第42話 皆殺しのイージス
マスターであるアイシアの指示を受け、出撃した武器の暗示。
彼女の復讐に付き合って早2年。
ようやく目的の彼らを殺すことができるチャンス、逃す訳にはいかない。
「俺は最強なんだ。お前達の様な格下に負けるものか」
弾切れになったバズーカをアスファルトの道に落とし、巻き付けていた触手で槍の暗示を貫きにかかる。
「スピードアップ」
右サイドスイッチを叩き、足の血管が浮き出ると同時に正義の暗示が神速と言える程の速度で走り出すと、触手に向けてシューティングシルバーを正確に連射する。
ビーム弾を受け焼き焦げたがその動きは止まらず、刺し貫かんと迫って来る。
「そんなものが俺に効くかよ!」
撃破を確信し笑いを上げる彼だったが、後ろから迫る主人公の気配を感じ、高く飛び上がる。
宙を舞い、次元の裂け目から戦闘機に搭載されている爆弾の雨を降らせる。
地面に激突し、爆発があっという間に広がっていく。
爆風の圧に耐えながら触手を鎧に巻き付け「カァー………」と息を漏らしながら気配を全方位確認する。
(上か!)
火薬による灰色の煙を突っ切り、急降下キックを繰り出す赤き戦士とさっきの青き戦士であろうもう1人の赤き戦士。
「「ダブルジャスティスキィーーーーーーク!!!」」
明らかに隙だらけな奇襲に、次元の裂け目からミサイルを射出し迎え撃つ。
だが突然飛んで来た槍がミサイルを貫き、爆発を引き起こす。
それと同時に2人の蹴りが命中し、正義の暗示のエネルギーが注入されると同時にセイギの破壊力が重なり鎧にヒビが入る。
アスファルトの道に亀裂が入り、そのまま倒れ込んだ。
「ゲボ…………」
ヒビから血を溢れ出させる敵に容赦なく赤き戦士は「シューティングシルバー!」と叫び、ベルトのスクリュー部分からシューティングシルバーを取り出す。
さらに左サイドスイッチを叩き、黄色いラインからエネルギーが銃に伝達された。
「俺達の前から消えろ」
トリガーを弾こうしたその時、後ろから強烈な衝撃と足音が聞こえ振り返ると、大きな2足歩行の黒き毛で覆われた恐竜が口を開き襲いかかって来た。
「消えるのはお前だ!」
恐竜から発せられた罵声に驚きつつ、2人はサイドステップで突進を回避する。
それに対し大量の魔法陣が茶色の肌に描かれた赤いハチマキを巻いている少年の姿、正体を表す。
「お前は!? 究極の主人公の1人!?」
正義の暗示は知っている。
自衛隊に押収された彼の事を。
「そう、俺こそ究極の主人公の魂の暗示。さっきなっていたのは太古の昔に絶滅したティラノサウルスだ。次はこいつで仕留めてやる」
そう言って魂を体に宿し、変身したのは2年前倒したはずの天から降る光線の暗示。
「聞こえるぜ。殺された怨みを果たして欲しいってよぉ」
天に手をかざし、夜空から光が降って来る。
「スピードアップ」
「スピード!」
さっきの爆撃により血だらけで倒れ込んでいる槍の暗示を視線に捉え、セイギは抱き抱えると光、いや光線を必死に躱す。
「セイギ様………申し訳ございません………」
ランクがフツウである彼には荷が重すぎたと感じ、次元の裂け目から取り出した〈槍の殺人〉に無言で首を縦に振りながら戻す。
「俺は欲望のために生きる。だから槍の暗示、これからも一緒に戦ってね」
『セイギ様………そのお言葉………この身に刻ませていただきます………』
跪く黄金の騎士。
今まで自分自身が使い捨ての道具だと思っていた。
しかしマスターの発言で理解した。
自分は利用されるだけじゃない。
仲間として見てくれていたのだとこの場で実感した。
(仲間が死んでほしくないのは俺も正義の暗示も同じ。絶対に見殺しにしない)
次元の裂け目に彼を戻し、次々に現れる主人公を蹴散らしていく。
その中に女騎士、刃の暗示が絶対に折れないと言われている剣、デュランダルを正義の暗示に向けて右斜めに振り下ろす。
その姿を見て武器の暗示は全身から血を吹き出しながら立ち上がる。
「俺は………最強なんだ………アタリごときにかませ犬扱いされてたまるか………」
咆哮を上げ、次元の裂け目を大量に開く。
現れたのはアメリカが保有している防衛艦、イージス艦に搭載されたミサイル。
危険落下物を爆散するために追尾性能があり、本来は防衛に使われる。
「こいつはイージス艦に搭載されたミサイルだ。だが防衛には使われない。攻撃使われるのだ!」
狙いはもちろん正義の暗示とセイギだ。
射出されるミサイルの軍団。
これにすべて当たればこの基地ごと吹き飛ぶだろう。
そもそもそれが目的で彼は動いている。
主人公が自分以外いなければこんなややこしいことにはなっていない。
この戦いなどさっさと終わらせるならまず味方を消す方が早い。
(このまままとめて消えろ!)
ブックエスケープでアイシアの元へ帰還する。
そこは主人公を待つマスターが集まる合宿所の寝室。
今は彼女しかいない。
『目的は果たした。帰るぞ』
小声で復讐の達成を口にすると、アイシアは唇を緩ませる。
「これで終わったのね。ようやく」
死んだ友に報告するようにガッツポーズを取りながら武器の暗示を召喚し、触手で鉄格子が取り付けてある窓を破壊させる。
お姫様抱っこで2階から飛び降りると、準備していた発射台に取り付けられたミサイルの上に乗る。
「お前達! なにをしてる!」
さすがに破壊音で兵士に気づかれるもミサイルが発射し、基地から脱出する。
「こちら201の寝室!1人のマスターが逃走! 直ちに向かって頂きたい!」
『分かった。すぐに軍勢の暗示を向かわせ………』
通信機からノイズ音が響く。
「どうし………」
その続きを言おうとした時、爆裂した炎が部屋を一瞬にして包み込む。
「グアーーーーーー!?」
空けられた窓から兵士は吹き飛ばされ、アスファルトの道に激突、血溜まりを作りながら死亡した。
一方ナイツはブックエスケープで戻っていた刃の暗示が出した巨大な断頭台の刃部分を盾にし生存していた。
あまりの爆音に耳が壊れそうになり、さらに暑さで汗がタラタラと溢れ出す。
(武器の暗示め、元々私達ごと消すつもりだったか)
ミサイルの発射音ですぐに自分、そしてナイツの危機感を感じ、戦闘を中止して戻って来た。
そんな2人の中で爆発音によって聞こえないが、壁の裏では悲鳴が発せられている気がするのだった。




