その場を逃走した。
こうして殺人鬼はここに消えた。
だが忘れないでほしい。
悪魔は誰にでも住み着いている。
殺人鬼は誰にでも成れ、そして罪を犯す。
それが繰り返されるからこそ、人は正義を語れることを。




