第46話 日常の崩れ始め
「お〜おかえり」
シェアハウスの自分の部屋で残酷な映画の暗示が刑事ドラマをカーペットに座り観ながら救いの暗示を迎え入れる。
「今日はどうだった。学校は楽しかったか?」
「ホント性格変わったわね、まあ良いけど。同級生の能力がとても私では手に負えない物でびっくりしたわ。とにかくキリアって子に会ったら仲良くしてあげて、機嫌を損ねたら大変なことになるから」
彼女が言うぐらいなのだからその同級生はすごい能力を持っているのだろう。
そう彼は確信した。
「さて、俺も晩ご飯を作るかぁ」
そう言って「おいしょっと」と立ち上がり、ご飯を作るため部屋を出る。
シェアハウスのキッチンを使い、炊飯釜で米をとぎ始める。
その姿を見た住んでいる男性は一瞬驚きながらも前に親切な挨拶してくれたことを思い出し、「こんにちは」と挨拶をする。
「あっ、どうも」
「今日はなにを作られてるんですか?」
男性の質問に彼は水を水道場に流し、再び水を注ぐ。
「今日はチャーハンを作ろうかなと。俺のマスターはお仕事で忙しい物で、料理ができるのは2人の中で自分しかいないんですよ」
「そうなんですか。ヒグラシさんを見かけないと思ったら仕事が見つかったんですね」
「はい。これからも色々と騒がしいと思いますが。よろしくお願いします」
そう言って炊飯釜の外側をタオルで拭き、炊飯器にセットする。
能力者が当たり前にいる町、夜具画町。
しかし迫る正義を語る者達の魔の手。
まだ知らない彼らは幸せなのかもしれない。
一方その頃、ヒメは吸血鬼達が住むグループホームに徒歩で向かっていた。
今日も1日料理を作り、なにかあれば支援する。
それだけでも疲労は溜まる物だ。
いつ殺されてもおかしくない恐怖が彼女の中で渦巻く。
そして後ろから誰かが着いて来ている気がした。
誰なのかと気になるが、もし振り向きざまに殺されたら………そんな考えが頭を過ぎる。
なぜそんなことを考えるのかと言うと、最近殺人事件が多発しているからである。
特に女性や幼い少女が狙われるケースが多く目撃されている。
仕事を休めないとは言え、殺人鬼に狙われているのではないか? これは錯覚なのか、それともガチの奴なのか。
(救いの暗示にも残酷な映画の暗示にも戦ってほしくない。今まで主人公や人をたくさん殺してるし、殺させてきた。だから、だからこそ、私が頑張らないと)
責任を背負い、今を生きている。
2人の罪は自分の罪、いつ処刑されてもおかしくないとヒメは考える。
そうして日暮れの道を歩いていると、白髪の青年が待っていたかの様にこちらに手を振る。
「ヒグラシさーん」
彼の名はキカギヤマト、護衛の仕事をしている吸血鬼の1人で、見た目の割には歳をとっており、バイクを乗りこなす凄腕だ。
「キカギさん、どうしてここに?」
「実はヒグラシさんの周りに殺人鬼の目撃情報があると聞きまして、それで警察から依頼が来たので待っていたんです」
やはり現実だった。
自分がターゲットにされていることを。
恐怖で背筋が凍りそうになる。
「相手は透明に成れるインビジブルが使えるそうです。今も盗み聞きしているはず」
いくら吸血鬼と言えど透明になった者は視認できない。
だが体の関節の音は捉えることはできる。
ヤマトは殺人鬼の位置を捉え、一気に瞬足まで加速、左足で強烈な横蹴りを放つ。
「グァー!?」
女性と思われる高い悲鳴。
地面に叩きつけられインビジブルが解除される。
泡を吹いて倒れている殺人鬼の姿に死んでしまったんではないかとヒメは彼を疑ってしまう。
「安心してください。気絶させただけですから。警察を呼ぶのでしばらく待ってもらって良いですか?」
「ケッ、警察!?」
心臓が飛び出しそうになるぐらいの衝撃的な発言に声を荒らげる。
指名手配されている現状でここでもし呼ばれたら確実に捕まることを考えると冷や汗が止まらない。
「どうしたんですか? そんな声を上げて?」
なにも知らない様子で驚くヤマトだったが、そこにケンイチと娘とも言える主人公 減少の暗示がエコバッグを両手で持ってこちらに歩いて来る。
「ヒグラシさんじゃないか。この状況はなにか事件に巻き込まれたみたいだね」
「ヒグラシさんの知り合いですか?」
優しい口調で話す彼に、白髪の青年は何者か問いかける。
「僕かい? 僕はカワギケンイチ、ヒグラシさんを夜具画町に連れて着た張本人さ。彼女が心配しているのは自分が警察に捕まること、だけどそれは断じてない。被害者としてこちらが自衛隊から保護したと言う筋書きがあるからね」
ケンイチはニュアンスを変えているが、正直に言うと回収された〈情報の殺人〉を利用し、データを改ざんしたことでヒメの容疑をもみ消したのだ。
そんなこととはつい知らずホッとした彼女は緊張が解け、 安心した表情で深い息を漏らす。
だがその姿にヤマトはなにか罪を犯したのではないかと疑い始めるのだった。




